farewell to paradise @Palau [Palau]
エスカレーターも備わらない階段を上がり、出国に向かった。
レンタカーのキーのことはすっかり忘れ去ることにして、出国ゲートに向かうと、
係官が鎮座するブースの手前で呼び止められた。
てっきりパスポートのチェックであろうとポケットからパスポートを差し出した。
「ここではパスポートはいいですよ。US$35、お願いします」
「は? なんです、それ?」
いきなり金額をいわれ、一気に警戒心が高まった。
途上国では、出入国に関しては係官のアヤシイ行為が多々ある。
そう、旅行者を狙って私腹を肥やそうとする、アレだ。
タイからカンボジアへ入る際はツーリスト・ヴィザ代をごまかされたし、
ラオスからタイへの入国でも係官に長距離バスの乗客全員が不明解な金を払わされた。
もっともラオスの件に関しては、バンコクで謎解きがされはしたのだが。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2008-09-03 (カンボジア入国)
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2010-12-21 (ラオス越境)
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これらの不正が行われるのはもっぱら渡航者の多い陸路に限ってのことなので、
空港でそんなことが、とクエスチョンマークが浮かんでいた。
旅先では疑問に思ったことはやり過ごさず、すぐに解決したほうがいい。
「なんのお金ですか? 『空港使用料』ならチケットに切り込んであると思うけど」
「『グリーン税』です、政府が定めたものです」
とっさのことで気づかなかったが、
係員が座るテーブルにはしっかり『グリーン税』の説明書きと金額が明示されていた。
ソレを読み、納得して、財布からドル札を差し出す。
係員は慣れた手つきで領収書と笑顔を差し出し、出国ブースへと促してくれた。
説明書きに領収書とくれば、不正の気配はない。
悪さをするようなやつは証拠に残るようなことはしないのだ。
テコでも領収書をくれなかったカンボジアの係官がいい例だ。
とっさに疑った自身を呪いつつ、この楽園が腹黒い国でないことに胸を撫で下ろした。
(後日、調べるとパラオはチケットに切り込まれた『空港使用料』のほかに、
『出国税』+『グリーン税』=$35を「出発時に現金で徴収」、と明示されていた。
単純にわたしが知らなかっただけ。
嗚呼、愚かなる旅人よ、擦れた旅行者にはなりたくないものだ)
出国の手続きを終え、X-rayの手荷物検査へ進む。
出国の後に手荷物検査ってヘンだよな、と思いつつ、荷物を流し込むと、
警備員のおばちゃんに呼び止められた。
「カバン開けていいかしら?」
キャスターバッグひとつの旅、常に機内持ち込みにするため、
検査に引っかかるようなものは入れていない。
開けられて困るわけでもないので、不思議に思いながら、カバンを開けた。
「これ、ダメです」
どこかのホテルもらったアメニティのシャンプー、ボディーソ-プ、
以前、バンコクで買ったヘア・ジェルが彼女の手で取り出された。
「え? なんで? 100ml以下じゃないですか」
「パラオではこれらの液体は持ち出せないことになっているんです」
「ユナイテッドは100ml以下はOK出しているけど?」
「パラオの取り決めです」
苦情を重ねるこちらの表情を見て、規約が書かれた英文書類を差し出してきた。
英文で『この国では自然保護のためにあらゆる液体類の持ち出しは禁止』と書かれていた。
「これ、廃棄していいですか?」
「ダメ、といったら?」
「ジップの袋に入っていればダイジョウブなんだけど、持ってる?」
「持ってないですよ。そういうのってそちらがくれるものでしょ?」
「ここにはないのよ。となると廃棄しかないわね」
「断って、戻ってバゲージ・チェックインするといってもできないでしょ?
もう出国手続きしちゃってるもんね」
「そうね、そういう例はないわねえ」
出国する人間の液体物を没収してもその国の自然保護にどうつながるのか、
まったくもって理解ができなかった。
しかもそれをジップに入れればOK、というのも輪をかけて理解ができない。
買ったばかりのヘア・ジェルが捨てられることに瞬発的に腹を立てていたが、
書類に明文化されているのではどう立ち向かっても勝てるわけがなかった。
瞬時にクールダウンして、廃棄を承知し、キャスターバッグを閉じた。
「政府が決めたことだろうから、あなたに文句をいってもしかたないけど、
これって、手順といい、ルールといい、ヘンですよね?」
「そうね、でもわたしの口からは『ヘン』とはいえないわね」
「あ、そうですね。まあ、いいや。
でもきちんと対応してくれたので、パラオに悪いイメージを持たずに済みましたよ」
「わたしもそうであることを願うわ。楽しいフライトを」
「ありがとう。パラオともお別れです」
『レンタカー』『グリーン税』『X-ray検査』・・・。
ひたすらなにもなく、静かに過ぎていた連日を覆すかのように、
出発前に来て、畳み掛けるように煩雑なことが重なった。
立つ鳥・・・ にしてはニギヤカ過ぎだ。
3つのゲートだけが並んでいる小さな国際空港の小さな小さなロビーに腰を下ろした。
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twilight of paradise @Palau [Palau]
空港に到着したのは約束の時間から30分遅れの18:30だった。
空港内にある『TOYOTAレンタカー』のカウンターに駆けつけると、
半分シャッターが閉まっていて、誰もいない。
返さなければならないキーを渡すことができない状態に陥ったことを悟った。
備え付けの電話から市中の事務所にかけても誰も出ないし、
10分ほど待っていても誰かが戻ってきそうな気配がない。
出発は20:50なので、アセりはしなかったが、
連絡もつかず、あてもない状態、
無人のカウンターの前でできることといえば、途方に暮れることぐらいだった。
確かに約束の時間に遅れたコチラが悪い。
空港に向かう途中の橋で夕焼けを撮ることに夢中になってしまい、
約束の18:00から大きく遅れてしまった。
出発のフライトも時間も伝えてあったので、アバウトに考えていたのが、裏目だったようだ。
ちなみに夕焼けを撮っていた橋の名は『エクストラドーズド橋』。
コロール島と空港のあるバベルダオ島を結ぶ橋の正式名は『Japan-Palau Friendship Bridge』だ。
以前、1977年に韓国企業の落札で『KB(Koror-Babeldaob) Bridge』が造られたが
手抜き工事のため、1996年に崩落事故が発生、
首都機能が麻痺し、『非常事態宣言』まで出される騒ぎとなった。
その後、日本のODAにより、現在の橋が作られた、という裏話つきの橋だ。
チェックインを済ませ、ボーディング・パスを受け取り、
カウンターに戻ってみたが、やはり誰もいない。
困り果てて、インフォメーションの女性に尋ねてみた。
「すみません、『トヨタ・レンタカー』のスタッフの人、知りませんか?」
「いないの? 食事にでも行ったのかしら?」
「カウンターは半開きなので、そうかもしれないけど、
もう30分以上、誰も戻ってこないんですよ。
約束の時間に遅れたこちらも悪いんですけど、スタッフの携帯電話とか知りませんか?」
「顔馴染みだから会えばわかるけど、携帯はわからないわ」
ツーリスト・インフォのスタッフに尋ねること自体が筋違いなのだが、
到着便もなく、手が空いていた彼女はこちらの話に乗ってくれた。
時計は19時を回っている。
「出発まで時間はある? でもここで待っているのも辛いわね、座るところもないし」
小さなロビーは出発を待つ中国人と韓国人のツアー客でごった返ししていた。
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「いや、こちらの責任でもあるので待つのはいいんですけど」
「キー、預かろうか?」
「え? いいの?」
思いがけない申し出に飛びついてしまっていた。
「いいわ。顔馴染みだし、返却だけで支払いがないなら問題ないわ」
一瞬、逡巡したが、彼女の提案が最良な策であることは明白だった。
「出発は20:50だから、もう少し待ってもいいんだけど」
「待っても一緒でしょ? キー、預かるわよ。
あ、わたしはジェニファー。
後日、問い合わせがあったら『ツーリスト・インフォのジェニファー』って言って」
「支払いもないし、クルマのドアはロックしてきたし、問い合わせはないと思います。
一応、名前、書いておきますね。必要ならID、コピーする?」
「いいわよ、そんなの。じゃ、キー、預かったわ」
「ほんと、ありがとう」
彼女に鍵を渡した後もカウンターを覗いてみたが、そこに変化はなかった。
「気をつけて、いいフライトを!」
混み合ったロビーで見送りの言葉をもらい、出発ロビーの階段を上がった。
まさか一人旅で見送りの言葉をいただけるとは。
これでパラオの旅も終わりか、と思ったのだが、幕はまだ引かれなかった。
Japan-Palau Friendship Bridge ↓
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peaceful paradise @Palau [Palau]
「海、行ったの?」
ガス・スタンドの店員は鳴り響くBGMに合わせ、
カラダを揺らしながらそういった。
「なんで?」
「スゴイ焼けているからさ」
「この日焼け? 違うよ、バベルダオブ島を一日ドライブして、このザマさ。
見てよ、右腕だけひどく焼けてるだろ?」
フランクな店員に合わせて、ジョーク交じりに答える。
右腕に焼けてない左腕を添えて見せると、
酷いものを見たかのように彼は大げさに目を覆ってみせた。
反時計回りに島を一周したものだから、
北を目指し走っている時は太陽は東、つまり右から日が当たり、
そして南に下っているときは太陽は西に傾き、
クルマには西日が当たり、これまた右側から日が当たっていた。
一日中、我が右腕は太陽に向かっていたことになり、酷いぐらい日焼けしていた。
途中、気づいて、シャツで右半身を覆い隠したりはしてみたものの、
南の島の太陽光線の下ではムダな足掻きでしかなかった。
それにしてもパラオの人たちは明るい。
目が合っただけでも声をかけてくるし、
見ず知らずの人からも当たり前のように話しかけられる。
アメリカなどでもすれ違いざまやエレベーターでは、
「ハーイ」とか「What s up?」なんて軽くアイサツを交わす習慣がある。
人種も文化も異なる人間が集う国だから、
常に互いに敵意がないことを確認しあうことが当たり前になっている。
バックパックを背負って、初めてアメリカを回ったとき、
自分よりも大きな黒人がフッと道を開けることが何度もあり、不思議に感じた。
「譲る」というよりは「避ける」という感じだったので奇妙な印象が残ったのだ。
日本人からするとヨコにもタテにも大きい黒人は大いに畏怖の対象だが、
彼らからすると得体の知れない無表情の黄色人種が恐怖でもあったのだ。
「鋭い目つきをした黄色いヘンなヤツ」という感じで避けていたらしい。
こちらにも少しばかりのアドバンテージがあったことは確かだ。
ネイビー・ベースがある街に育ち、
高校生のときから米兵と玉突きして遊んでいたので、
黒人に悪いイメージを持ってはいなかった。
合わせて180cmを超える身長があるので、
見下ろされるような目にあわずに済んでいたので、
ムリに彼らを避けて歩くようなことはしていなかったのだ。
もっともアメリカ人の側からしてみたら、
「ただのきったねえバックパッカー」を忌避していただけだったのかもしれないが。
それにしてもパラオの人たちのフランクなこと。
こちらが日本人とわかると拙い日本語や「じゃぱーん」なんて言葉を投げてくれたり、
同じように明るい韓国のオバハンとはまた別格の明るさで、
こちらを大いに和ませてくれる。
肩に力を入れて異国を歩きがちな旅行者としてはふと、ガス抜きされた気分になる。
ガソリンは1ガロン(約3,78L)が$5,25、リッターあたり¥110ほどか。
レンタカーを返す約束の18時まではまだ時間があった。
夕食を摂るには早すぎるし、ランチの量が多かったこともあって、腹も減っていない。
とはいえ、クルマで行ける島々は走りつくしてしまっていた。
少しばかり時間を持て余してしまったので、
『メイン・ストリート』にある『パレイシア・ホテル』にクルマを入れ、
テラスになっているバーに足を向けた。
『マンゴ・ジュース』をオーダーし、バーテンダーと話しをしながら、夕焼けを待った。
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strange paradise @Palau [Palau]
少しばかり拍子抜けした『首都』をあとにまたクルマを走らせた。
首都の中心であろう場所には白亜のドームを冠した建物が鎮座していたが、
その近辺には食堂や店もなく、周囲に濃い緑だけが広がるだけだった。
緑のジャングルの中に白い建物だけが浮かぶ、というフシギな首都空間だった。
観光がオフ・シーズンの6月、あるいは政治もオフなのかもしれない。
10分ほど走ると、端正な橋が架かるビーチに出くわした。
脇にはバイ(パラオ式の東屋)があり、
波打ち際を駆け回る子供をその日陰から家族が遠目に眺めている。
その手前には小さな小屋があった。
この島に来て初めての売店だ。
「『ミルク・コーヒー』あります?」
冷蔵庫の横に貼られたメニューに手書きで『ミルク・コーヒー』と書かれていた。
こちらではあまりそういう表しかたをしないので、
キンキンに冷えた『アイス・カフェ・オ・レ』を期待して、オバチャンに聞いてみた。
「ないわ」
「じゃあ、その隣の『カプチーノ』は?」
「ないわ、『コーヒー』の類はないわ」
メニューに書いてあるものを読み上げるように伝えただけなのだが、
オバチャンはつたない英語で「ない」を重ねた。
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「『コーヒー』ないのか。なら『レモンティ』でいいや」
「ないわ」
おいおい。
「じゃあ、なにがあるの?」
「『ダイエット・ペプシ』『クランベリー・ジュース』、それと『ビール』が山ほどよ」
背の高いガラスケースの冷蔵庫の扉を開けて見せてくれた。
中の棚の半分以上をビールが占めていた。
「クルマじゃ、ビールは飲めないよ」
「知ってるわ、クルマで来たの見ていたから。
でもコーヒーは切れちゃって、まだ入荷してないのよ」
近隣住民がいるわけでもないので、
ビーチに人が来るときぐらいなのだろう、商売になるのは。
『ビールしか売ってない売店』というのがおかしくて声を上げて笑ってしまった。
つられたのかオバチャンも笑っている。
「メニューはなんのためなんだ』と思ったが口には出さないでおいた。
「じゃあ、ください。
『ダイエット・コーク』はないの?」
こうなるとオバチャンの定番コールが聞きたくなっていて、
冗談半分の質問をぶつけていた。
「ないわ」
期待通りのご回答。
客が来ないせいか、受け取った『ダイエット・ペプシ』の缶はキンキンに冷えていた。
さらに北に上がり、小さな村を訪れた。
このあたりはコロールの島と異なり、白砂のビーチが広がっている。
ここでもやはりひと気がない。
真昼間の熱い時間だから人がいないのか、
あるいはコロールに働きに出ているのかはわからない。
なにしろこの島には人がいないようだ。
自分だけポツンと置かれたような時間が続いた。
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inorganic paradise @Palau [Palau]
ランチで苦しくなった腹を抱え、バベルダオブ島一周に乗り出した。
この島は大きく外周に道があるだけなので右回りだろうが左回りだろうが、
その道を走り続けていれば元の場所に戻ってくる作りになっている。
帯のように巡らされた一本道を島の真南側から時計回りとは反対に走り出した。
時計の針でいうと6時の方向、起点のすぐそばに空港がある。
夜にはそこから出発することになっているので、レンタカー旅もここが終着だ。
場所の目星をつけておこうと、まずは空港に向けてクルマを走らせた。
空港へのエントランスを横目で確認し、通り抜けて行く。
周辺には背の高いビルや大げさなカンバン、ハデな広告はモチロン、
ニギヤカなエアポート・ホテルやバカでかいパーキング・ロットもない。
国際空港らしさは微塵もなく、軍事施設の名残りであろうフェンスが、
無機質に連なっているだけだ。
そのフェンス越しに滑走路を眺めつつ、北へクルマを走らせた。
対面通行の道路を進むとすれ違うクルマが次第に少なくなっていく。
道路脇には店もなければ家もない。
それどころかアスファルト以外に人工物らしいものはなく、
時折、見通しのいい小高いところに差し掛かり、辺りを見渡すと、
揃えたような高さの木が鬱蒼と茂っているだけだ。
前方を塞ぐクルマも行く手を阻む信号もないドライブは気分がいい。
無理して飛ばすこともないので、
FMラジオのボリュームを上げ、のんびりクルージング。
東側にある新首都の『マルキョク』という場所を目指した。
ところが10分程走ったところで、トンだトラブルが巻き起こった。
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それまで心地よいロックを流してくれていたラジオが沈黙してしまったのだ。
クルマを走らせながら、3~4局はあったはずのパラオのFM局のチャンネルを探ってみるが、
どのチャンネルもか細く流れてはノイズに変わっていく。
最後にはどのチャンネルもノイズだけになり、
あれこれイジってみても砂嵐を連想させる音が出るだけだった。
そう、ラジオが圏外になってしまったのだ。
パラオの生活拠点はコロールが中心で、この島に住民は少ない。
そのため、20kmほど北に上がってきたこのエリアだとラジオの電波も届かないのだ。
鳴らなくなったカーステのスイッチを切ると、
開け放っていた窓からの風切り音が割り増しで騒々しくなる。
オープンカー乗りとしてはこちらのほうが自分のクルマに似た感じがしたが、
単調なロング・ドライブに音楽がないのは少々痛かった。
ラジオの電波が届かないとは思わなかったぜい。
バッグからMP3プレーヤーを引っ張り出してもよかったがそれも煩わしかった。
風の音に混ざって、自分のクルマの排気音だけが響く、そんなクルージングを続けた。
30分ほど走り、案内標示がされている交差点を右に折れる。
谷を下り、小高い丘に上がると、白亜の建物が異彩を放って建っていた。
『Melekeok』(マルキョク)にあるニュー・キャピタル、
ここが2006年に遷都したばかりのパラオの首都だ。
驚いたことにこの国の中心であるはずの場所にも関わらず、ひと気がない。
観光客はモチロン、働いていそうな人もいない。
国の主要建築物である議事堂なら警備員がいて、公務員がいて、
出入りの業者でごった返していて、と思ったのだが、駐車場ですら閑散としている。
昼間だから? 日差しのきつい時間だから?
なーんにもなくてだーれもいない、ただただのーんびりした空間が広がっていた。
Melekeok ↓
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delicious paradise @Palau [Palau]
6月12日、旅は6日目。
7時に目覚め、デリで買っておいたツナ・サンドを頬張る。
フロント脇にコーヒーの無料サーブがあるので、
それを片手に部屋でカンタンな朝食を済ませ、
またコーヒーを注ぎ、しばらく原稿書きに没頭した。
気づけばパラオもラスト・デイ、20:50のフライトまでがタイムリミットだ。
ランチには少し早い時間に部屋を引き払い、
レンタカーにバゲージを積み込み、部屋のキーを返して、チェックアウト完了。
「Come Again」
文字にしてしまうと味気ない英語だが、
宿のスタッフの口をついて出た言葉は「またおいで!」とやわらかい感じだ。
わずか5泊の滞在なので、社交辞令かもしれないが、
そういってくれる気持ちがうれしかった。
「何時に日本に帰るの?」
「20時のフライトだよ。日本に帰らず、マニラ、シンガポールと経由するけどね。
いろいろお世話になりました、ありがとう。
今日は出発まで一日あるから、バベルダオブ島を巡ってみるつもりなんだ」
握手をして、別れを告げ、クルマを走らせた。
島巡りのロング・ドライブの前にまずは腹ごしらえ。
キャプテンに教えてもらい気になっていた『YANO’s』向かう。
ランチタイムには早かったが、店には頻繁に客が出入りしていた。
店内はこじんまりしたサイズで、
肉や野菜の惣菜、チャーハンや白飯がパック詰めされ、木肌の棚に置かれている。
パンや果物、飲み物も売られていて、
奥には出来上がったばかりのオカズがケース内に並んでいた。
好きなものをレジに持って行き、会計を済ませるデリ・スタイルの店で、
ホトンドのお客は持ち帰りのようだが、
店内の右手奥にはテーブルとカウンターも据え付けてあり、
そこでのイート・インもできるスタイルになっていた。
地元の人は馴れた手つきで目当てのものを手にし、レジに向かうが、
要領がつかめないこちらは気遅れして、立ち尽くし、狭い通路を塞いでしまう形になる。
自分で戸惑いを割り増しにしてしまうような感じだ。
なにを食べるか目移りしていると、奇妙な日本語で話しかけられた。
「タロイーモ、エイヨ~マンテン」
常連のオジイサンだろうか、馴れた感じでパックを選び、手にとっている。
こちらの戸惑いを見透かしたようにタロイモやチャーハンのパックを指差しては、
変なイントネーションの日本語を繰り返している。
「チャハン、オイシー、オイシー。エイヨ~マンテン」
「そうね~、炒飯はおいしいわなあ」
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こちらに話しかけているのか、はたまた彼の独り言なのか、判断がつかなかったが、
他に日本人も見当たらなかったので、答えを返してみた。
「エイヨ~マンテン」がお気に入りのフレーズらしく、こちらの答えを気にも留めず、
好きなだけ言い放つとレジで会計を済ませ、トットと出て行ってしまった。
すっかりフラれた気分だったが、気を取り直し、
ガラスケースの向こうにいた店員のオバサンに声をかけた。
「あの、シーフードはなにがありますか?」
「シャコ貝のクリーム煮、エビの炒め物、それと後ろのフリッターかしらねえ」
「!」
ようやくここに来て、名物「シャコ貝」登場だ。
昨日のレストランでも探したのだが、メニューになかったのだ。
「じゃあ、シャコ貝をください」
「量り売りだからどれにする?」
シャコ貝はアルミホイルの器に入っていて、食べやすく刻まれている。
サカナのフリッターも食べてみたかったので、小さそうなのをお願いした。
「食べてくの? これも後ろのレジでお金払ってね」
そういうと皿に盛ったシャコ貝にソースをかけてくれ、
計りから打ち出された値札の紙を渡してくれた。
シャコ貝のクリーム煮約$4、白身魚のフリッター$3、ライス$1、
会計を済ませ、カウンターに腰掛ける。
小さ目を選んだのだが、ドレもコレも量が多くて、食べ過ぎは確実だ。
味? 教えなーい。
現地でお試しあれ!
「賢者は旅の話をし、愚者は料理の話をする」ってのがモットーです。
これ、モンゴルの諺だそうで、旅のハナシだけに留めておけば賢者になれる?
ああ、あのシャコ貝、また食べたい!! とだけは書いておこう。
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serene paradise @Palau [Palau]
夕刻の情景に別れを告げ、誰も待っていない夕食に向かった。
気になっていたレストランにクルマを走らせる。
アラカベサン島をまた奥に進む形で『Rose Garden Resort』を目指した。
ここはホテルの下がテラス・スタイルのレストラン・バーになっている。
小高い丘で少しばかり眺めもよいのだが、それにも増して風の抜けがいい。
食後、アイスティでも飲みながら、静かに本も読むこともできるし、
店内ではWi-Fiが使えるらしいのでメール・チェックもできる。
退屈な旅先の夜の時間をここなら潰せそうな気がしていた。
南国の島国、ということもあり、パラオはネット環境が悪い。
大きなホテルには完備されているようだが、
今回泊まっている安モーテルにWi-Fiはない。
プリペイドのWi-Fiカードを購入すれば繋げないこともないのだが、
カードが高いうえに速度が遅いらしいのだ。
そもそも島の人たちもネットカフェを使うか、
プリペイドのカードを購入するかなので、
南の島に於いては割高なネット環境を強いられている、ということはわかっていた。
ここはホテルに隣接するレストランなので宿泊客はもちろん、
外の客は「食事をすればWi-Fi接続無料」ということを昼間、教えてもらっていた。
「夕食のときにPC担いで出直して来るよ」とも告げておいたのだ。
『白身魚と豆腐のソテー』セットメニューで$10。
ガーリック風味の醤油が豆腐に合う。
豆腐ってこういう食べ方もあるのね、という感じで、
帰ったら真似して作ってみたくなる味だ。
大きな液晶TVではブラジル対アルゼンチンのワールドカップ予選が行われている。
3対3の激しい攻防、数組の客しかいないので、従業員は画面に釘付けだ。
アイスティを頼み、Wi-Fiのパスワードをもらい、PCを立ち上げた。
カヌーの面々が去った後、
眩しいカクテル光線の中でプレイしていたソフトボールを見物した。
フィールドはしっかり『野球場』していて、
観客スタンドがあり、バックネットがあり、外野はフェンスで囲われていた。
日本の草野球場よりも数段上の設備だ。
家族連れで応援している姿が目立つ。
当たり前のようにオトコのコと一緒にオンナのコもプレイしていて、
彼女らが活躍すると一段と高い声援が上がっていた。
フィールドを抜ける潮風が心地よい。
観覧席の外側ではおかまいなしにBBQの煙が上がっている。
シートを置いて、ビール片手に観戦だ。
どうやら身内が守りのときには腹ごしらえ、打席に立つと応援に熱を入れるらしい。
BBQにも攻めと守りがあるのですな。
沖を進むカヌーにしろ、このフィールドにしろ、
すべてがゆったりしていて本当にストレスがない。
最新機器に追いかけられ、最新のファッションに追い立てられ、
新しい味覚を追い続け、最新のスポットを追い求めることは、
そんなに大事なことなのだろうか。
現地の生活を背負い込んでいない旅人は勝手にそんなことを思う。
なかなか進まないPCの画面にストレスを感じながら、さっきの夕景を思い返していた。
Rose Garden Resort ↓
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twilight paradise @Palau [Palau]
クルマという機動力を得て、陸のアイランド・ホッピングがはじまった。
島内は対面通行の道路のみで交通量も少ない。
なにせメイン・ストリートには信号すらない。
道が空いていると飛ばそうという気にもならないからフシギなものだ。
40km前後で走っていても、ゆったりノンビリ心地いい。
すべての窓を開け放っておけば、エアコンなしでも快適な風が流れていく。
信号、というのは人が快適に暮らすための社会のルールだが、
あれはあれでストレスの根源になっているのだなあ、とつくづく思う。
ヨーロッパ人共通の概念として、
「ルールは人が快適に暮らすために人が作ったものなのだから、
それが不快な場合は守る必要がない」ということがある。
顕著な例でいうと深夜、クルマも人もいない交差点、
赤信号が変わるのをポツン待っている日本人ドライバーの動画。
こいつがネットに上がって、世界中で話題を振りまいていたっけ。
クルマはすぐにコロールの西、マラカル島の西端にたどり着いた。
シャコ貝の養殖場を眺めるも食べられる店があるわけでもなく、
興味を惹かれるものも画になるものもなく、
行き止まりをすぐに折り返した。
観光局事務所があった交差点を北に折れ、
アラカベサン島に渡り、小高い山を越え、走り続けるが、
こちらも15分ほどで行き止まり。
島の先端を占めるパラオ・パシフィック・リゾート(PPR)ホテルでデッドエンドだ。
海の楽園には陸に見るべきものはなく、ただのどかさだけが広がっていた。
枚数の進まない一眼レフを助手席に置き、ハンドルを握り、来た道を戻る。
陽が落ちかけた時間、異質な明るさを放つカクテル・ライトに惹きつけられ、
路地をたどると、キレイな野球場でソフトボール大会が催されていた。
その向こうの波打ち際には船着場が開けていて、夕刻の海が出迎えてくれた。
遠い夕焼け空にはレース生地をなびかせたようなスコールの幕が降りている。
あのシャワーはこちらに来るのだろうか、それとも向こうに去っていくのだろうか。
夕方の静かな海を眺めながらぼんやりそんなことを考えていた。
レースのカーテンがうまく撮れないか、広角レンズを合わせていると、
海上でなにやら動いているものを見つけた。
小島? パラオじゃ島も動くのか?
漁船? こんな時間に?
望遠レンズに付け替え、ふたたびファインダーを覗き込んだ。
カヌーだ。
冷静に考えたら、この船着場、自分の横にはカヌーが横たわっているじゃないか。
ひょっとして、ここに帰ってくるのだろうか。
カッター競技のように集団で漕いでいて、かなりのスピードが出ている。
遠目に見ているとシャワーから逃げて来ているようにも映る。
リズムよく進む船体は大きく右に周り込み、こちらに向き直ると、
次第に速度を落とし、スロープになっている船着場の波打ち際に寄せた。
集団は船を下りると馴れた感じで大きな船体を持ち上げ、注意深い足取りで上陸してきた。
「ハイ」
「コニチハ」
気軽に声をかけると集団の一人がおどけて日本語で返してきた。
「こんにちは」
「ハロ~、ジャパン」
「ニッポンデスカ?」」
「ゲンキ?」
日本語で応えると次々、アイサツが返ってくる。
激しくカヌーを漕いできた疲れもみせず、声は明るい。
どこかの学校のクラブ活動かと思ったが、
体格のいい若者からひょろっとした体形の幼い顔も見え、年代はバラバラだ。
あれこれ聞きたかったが、船を置くと円陣を組み、真剣なミーティングがはじまった。
パラオ辺りだと町内で『カヌー訓練』があるのかもしれない、
あるいは非常時のための『カヌー教室』というのはどうだ。
たぶんただの『カヌー・サークル』の練習だろうけど。
夕景の写真に夢中になっていたため、
グループの正体を尋ねる間はなく、若者は散り散りに帰っていた。
帰ったらきっとそれぞれの家庭で夕食が待っているに違いない。
アラカベサン島船着場 ↓
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unexpected paradise @Palau [Palau]
午前中とはいえ、南国の陽気は全開で暑さに容赦がない。
エアコンの効いた部屋でコーヒー片手にくつろいでいるとノックの音が響き、
ドア越しに掃除のオバチャンの声が続いた。
「アンタ、クルマ頼んだ?」
時計を見ると11時、約束通り、レンタカー屋が来てくれたようだ。
先日、事務所で会ったオヤジサンが玄関先でニヤっと笑っていた。
今はビンローを含んでいないようだが、
その口元はなんとなく赤いような気がした。
「おはようございます。あれ? クルマ『ヴィッツ』じゃん?」
予約したクルマは$50の『ジムニー』だったはずだ。
「$30の『ヤリス』が空いたから持ってきたよ」
「え~、ホントに? それはラッキーだよ、ありがとう!」
どうでもいいことだが『ヴィッツ』のヨーロッパ名が『YARIS』(ヤリス)、
『マーチ』も向こうでは『MICRA』(マイクラ)という名で売られている。
「$30ね、キャッシュかしら?」
オヤジサンとのやり取りを気にも留めず、
一緒に来たオンナのコは書類を突き出し、IDの確認とサインを求めてきた。
ひととおりの記載を終え、現金で$30を渡した。
「ガソリンは少ししか入ってないから、気をつけて。
満タン返しじゃないから使う分だけ入れなよ」
「OK、わかった。でも安いクルマ持って来てくれてありがとう」
オヤジサンの説明を受け、そう礼を返すと、彼はニヤリと笑い、親指を立てた。
笑って見えた口の中はやっぱり赤かった。
伴走してきたクルマで去る二人を見送ると、後ろから声をかけられた。
「お! クルマが来たんだね」
体格のいい年配男性が隣に止まっていたバンのドアを開けていた。
「あ、今日から借りたんですよ。
そうだ、クルマで行けるオススメの場所、あったら教えてください。
あ、でもダイビングで周っているならお門違いか」
「いや、ボクはノン・ダイバー、このバンで行ける浜辺で潜っているだけさ。
もっぱらスノーケリングだけだよ。
オススメのランチの場所なんてどうだろうか?」
彼はオレゴンから来ているアメリカ人で、
すでにリタイアしていて、パラオに年2~3回はやってくる『パラオ・リピーター』。
ここを定宿にし、バンで島を巡っている『バジェット・トラベラー』だ。
パラオに男一人旅、なんて自分だけかと思ったら、いるんですねえ。
ハンドルを握り、彼に教えてもらった食堂へ向かう。
その店は大通りに出る手前にあり、拍子抜けするぐらい宿からすぐだった。
なんのことはない、到着直後の夜に歩いたガソリンスタンドの手前じゃないか、
クルマ、いらねえぞ。
『PINOY』と書かれた店の扉を押し開け、中に進む。
照明が少ないためか、店内は薄暗く、ひっそりとしている。
奥のカウンターには大きなバットに入った料理が7~8品並んでいて、
傍らには大きな魚のフライが置かれていた。
ブッフェ・スタイルのようにみえもしたが、
地元の人たちはカウンターに取り付き、アレコレ指差し、注文している。
少しばかり気おくれして眺めていると、
なんのことはないアジアによくあるワン・プレートのスタイルだ。
好きなオカズを頼んで、ご飯を盛ったプレートにかけてもらう、
いわゆる「ブッカケ飯」方式だ。
なかでも魚のフライに人気が集まっているようで、次々になくなっていく。
奥のキッチンからはできたてのオカズが次々、運ばれくる。
ランチタイムには少し早い時間、準備しながら客をさばいているのだろう。
湯気を立てているオカズからおいしそうなニオイが漂ってくる。
空いていてひっそりしているな、と思った店内だったが、
次から次に客がきては手際よく注文し、パッキングしてもらい、去っていく。
店内で食べるよりも持ち帰る客が多いせいで店内が空いているのだった。
「持ってくの?」
「いや、ここで食べます」
待っていても客の流れは切れそうにもなく、
勇気を持って、忙しそうに働くオカアサンに声をかけた。
ストロガノフのような牛肉煮込み+ライスで$3,5。
オススメ食堂、さあ、味はどうかな?
PINOY ↓
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miscellaneous paradise @Palau [Palau]
6月11日、旅は5日目。
思いがけず、朝6時に目覚めてしまった。
『ジェリーフィッシュ・レイク』の興奮冷やらずで目覚めてしまったなら、
ちょっとばかりロマンティックな思いがするが、
興奮して寝付けなかったのではまるでコドモだ。
あるいはスノーケリング疲れで目覚めてしまったのだとしたら、
眠れないお年寄りのようで悲しすぎる。
ガッツリ目覚めてしまったので、
キッチンのコーヒー・サービスを取りに下り、
買っておいたサンドウィッチで朝食を済ませ、原稿書きに精を出した。
そうです、この仕事は旅先でもできるのですよん。
とはいえ、シティ・ホテルにカンヅメならカッコいいけど、
旅先の安モーテルのテーブルじゃあ、カッコつきはしませんが。
昨日の『スノーケリング・ツアー』は17時前に船着場に戻ってきた。
「コロールでシーフードがおいしい店、教えてくれませんか?」
送迎のバスが出るまで少し間があったので、
ひと仕事終え、一服していたキャプテンに聞いてみた。
「一人だろ? じゃあ、レストランとかじゃなく、食堂のほうがいいよな。
『ヤノズ』という店があるよ、WCTCのすぐ横さ。
なあ、あそこは安くてうまいよなあ」
「ああ、おれたちもよく行くぜ。でもランチしかやってないよ」
一緒に一服している仕事仲間がそう答える。
「うれしい情報だな。明日にでも行ってみます、ありがとう!」
そう礼をいうと『ハイ・ファイブ』を求められた。
それぞれくつろいでいた人たちと掌を交わし、送迎のバスに向かった。
この時間、日は傾きつつあるが、空はまだ明るい。
ちなみに『ハイ・タッチ』は日本語、英語では『High・Five』だ。
『Give Me a Five!』といえば、パチンともらえる。
手の高さによって『Middle・Five』や
腰をかがめる『Low・Five』なんていうオフザケもあります。
17時過ぎ、今朝、最後に拾われたオトコは最初にモーテルで降ろされる幸運。
そそくさと部屋に上がり、シャワーを浴び、シャツを着替えて出かけた。
早速、教えてもらった店に向かう。
『WCTC』の真横で連日、目にしていた店が『YANO’s』というカンバンを出していた。
「ランチタイムだけ」という言葉通り、すでに入口を閉ざし、暗かったが、
あら、ここだったのね、という感じで拍子抜けしたが、先送りの楽しみが増えた。
道路を渡った反対側の店々を眺めて歩く。
「プリンターを駆使しました感」満載の長いメニューが貼られている店があった。
店先にはそれぞれ英語と中国語と日本語の長ったらしい紙がぶら下がっていた。
その中に気を惹く文字を見つけた。
『Water Melon Shake』
おお!
ここでも逢えたか!
『スイカ・シェイク』=$3を迷わず、注文。
店先のテーブルでシェイクを飲みながら長い張り紙のメニューを吟味する。
オススメのシーフード食堂はダメモトで来てみたので、喰いっぱぐれた感じはしなかったが、
すでに口の中がシーフード・イメージになっていた。
「おばちゃん!『イカフライ・プレート』ひとつ!」
夕方の陽が差し込むテーブルは暑かったが、昨夜の$4のディナーは悪くなかった。
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paradise in paradise @Palau [Palau]
ボートはふたたびアイランド・ホッピングへ。
キャプテンはいつもの手馴れた感じで、
今度は島に寄せることなく、海上の浅くなったエリアで船を停めた。
『パラダイス・コーナー』と呼ばれるこのエリアは、
沖のど真ん中に珊瑚礁が盛り上がっていて、
そこだけ1~3mほどの深さの浅瀬が広がっている。
この小さな環礁に鮮やかな色をしたサカナが集まっているらしい。
船上から眺める景色は写真を撮る気にもならないただの海面だ。
「では、ここでしばらく『スノーケリング・タイム』です。
『クマノミ』の巣が見たい方はわたしについて泳いできてくださ~い」
ガイドに促され、身支度を整えた客から次々と海へ身を投じる。
水の中、ゴーグル越しの環礁は傍目とは異なり、表情豊かな海の世界が広がっていた。
珊瑚に覆われた海底も見え、場所によっては浮かんでいても手が届くような深さなので、
フローティング・ジャケットはジャマでしかなく、ボートに戻した。
6月のパラオは雨季にあたるが、海はベタ凪が続き、
ダイビングやスノーケリングには適した季節らしい。
プールのように波の立たない海面を目の当たりにして、
キャプテンに問いかけたら、そんな情報を教えてくれた。
そんなことも調べずにやって来た無頓着な旅行者は誰だよ、いったい。
「サメがいた~」「クマノミ~」「バラクーダーきた~」と歓喜の声が方々から上がる。
年配客だろうが、夫婦モノだろうが、こうなると夏休みの子供とおんなじだ。
小一時間のスノーケリングでツアーはピークを迎えていた。
楽しげな声を海面越しにぼんやり聞きながら、
『ジェリーフィッシュ』の感動にシビれたアタマがようやく現実を取り戻してきていた。
すでにメインディッシュのクラゲに胸いっぱい、腹いっぱいで、
『パラダイス・コーナー』は食傷気味のデザートにも思えていた。
環礁をひと回り泳いで、ボートに上がった。
「あれ? もういいんですか? まだ時間ありますよ~」
客を案内し終えた韓国人ガイドがボートの上から心配そうにいう。
「うん。メインは『ジェリーフィッシュ』だったからね、ここはオマケ、もう満足」
ところで、どう? 半年間暮らしてみて、パラオは?
やることなくて死なない?」
配られたペットボトルのお茶で塩辛い口を濯ぎながら問いかけた。
「正解です。仕事はすご~くいいんですが、オフがヒマで死にそうです」
「シンガポールの現地旅行会社にいたんだけど、あの国でさえヒマだったもん。
島は退屈だよね。『楽園』というのは住む人には酷でもあるよね」
「はい、そろそろソウルに帰りたくなってきました。
でも韓国は経済状況がよくないので就職があるかどうか、それがびみょ~です」
「だろうね、いろいろ大変だ~。Fighting!(韓国では『がんばれ』の意)」
彼は半年ほど前にパラオにやって来て、ガイドの仕事をはじめたという。
ツアー会社のスタッフにしろ、ガイドにしろ、この島では韓国系の人が多いようだ。
彼の役割は『通訳アテンド』、同行のパラオ人のオンナのコが『ローカル・ガイド』、
彼女がライセンスを持っているのだろう。
世界各国。観光客が訪れるスポットでは、
『有資格のローカル・ガイド』+『無資格の通訳ガイド』というペアのアテンドが多い。
これは観光業において、外国人が現地の人の仕事を奪ってしまわないための方策だ。
世界的観光立国のイタリアなど、
『添乗員』が自分のツアー・グループで教会の前で解説しているだけで逮捕&罰金もの、
『観光案内』の資格がない『添乗員』は案内することが違法行為になる。
これ実話で、罰金取られた添乗員、知ってます。
そのため、国からの資格を持っている『ローカル・ガイド』が随員するわけだが、
訪れた外国人グループのすべての言語に対応してないので『通訳』が必要となる。
結果、『通訳担当の日本人』が案内を果たすことになり、
『ローカル・ガイド』はただグループにくっついて周るだけの人、となってしまうのですね。
ツアーのお客さんからは「何しているの? あの一緒に来る現地の人?」、
なんて無神経な質問が沸いて出たりします。
ヨーロッパなどは日本語ができる現地の人は少ないので、
『通訳ガイド』(大抵は現地日本人)が声を張り、観光案内し、
そこにライセンスを持った『ローカル・ガイド』(現地人)がくっついて周り、
時間や行程を管理する日本からきた『添乗員』(日本人)がいる、という図式になるわけ。
と、これは大都市でのオハナシ。
小さな田舎町などでは『イングリッシュ・ガイド』のみなので、
添乗員が『通訳』までさせられる、なんてことが多々あります。
旅程管理業務以外に通訳業務までさせられるわけですから、
添乗員にも『通訳』分の日当払えよ、って裏バナシもありますが。
まあ、それはさておき、1グループで3人もチャーターするんだから、
『観光付ツアー』や『添乗員付ツアー』が割高になるわけ、わかるでしょ。
スノーケリングで泳ぎ疲れた客を積み込んだボートは虹の見送りを受け、帰り道を辿った。
Paradise Corner ↓
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impressive paradise @Palau [Palau]
ジェリーフィッシュ・レイクの衝撃にシビれたまま、ボートに戻った。
別にクラゲの毒にあたってシビれているわけではないのです。
現にジェリーフィッシュ・レイクのクラゲたちは、
外敵がいない、という特殊な環境から無毒化してしまっているのだから。
木製のデッキから湖にエントリーし、しばらくはなにもない湖面を泳ぎ進む。
するとポツン、ポツンと赤茶色のクラゲが現れはじめた。
おお、と思ってさらに泳ぎを進めると、彼らは唐突に数を増し、
カラダの周りに大小入り交ざったジェリー・フィッシュたちが行き交いはじめる。
動いているのはクラゲではなくこちらなのでまったくの錯覚なのだが、
まるで彼らがやって来ては遠ざかっていくかのような気になるのだ。
これだけでもかなりの驚嘆ものだが、
さらに湖の中心部に向かって泳いで行くと彼らの数は尋常ではないことになり、
両の手でクラゲを押しのけ進んでいく、そんな密度になる。
もっとも濃いところを探して泳ぐと、
そこでは器に入ったみつ豆の寒天を掻き分けるかのごとく、
あるいは夜店の金魚すくいの密度のなかを泳ぐがごとく、
こちらの想像を遥かに超え、クラゲの世界に取り込まれたような気分になる。
ゴーグルをつけ、スノーケルをくわえているのだが、
おかまいなしにワアワアと驚嘆の声が出てしまう。
想像を超えるシーンに出遭うと人は声を出さずにはいられないのだ。
淡水に近い汽水の中、フローティング・ジャケットを着て泳いでいるので、
クラゲと肩を並べ、ポワポワと水に漂っている。
もっとも彼らに『肩』があるとは思えないが。
360度、いや、前後左右だけでなく上下を見てもクラゲ、海月、水母、くらげ。
もはやUniverse of the くらげデス。
フィンをつけているので、その気になれば早く動けるが、
慌しく動くよりも彼らと一緒にただ漂っているのがいい。
そう、やはりここでもなにもしない刻(とき)がただただ心地よい。
世界中でもここにしかない場所、その感動といったらない。
いっそ「文章にできないぐらい」なんて書いてしまおうか。
走り出したボートに揺られ、そんなことを考えていた。
ハッキリ書きますが、クラゲと漂うだけのために飛行機代出してくる価値アリです。
それをやった本人がいうのだから、信憑性あるぜい。
ONE and ONLYとはまさにこのこと。
加筆;
水中カメラがないため、肝心のクラゲの写真はありませぬ。
一眼レフで取れたのは、4・5枚目の入水箇所までです。
ここからではクラゲの姿は見られず・・・
写真素材・ストックフォト|アマナイメージズ
『Jellyfish Lake』と画像検索していただければ、
水中でデジカメ撮影した世界中の方の画像がたくさん出てきますので、
そちらでイメージの補填をオネガイシマス。
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really true paradise @Palau [Palau]
一瞬のシャワーにオドロカされたものの、無人島のランチタイムはのどかに過ぎた。
満腹したツアー客を乗せるとボートは容赦なく、また波を蹴りはじめた。
「乗り物酔い」というものにとんと無縁なので気にも留めなかったが、
ランチを詰め込んだばかりの身には厳しい揺れと激しいスピードだ。
さりとて水面を駆ける風、現れては消える小島、海の青空の青、
別世界とも思える風景がそんなことを忘れさせてくれるのだろう。
不調を唱える客もなく、ボートは小さな島々の間を縫うようにして、
ジェリーフィッシュ・レイクのある島を目指していた。
「クラゲの島に着きました、事務所で渡したパーミットを用意してください。
荷物置く場所がないので、全部ボートに置いてくださいね~」
湖を目指す前にガイドのカンタンな案内が響く。
船着場のすぐ前には小屋があり、そこでは一人一人、パーミット(許可証)をチェックしている。
「この後は少し山道を歩きま~す。
履物はサンダルじゃないほうがいいですよ~。
手軽がいいですから、ライフジャケットは着てしまってくださ~い。
フィン、スノーケルはその背中に刺しま~す」
船を降りてから山道を越え、クラゲの湖に辿りつくようだ。
世界中、どこを旅しても革の『デッキ・シューズ』で出向くので、
山道だろうが砂漠だろうが登山道だろうが砂浜だろうが心配はない。
『TopSider』『Sabago』『HushPappy』などの革デッキを愛用しているのだが、
今回はスノーケリングを予測していたので、
水でツブしてもいい古い『Sebago』のデッキでこの国に来ていた。
そうそう、旅行先に下ろしたての新しいクツで来るのはやめましょうね。
旅先では日常生活の倍以上は歩いてしまうので、もっとも履き慣れた靴でくるのが得策。
履き慣れていない新品シューズはマメができる上に疲れも増しますぜ。
なんなら履き古しのクツで来て、最後に現地で新しいクツを買って、
お店で「この古いの捨てちゃって~」なんて帰っていくのもアリですよん。
なぜ『革のデッキ・シューズ』を重用しているかというと、
まず、足のむくむ機内、あるいは長距離バスなどの乗り物で脱いだり履いたりするがラク。
ソールが薄くフラットなので、慣れないレンタカーでも運転がしやすい。
そして革なのでドレスコードを気にするようなホテルやレストランなどでも格好がつき、
おまけに冬以外は素足で履けるのでソックスを持っていかなくていい、と利点が多いわけ。
長い旅の経験で荷物減らしたい! と考えた挙句です。
予備のクツを持っていくのはかさばりますし、
ビーチサイドからレストラン、ジャケットにまで合うクツ、ってなかなかないんですね。
とまあ、万全のように記してますが、
このデッキ・シューズがこの旅の最後に悲劇に見舞われます、ご記憶のほどを。
用意に手間取るほかの客を無視し、許可証を見せて、ズンズン先に進んだ。
一眼レフのバッグを担いでいたので、ガイドが気を利かせて声をかけてくる。
「カバン、ダイジョウブですか?」
「ああ、湖に入るんだから、岩場とかデッキぐらいはあるでしょ?
そこに置き去りにするからケンチャナヨ~(だいじょうぶ)」
「そのつもりならOKです。行けるなら先に進んでください。
わたしは最後のお客さんと行きますから」
トレッキングに近い険しい山道を進んでいくが、
歩いている人たちがみな水着姿なので、なんとも奇妙。
手作りの石段を踏みしめ、鎖を手繰り寄せて岩を乗り越え進むと、
この辺りには人の手があまり入っていないことが想像できる。
「許可証、値上がりしたんだから、階段ぐらいちゃんと作ってよ~」
「コレでも鎖とか手すりとか、マシになったんですよ~」
誰かの戯言にガイドがそう答えていた。
小山をひと越えする形で、湖にたどり着いた。
湖畔は船着場を兼ねた小さな木製のデッキが設えてある。
「着きましたよ~。もうすぐですよ~」
先頭で到着したので、ゴールが近いことを後方の面々に伝えると安堵の声が返ってきた。
思った以上にワイルドな山道だったので、
ご年配チームは息も絶え絶えで途中で帰るといい出しかねない様子だったのだ。
さあ、憧れていたクラゲと戯れの時間だぜい。
Jellyfish Lake ↓
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uninhabited paradise @Palau [Palau]
のんべんだらりとしたひと時を過ごすとボートは動き出した、
「出発するよ。カヤック組をピックアップしたら、無人島でランチタイムだよ」
キャプテンはそう声を張ると眠っていたエンジンを叩き起こした。
さきほどの浮島までおかまいなしに飛ばし、カヤック組を拾い上げると、
ふたたびエンジンを唸らせ、洋上クルージングに突入した。
砂浜に囲まれた無人島が見えてきたところでエンジンを停め、
惰性だけになったボートを砂浜の手前で止め、倒れた巨木に舫った。
乗客は膝下ほどの浅瀬に降り立ち、履物を抱える形で島に上陸した。
「こちらでランチタイムです。一時間ぐらい、帰るときには声をかけますね」
パラオ式なのだろうか、このツアーでは「XX分まで」という時間の区切りがない。
ピークシーズンは対応が異なるのかもしれないが、
時間的な制約を設けないこのやりかたはなかなかステキだ。
20名ぐらいのワンボートならスタッフも全員に目が届くし、
客同士も顔が知れ、声を掛け合うことができる。
ヘンに時間や数字に縛られないのは気楽でいい。
島では別のツアーの先客がBBQの煙を立てていた。
切り立ったほかの島と異なり、方々に砂浜が広がり、上陸するのに容易いからか、
すでにさまざまなツアー・グループでにぎわっている。
ニギヤカな無人島だ。
野趣あるBBQの煙にそそられたが、
手元にはプラスティックの幕の内スタイルの弁当が配られていた。
BBQの煙を羨ましく眺めながら、それぞれが弁当を抱え、
日陰やテーブル、波打ち際などに気に入った場所を見つけ、腰を据える。
テーブルを囲む相手もいないこちらは、
これまた一人で弁当をつついていた韓国人ガイドと肩を並べた。
弁当は日本スタイルのオカズが入っていて、
こういう場所で供されたのしては悪くない味付けだ。
酒盛りするわけではないので、BBQよりも手軽で清潔な弁当のほう正解か。
日本の弁当なのに「チャプチェ」が入っているのがおかしかったが、
コイツがヤケにウマかった。
「イゴ、チャプチェ、マシッソヨ(これ、ちゃぷちぇ、おいしいね)」
黙々と食べていても楽しくもおいしくないので、
ブツ切りのインチキ韓国語でガイドに話しかけた。
「うちの会社が知り合いの韓国レストランで作ってもらっているんですよ。
おいしかったならレストランの人にそう伝えますね~。
え~、でもなんで、韓国語デキルデスカ?」
「ソウルによく行くんです。
韓国語はしゃべれないけどね、単語だけスコシワカリマス。
でもまさかパラオで韓国の人と韓国の味に会うとは思わなかったよ」
「わたしも韓国語を話す日本人のお客さんに会うとは思いませんでした。
弁当は『OBENTO』として町の売店でも売られてますよ。
日本語、同じ言葉です」
おお、今日はやたらと街なかで見かけた単語の謎解きがされる日なのだ。
ちなみにパラオは占領下からの影響で、今もたくさんの日本語が残っているらしい。
「OBENTO」(オベントウ)、「YASUMI」(ヤスミ)、
「MATA ASHITA」(マタ、アシタ)など単語からアイサツまで今も使われている。
ちなみに仕事終わりの一杯は「ツカレナオス」というらしい。
人の多い無人島、ランチタイムのひと時が過ぎていく。
Kemurbeab ↓
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relaxation paradise @Palau [Palau]
ミルキーウェイの興奮を船内に乗せたまま、ボートは動き出した。
『泥』という言葉が似つかわしくない海の底から掬われた真っ白なそれは、
肌理の細やかさから『美白効果』を詠っていた。
客たちは腕や足だけでなく、顔までを白く塗りたくっている。
そのせいで小さな船のなかは笑顔と嬌声で弾けたようににぎわっていた。
まるで子供の『おイタ』が大人の都合で終わらせられるかのように、
船内に散らかった泥は出発前になるとガイドやキャプテンが、
手馴れた感じで、しかも荒っぽく投げられる海水で洗い流された。
それでも『白い泥』の興奮は洗い流せないようで、
客たちはキレイになった船内でまだはしゃいでいる。
シートの隙間や誰かの水着には忘れられたように白いこびりつきが残っていた。
「次はシー・カヤックのポイントに向かいます。
カヤック・ツアーに申し込んでいない方は、
その間、別のスノーケリング・ポイントに案内しますね」
ふたたびけたたましい音を立てはじめた船外機に負けないよう、ガイドが叫んでいる。
しばらく走ると小島の間に設えた浮島が現れた。
そのイカダの上ではカヤック専属の担当が待ち構えていて、
ボートから渡ったカヤック・ツアー参加者に2人乗りのカヤックをアレンジしている。
あなたは朝からそこにいるのかい?
生憎、お金を払って働く気概はなかったので、カヤック・ツアーは見合わせた。
汗水垂らして櫓を漕ぐよりもボートの上でダラけて本でも読んでいるほうが性に合っている。
船から8割方の客が降り、家族旅行の大きなグループと年配と呼ぶには早いご夫婦と、
一眼レフを持ったアヤシイ一人旅オトコが船内に残った。
「楽しんできてね!」
ガイドが先導するカヤックに連なる面々に声をかけるとみなが笑顔で手を振り返してきた。
少しばかり警戒心が解けたのだろうか、こちらの問いかけに応えている。
あるいはアヤシイオトコから遠ざかっていけるので、安心感に包まれているのかもしれない。
軽くなったボートは外海を大きく回り、スノーケリング・ポイントでアンカーを下ろした。
外海に向かって開けた場所なのだが、あまり深くなく魚が多くいるポイントらしい。
潜ったところでローカル・ガイドが渡すスナック菓子を手にするとサカナまみれになれるようだ。
このツアーでは最後にメインどころのスノーケリング・ポイントが繰り込まれていたので、
ここでは海に入らず、デッキでのんびり文庫本を開いた。
デッキ、といってもトレジャー・ボートの舳先の小さなスペースだが、
ノイズもない世界、静かに揺れる小船でのひとときはなかなか至福だ。
「海、入らないの?」
エサやりを終え、上がってきたローカル・ガイドのオンナのコが話しかけてきた。
「まだあとにも潜れるポイントあるんでしょ? 楽しみは取っておくよ。
それにジェリーフィッシュ・レイクがメインなんだ、それまでに泳ぎ疲れちゃうよ」
「それはいい作戦かもね。後半はクタクタになっているお客をよく見るわ」
「ねえ、彼はナニしているの?」
客のいない船尾ではキャプテンがバケツを抱え、なにか細かい手作業をしていた。
尋ねながら近寄って手元を覗き込む。
「ナニ作ってんの?」
「コレかい?『TET』だよ。わかる? こうやって齧るのさ」
なにやら木の実をむしり、それを白い石灰の粉と一緒に葉っぱに巻き、
巻きタバコのようなものができ上がると口に放り込んだ。
「ソレが『てっと』か!
ビンロウの実だろ、英語でなんというか知らないけど、わかるよ」
「わたしはコッチが好き。これは『KEBUI』というのよ」
彼女は『ケブイ』と呼ばれる葉のほうを口に含んだ。
「『TET』に『KEBUI』ね、売店に貼ってあったアレか!」
「あ、そうそう。みんな街なかの売店で買うわ。アナタも噛んでみる?」
「いや、やめとくよ。そうか、張り紙の単語のナゾがようやく解けたよ。
どこの店にもデカデカと張り出してあるからフシギだったんだ。
へえ、こうやって作るんだ」
「でもこれは売店で買ったやつじゃなくて、今朝採ってきたばかりの新鮮なやつさ。
だから店で売っているやつとは一味違うのさ」
体格のいい船長がその体型に似合わない細かい手先の作業を繰り返している。
『TET』と石灰(後に『AUS』とわかる)を『KEBUI』に巻き込み、
出来上がったものが『BOO』と呼ばれるらしい。
彼はキレイに出来上がったモノをうれしそうにひけらかし、自慢げに口に含んだ。
チャポチャポと波に揺れ、叩かれた船底が小気味よい音を立てている。
なにをするでもなく、他愛ない会話が交わされるこのひと時が心地よい。
ああ、ノンビリすぎて、その写真を撮り忘れた。
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white paradise @Palau [Palau]
「ミルキーウェイ」と呼ばれるスポットには3~4艘の先客がいた。
入り江、という言葉が正しいのかわからない。
小島の合間に袋小路のように入り組んだ水路を進むと、
そこだけ白っぽく浮かび上がる海面があった。
周りには鬱蒼とした木々が水面に覆いかぶさり、影を作っている。
岩場や砂浜といった浅瀬がなく、
島側からはそこにアプローチできるような場所はなかった。
ボートはエンジンを切り、惰性で進むと先客たちのボートに舳先を連ねた。
エンジン音が消えると辺りが静かだったことを思い出させてくれる。
白い海面にはすでに水に入っている他の船の客たちの奇声が響くだけだ。
韓国人のガイドはカンタンに説明をすると、
日本人らしくまったく反応を見せない客たちに呆れるわけでもなく、
いつもそうしているように彼らを船上に残し、白い海面に飛び込んでいった。
彼に先んじて潜っていたローカル・ガイドの女のコと共に白い海中に消える。
海面を濁らせながら浮かんできた二人は、
両手で掬った真っ白な砂を船内のバケツに注ぎ入れた。
船内から「わあっ」と声が上がりはしたものの、
その後、どう振舞っていいのかわからないのだろう、
日本人らしさ全開で躊躇し、みな、大人しく船内の席についていた。
傍から見ていると「採ってきた白砂を見守る客」というフシギな図だ。
雁首揃えて見守っているのがアホらしく、
シビレを切らして、ふたたび潜って浮かんできたガイドに声をかけた。
「ねえ! 海、飛び込んでいいかな?」
「え? 問題ないですよ、OK、オケ~デス」
答えは判りきっていたが、許可を求めるところがコチラも日本人か。
シャツを脱ぎ捨て、おかまいなしに飛び込んだ。
今の会話を聞いてか、あるいは飛び込んでいったバカを見てか、
他のツアー客もそそくさと荷物をシートの下にしまったり、
ライフ・ジャケットを着込んだりと、おもむろに海に入る準備をはじめていた。
ガイドくん、君の説明は悪くないんだけど、日本の人には言葉足らずなのだよ。
ミルキーウェイの海底を覆い尽くす白砂は、
『砂』というよりは『泥』という感触で、
手触りは『粗めの片栗粉』という感じできしむような肌理だった。
水着や肌につくとベットリとまとわりつき、
しっかり洗い流さないとカンタンには落ちてくれない質感だ。
5mぐらいの海底に潜っては掴み取り、潜っては掴み取りと、
白砂の不思議な感触を楽しんでいると、
ガイドのふたりに襲い掛かられ、即席の「泥パック」をプレゼントされた。
髪も顔もドロドロの白海坊主、見参。
手馴れたふたりは潜っては姿をくらまし、
泳いでいる客の後ろに上手に回りこみ、
「泥パック」の攻撃を繰り返している。
さながら罰ゲームのようだが、水の中にいればそんなことは気にもならない。
気づくと自分たちのボートの周りも奇声に包まれていた。
Milky Way ↓ Googleの写真でも白いのがわかります。
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entrance to paradise @Palau [Palau]
6月10日、旅は4日目。
朝から陽射しががんばっていて熱い。
約束の8:45、ロビーはすでに熱く暑くなっていたが早々に下りて、
ツアーのピックアップを待っていると、フロントの電話が鳴った。
「ツアー会社ですけど、10分ぐらい遅れます」
スタッフから渡されたコードレス受話器の向こうの声は悪びれもせずそう告げた。
ああ、日本人としての几帳面さが恨めしい。
ツアーのバスはおそらく他のホテルでツアー客を拾うのに手間取っているのだろう。
業界事情がわかる身としては、おとなしく待つだけだ。
「まったく。ねえ、ピックアップ来たら教えてね」
フロントにそう告げ、ダイニングでカップにコーヒーを注ぎ、
エアコンがある自分の部屋に上がった。
朝とはいえ、エアコンがないダイニングやフロントの前にいるのは暑過ぎるのだ。
ピックアップのマイクロバスは予告どおり10分後にやってきた。
ガイドにうながされ、乗り込むとほぼ満員の車内がこちらに気まずい視線を向ける。
その視線に負けないように「コンニチハ」と告げてみるが、
景気よく返事をしてくれたのはガイドだけで、
残りの乗客は生きているのか死んでいるのかわからないような目をして、
こちらのアイサツを無視していた。
車内に欧米系が乗り合わせていなかったので、日本語でアイサツをしたのだが、
「ニイハオ」か「アンニョンハセヨ」のほうがウケはよかったのかもしれない、と
くだらないことを悔い改めていると、ガイドが日本語で車内に説明をはじめた。
見知らぬ同士とはいえ、ツアーで一日を共にするのだから、
アイサツぐらい交わせばいいのに、ナニか損するとでも思っているんだろうか。
こういうとき、日本人の旅行ベタを痛感する。
カップルや夫婦、家族連ればかりのようだから、
ただ単に「オトコ一人で乗り込んできた」ヤツをアヤシんでいただけかもしれないが。
車窓の風景を楽しむまでもなく、クルマはすぐに到着した。
船着場にツアー会社の事務所が併設されているようで、
車内の説明の通り、エアコンが効いた建物の中に進み、受付を済ませる。
「支払いオネガイシマス。
ジェリーフィッシュ・レイク、パーミットはコチラでツクリマス」
カウンターでパラオ・ローカルだろう色黒の男性がたどたどしい日本語で説明してくれる。
「苦情じゃないんだけど、パーミット$100って高いよね。
ツアー代金の$90より高いんだぜ? 政府、ヒドくない?」
他の客にわからないように英語でそうツブやいてみると、
彼は急に笑顔になり、捲くし立てるように話し出した。
「3倍の値上げはヒドいですよ。でも政府の決定。コレ会社、利益ナイです。
でもオキャクサンたち、カワイソ。$100、高いネ~」
環境保護対策、あるいは増えすぎた観光客への対抗策だろうか、
こういったコストでブレーキをかけるのはわからないでもないが、
「持っているところから毟り取りましょうね」というのはどこの政府でも考えることだ。
英語に気を許したのか、彼は立て続けにしゃべる。
あまりの値上げに観光客を失いかねないツアー会社サイドからは陳情を上げているらしい。
受付の書類を記しながら、そんな裏事情が拾えたりした。
「これ、パーミット、できました。
アッチでフィンとゴーグル、借りてくださいネ。出発のとき、呼びますヨ」
たいして待たされることもなく、名を呼ばれ、屋根つきのトレジャー・ボートに乗り込んだ。
両側2席ずつ、7~8列ほどのシートはほぼ埋まっていて、
ピックアップの時よりも人数が増えているようだった。
プラスティック製のシートは開けると中に荷物が入れられるようになっていて、
スノーケリングで上がっても荷物を濡らさずに済む、という造りになっていた。
送迎から同乗していた韓国人のガイドが船のキャプテンとローカル・ガイドの女性を紹介する。
どうやらこの3人が本日の案内役らしい。
ひととおりの説明が終わるのを待っていたツインの船外機がけたたましい音を立てはじめた。
船底が波を叩く音と風を切る音が激しい。
ボートは会話がままならないほどのスピードに達し、気づくと外海を走り出していた。
海はほとんど凪に等しいといってもいい表情で、パラオの海の穏やかさを印象付ける。
それでも海面を叩いて走るボートのノイズは強烈だ。
次第に遠目に小島がポツポツと現れはじめた。
すべての島は波の当たる裾の部分をえぐられていて、
頭デッカチの奇妙なスタイルを保っている。
たぶん石灰質の岩が削られ、硬い部分が島として残ったのであろう。
ベトナム・ハロン湾を思わせる風景が広がったが、
旅先の情景を他の土地に重ねるのはあまりに愚かなので、頭の中でそれを打ち消した。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2009-01-05 (ハロン湾紀行)
15分ほど走ると船は極端にスピードを落とし、惰性で小島の合間を縫って進んだ。
最初の目的地「ミルキーウェイ」が近づいてくる。
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stunning paradise @Palau [Palau]
熱い時間をドーナツ屋でやり過ごし、外に出た。
路地裏を歩くと日陰や涼しげな軒先で昼寝を決め込んでいる姿をよく見かける。
島だろうが大陸だろうが、熱い時は無理に動くことなく『シエスタ』が正解。
怠惰な響きの『昼寝』より、スペイン語を借りてそう言ったほうが響きがいいよね。
観光局でもらったパンフで、
『TOYOTAレンタカー』が一番安いクルマを抱えていることがわかっていた。
大きなホテルのロビーにはお馴染みの『Hertz』や『budget』のカウンターもあったが、
それらは無視し、T-dock近くに事務所を構える『TOYOYAレンタカー』に向かった。
ミドルクラスのホテルのロビーはひと気がなく、薄暗くひっそりとしていた。
スタッフを呼ぶ声を出そうかと見渡すと、
左手の壁に『TOYOTAレンタカー』の緑色のプレートが掲げられていることに気づいた。
そのドアをノックし、開くと、白髪で色黒のオジサンが慌ててこちらに向き直った。
「レンタカー、ここでいいのかな?」
慌てる表情に声をかけるとオジサンは赤く染まったツバをティッシュに吐き出した。
赤いツバの理由は『ビンロウ(檳榔)』だろうな、と想像がついていた。
パラオにもあったのか、という感じでオドロキにはならなかった。
椰子の一種の実や葉を口に含み、噛みタバコのように楽しむ嗜好品で、
台湾やアジアなどで愛用されている。
常用性が強く、噛み出すと唾液が真っ赤に染まり、
ドラキュラ状態で口内は鮮やかな赤が広がる。
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後々、わかるのだが、パラオでは実の部分を「TET(テット)」、
葉っぱを「KEBUI(ケブイ)」というらしい。
「OBENTO」と一緒に売店の店先に張り紙されていた奇妙なアルファベトは、
コイツのことだったのだ。
台湾辺りでは艶やかな『檳榔売り』のオネエチャンが有名だが、
近年は発ガン性が高いことが指摘され、利用者が減りつつある。
しかしここパラオでは普通に売店に並び、愛用されているようだ。
「クルマ、明後日から借りたいんですけど」
「ちょっと待ってね、あさってね。クルマはどのタイプがいい?」
「安いのに越したことはないけど。一番安い$30のがあればうれしいですね」
オジサンは時折、ツバを吐き出しながら、
ホワイトボードに刻まれた予約表をチェックする。
接客中でもビンロウを噛むことはやめないのね。
「明後日からなら$50のジムニーだなあ。$30のヴィッツは埋まっているなあ」
「う~ん、$50ですかあ。
保険入れてトータルでいくらになります? ガスは入ってます?」
「全部で$80ぐらいかな。ガソリンは自分で入れるんだ」
アメリカだと保険代、燃料費込みの割安なパッケージがあったりするのだが、
この店にはそういったシステムはなく
どうやらレンタル料の5割ほどの保険料がかかるらしい。
「これって、24時間の料金ですよね?
11日の昼の11時に借りて、
12日の夕刻18時に空港戻しだといくらになりますか?」
「いま、オフシーズンで予約詰まってないから、
そのぐらいなら1日分の料金でいいよ」
「それはうれしいなあ! でも$50がねえ、一番安いの借りたかったから」
「$30は3台あるんだけど、長期予約が入っちゃってんだよね。
それなら10%OFFにするから、どうだい?
$50のクルマは予約入ってないから割り引くよ。
保険もいらないんじゃない? その分、セーブすれば$45だけで済むよ?」
ポンポンとハナシが展開しかと思うと、終いにはオジサンは大胆なことを言いはじめた。
「保険いらないって?」
「だってここはパラオだよ。いつ保険が必要なのさ」
(オジサン…。おもろすぎるよ、ビンロウでハイになってるのかい?)
たしかにここ数日、メイン・ストリートも裏通りも歩いてわかっていたのだが、
パラオの人たちはとても安全運転だ。
広い通りで空いていても40km以上出すことはないし、
交差点にはなにせ信号がないのだが、譲り合って、粛々とすれ違っていく。
震災の停電で信号が消え、交差点がパニックになっちまうどこかの国とは事情が違う。
「そういうなら、$45のアイデアに乗っかっちゃおうかな」
ロー・シーズンゆえのアドバンテージ、あっという間に旅先の足は確保された。
「泊まりはドコ? 明後日、何時に行けばいい?」
「宿にピックアップに来てくれるの? 助かるなあ。じゃあ、11時はどうですか?」
「ピックアップじゃなくて、デリバリー。クルマを宿に持っていくよ。
返却は空港に18時ね。支払いはクルマを渡すときだから用意しておいて」
まさにトントン拍子の展開、だがこの南の島のリズムはこれだけではなかった。
T-dock ↓
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fortunate paradise @Palau [Palau]
昼前だというのに景気よく照り続ける日差しの中、メイン・ストリートを歩いた。
到着日からこの通りを何往復しているのだろう。
すでに大通りには飽きていたので一本裏手の通りにズレ込んでみた。
メイン・ストリートに沿って平行に走る裏通りは、
日本スタイルの『居酒屋』やミドル・クラスのホテルが並び、
ここでもよく見かける『売店』がそれらの間を埋めていた。
メイン・スポットの『WCTC』の裏手までやってくると、
『BAR』や『CAFE』のカンバンが増えはしたが、
通常の観光客が海に繰り出しているこの時間はまったくやる気をみせていない。
彼らが戻ってきてからネオンを灯し、営業に熱を入れるのだろう。
そんななか『Best Coffee & Donuts House』は『OPEN』表示を出していた。
どうやら昼間でも営業しているらしく、クルマが乗り付け、人の出入りがある。
ランチにドーナツを決め込むほどアメリカン・ナイズされてはいないが、
人の動きに吸い寄せられるようにドアを開け、中に進んだ。
繰り返しの渡米で朝食にドーナツ、というアメリカの食習慣は馴染みはしたが、
コーヒーにドーナツを浸して食べる、っていう方式は未だに馴染めない。
パサつく『ドゥ』をコーヒーで潤す作業はさながら『お茶漬け』のようだが、
あの食感は未だ違和感がある。
ああ、こんなことじゃ、立派なボストンの警察官にはなれそうにない。
重ねて駄話。
数年前に起きた『クリスピー・クリーム~』の行列はナンだったの?
あのドーナツ屋ってアメリカでは所謂『ドライブイン・ドーナツ』、
ガソリン入れたついでに買うコーヒーのツケあわせみたいなものだぜ。
NFLの現地取材でレンタカー駆って、
ガス・ステーション(『ガソリンスタンド』って日本語英語ね)に寄るたびに、
口にするものだったから、行列してまで食べる行為は空前絶後に理解不能。
いっそのことなら『INandOUT』よ、日本上陸してくれ。
横長でこじんまりとした店は、
入ってすぐ正面にガラスのショーウィンドウがあり、その右端にレジが据え付けられていた。
さらにその奥はイート・イン・スペースらしく、4人がけのテーブルが4つほど置かれている。
「ハーイ」と声をかけ、レジ前のオバチャンに話しかけようとすると、
窓際の2つのテーブルを陣取っていたオヤジサンたちにジロリと睨みつけられた気がした。
「甘くないものってありますか?」
「サンドウィッチかバーガーがあるわよ、人気はこれね」
オバチャンは気さくに答え、ガラス・ケースの中を指差す。
その先にはバーガー状のハムエッグ・サンドとツナ・サンドが並んでいた。
「じゃあ、ハムエッグとコークください」
「これ、ハムエッグ・チーズ・サンドだけど、ダイジョウブ?」
「え? チーズも入っているの? それならもっとうれしいな」
ハムエッグ・チーズ・サンド$1,85+コーク$85、計$2,70を支払う。
「Go or Here?(持ち帰るのか、ここで食べるのか?)」
「エアコンが効いているから、ここでゆっくりしてもいいかな?」
「もちろんよ」
トレイを持って、壁側のテーブルにつくと、
5~6人いたオヤジサンたちは自分たちのハナシに夢中になっていてこちらに目もくれない。
地元の人たちの憩いの場に割って入ったヨソモノめ、と睨みつけたかのように思えたのだが、
コチラの考え過ぎ、モーソー膨らませ過ぎだったようだ。
保険がドーコー、支払いがドーコーという単語が飛び交うハナシがひと段落すると、
それぞれが店を出て行ったり、コーヒーをおかわりしたりと、おかまいなしに過ごしていた。
日中の一番熱い時間、快適なエアコンの元でしばらく読書を続けた。
ドーナツ屋は人気のお店らしく、人の出入りが激しい。
箱で買っていく人もいれば、テーブルで子供にドーナツを食べさせ、帰っていく夫婦もいる。
近所の子供が大勢できて飲み物だけ頼んでいる姿は、さながら日本の駄菓子屋だ。
文庫本をめくる合間にそんな光景を横目で見ては楽しんでいた。
「ドーナツとコーヒーのセットもらえますか?」
「気を使って追加注文しなくてもいいわよ、ここは涼しいんだから長居して」
オーナーなのだろうか、レジをチェックしていたオバアチャンが優しい一言をくれた。
「いや、ホントにお腹が減っているんですよ。ランチにサンド一個でしたから」
座って文庫本を読んでいただけなのだが、みなが買っていくドーナッツに気を惹かれていた。
ドーナツ2個とコーヒーのセット$2,25を追加注文した。
ちなみに『読書』というやつは時間的にはジョギングと等価でカロリーを消費するらしいですぜ。
いかがです? 『読書ダイエット』、読めば読むだけ痩せる! なんつって。
生憎、マンガ本ではダメらしいけど、スマホを文庫本に差し替えてはいかが。
といっても読みながらドーナツ2個も食ったらダイエットにはならないよな。
豪奢ではないが、ステキなくつろぎの時間。
Best Coffee & Donut House ↓
sad paladise @Palau [Palau]
6月9日、旅は3日目。
昨夜は夕食も食べずにベッドに沈んでしまった。
こう書くと聞こえはいいが、
ただ単にフライトの疲れが残っていたのと、
ただ単に歩き過ぎで電池切れ、
ただ単に体力がなかっただけのお話しに過ぎない。
なにせ自転車で軽快にパラオの風を切り、爽やかに過ごす予定だったのが、
ジリジリとした暑さのなか、トボトボと歩き回り、ドベドベに汗をかいて、
大して得るものもない南の島の一日を過ごすハメに陥ったのだ。
どちらかと体力的な消費よりも精神的な消耗度が割り増しになったのかもしれない。
今日も無為の時間を過ごすわけにはいかず、できることからはじめることにした。
まずはフロントに頼み、スノーケリングのツアーをブッキング。
スタッフの彼は慣れた手つきで馴れた電話番号を押す。
レジャーボートで白い砂が海底を覆う「ミルキーウェイ」を訪れ、
クラゲが漂う「ジェリーフィッッシュ・レイク」を巡り、
合間に「スノーケリング」とランチがついてのワンデイ・トリップ。
$90のアイランド・ホッピング・ツアーだ。
「オフ・シーズン」というアドバンテージが効いたのか、
あっさりと翌日のツアーをブッキングすることができた。
ところが同時に悲しいお知らせが電話口に響いた。
「ジェリーフィッッシュ・レイク」のパーミット(許可証)が値上がりしたという。
この6月1日から$35が$100に上げられたのだ。
値上げするにしても3倍は激しすぎないか、パラオ政府よ。
ツアー料金より許可証のほうが高いし。
政府発行の許可証なので、ツアー会社に文句をいってもしかたがない。
明朝8:45、モーテル・ピックアップの約束を取り付け、電話を切った。
しかし自転車屋にしろ、許可証にしろ、一週間ほど待ってくれないのかねえ。
下調べもしないで飛び込んでくるコチラの愚かさは一応、棚に上げておこう。
「自転車どうなった?」
退屈そうにコチラの電話が終わるのを待っていた彼に問いかけた。
彼に問いかけた理由は昨日に遡る。
レンタル・ショップのバケーション表示にやられ、
予定真っ白、アタマも真っ白で、闇雲に街を歩き、
自転車やバイクが置いてある店を見つけては尋ねてみたものの、
まったく収穫はなく、時間だけをムダに過ごした。
メイン・ストリートを東の端で折り返し、今度は西の端にある「パラオ観光局」まで歩いた。
観光局の小さな事務所に入り、エアコンで汗を乾かし、カラダを冷やしながら、
レンタル自転車に関して尋ねてみたが、あの店の名前が出てくるだけだった。
彼によるとパラオで自転車を貸す店はあの一軒しかないらしい。
「オフ・シーズンだからね。今のうちにバケーションをとったんだろうね。
あなたも休暇? どちらから?」
「日本からですよ。仕事ですけどね。
南のリゾートにオトコ一人、休暇で来る趣味はないんで」
どう見てもアジア顔をしているのだが、
181cmという身長にサングラス、というのが日本人らしくないのかもしれない。
「ニホンジンでしたか。
いや、英語に臆せず話してくるので、別の国の人かと思いました」
「ははは、ニホンで覚えた英語じゃないので。発音がヘンでしょ?
自転車がダメだとするとバイクを貸してくれるところはないですかね?」
「ないですねえ。パラオはこの陽気ですからね、バイクはあまり。
借りるとすればレンタカーでしょう」
機動力と体力を失い、希望を失いかけ、日が落ちかけた頃に、
モーテルにトボトボと帰ってくると宿のスタッフが夕涼みをしていた。
「今日はなにしたの?」
自転車を借りるはずのアテがはずれ、予定が狂い、
しかたなくメイン・ストリートを歩き尽くしたことを伝える。
「歩いたの? コロールを一日? スゴイネ~。
それなら知り合いが自転車持ってないか、聞いてあげようか?」
「そいつはうれしいな。ダメモトで頼むよ~」
ひょっこり沸いて出たハナシの答えを尋ねたのが先の「自転車どうなった?」だ。
「あったけどさ、ブレーキがイカレてるからダメだね」
売店の向こう側、別棟の中に古いマウンテンバイクが置かれていた。
チェックするとタイヤやギアは健全に役目を果たしていたが、
ブレーキ・ワイヤーはこれ以上張れないぐらい引かれていて、
工具を借りてイジってみるが、その役割を思い出す気はないほど頑固な状態で固まっていた。
「コレ、ダメだね。いくらパラオののどかな交通事情でも、
ブレーキなしの自転車じゃあ死ぬよ。ダメとなるとあとはレンタカーしかないか」
ツアーをブッキングして、明日の予定が確定したことで安堵が広がったせいか、
昨夜のそんなやりとりを思い出していた。
しかし今日を含め、残り4日のうちの1日分の予定が埋まっただけ。
依然、写真を撮り歩く足は確保できておらず、安堵に浸るには早い。
まずはランチで燃料補給、作戦会議はその後だな。
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disappointment in paradise @Palau [Palau]
あれだけ屋根を叩いていたスコールは蛇口を捻ったかのように止まった。
昨夜歩いた道を同じように辿り、メイン・ストリートを目指す。
まずは旅の足になる自転車を借りに行くのだ。
レンタカーを借りるつもりでいたのだが、
ひょんなことからレンタルの自転車屋がある、という情報を見つけたので、
旅の前半は自転車で、必要があればレンタカーで、という算段を立てていた。
クルマの機動力は魅力だが、いい画になりそうな場所を見つけた際、
急に止まる、という荒業が効かない上に停める場所にも気遣いが必要なところが難点だ。
その点、自転車やバイクだとかなり自由と融通が利く。
コロールのド真ん中に『WCTC』というショッピング・モールがあり、
その真向かいにショップがある、ということなので、そこを目指し、歩いた。
WCTCは『Western Caroline [Islands] Trading Company』の略で、
1階に大型スーパーを抱える街のランドマーク。
コロールの背骨でもある大きな通りの名は「Main」、
冗談のようだがその名の通り「メイン・ストリート」だ。
昨夜チェックイン直後に歩いたメイン・ストリートはすでに暗く、
どことなく寂しい感じが漂っていた。
21時だというのに道を歩く人は少なく、
ヘッドライトを灯したクルマだけが行き交っていた。
薄ら寂しさに腰が引けたが、冷静に観察すると
ガソリン・スタンドに併設されたショップは頻繁に人が出入りしていて、
となりの体育館ではバスケットボール・プレーヤーの声が響いていた。
暗さと寂しさの印象は慣れない土地での心持ちのせいかもしれなかったが、
街灯や明るい看板がないことがどうやらそれを割り増しにしていたようだ。
ガソリン・スタンドのショップのなかをひと通りながめ、
メイン・ストリートを西側から東に向かって歩いた。
空港への道を戻る形だ。
ポツンポツンと距離を置いて点在し、明るい光を放っているレストランには、
クルマから店へ、店からクルマへと人の動きがあった。
薄明かりを漏らしている売店はクルマが横付けしては去っていく光景を繰り返していた。
それでも「首都の目抜き通り」らしさは見出せず、
長距離バスからアジアの片隅の地方都市にでも降り立ったような気分に浸っていた。
地図もない徒手空拳で歩いてきたので、
果たしてここがメイン・ストリートなのか、疑ったほうがいいのかもしれない。
もっとも宿が出発地点で大通りはひとつしかないので、疑う余地はないのだが。
こじんまりした売店が繰り返し現れるが、どこも似たような造りでおもしろ味はない。
ひと気のない店はチラリと覗き込む程度で、
2~3人の客を飲み込んでいた売店に足を進めた。
入口には「OBENTO」や「TET」「KEBUI」という文字が貼られている。
店内はスナックやカンヅメ、飲み物を中心とした品揃えで気をひくようなものはない。
入口の文字が気にはなっていたが買う気もないのに無神経に尋ねる勇気はなかった。
2Lのミネラル・ウォーターと朝食用にサンドウィッチを買い、宿に戻った。
Main通りは昨夜同様、静けさを保っていた。
昼間ということもあって、少しは人の行き来があったが、
見渡す風景はやはり「首都の目抜き通り」にしてはうらぶれていた。
15分ほどでWCTCに到着。
大きなスーパーがあるせいか、クルマの出入りや人の行き来が多い。
WCTCを後回しにして、真向かいのショップに向かう。
入口のドアは閉まっていた。
ランチタイムあるいはシエスタか、と思い、店先から覗き込むと小さな張り紙があった。
「6月6~26日まで休業します」
おいおい。
気を失いかけたが、思い留まり隣の店に声をかけた。
「おとなり、休みなんですか?
「なんか昨日、休暇で日本に帰る、っていってたわよ」
おいおい。
入れ違いで日本に行かなくてもいいんじゃないの。
自転車を駆って写真を撮る、という軽やかなアイデアは容易く水泡に帰した。
WCTC ShoppingMall ↓
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check in at paladise @Palau [Palau]
6月8日、旅は2日目。
出かけようと準備をしていたら、激しいスコールが窓を叩きはじめた。
朝から出鼻をくじかれた形となり、仕方なく食堂に下り、コーヒーを飲むことにした。
「あはは、出かけられないね」
昨夜、空港でピックアップしてくれた彼が玄関前でなにか作業している。
こちらに気づき、手を止め、屈託ない声で空を指差した。
「ああ、まいったよ。
まあ、到着のとき、降られなかったからラッキーかな」
パラオにはいわゆる「安宿」というのがなかった。
一人で見知らぬ土地を歩くにはローカル情報を得るため、
旅行者と交流できるゲストハウスやホステルが好ましかったが、それがない。
サーファー向けの「ゲストルーム」がありはしたが、
そいつは一ヶ月単位からの滞在なので話にならず、途方にくれた。
なんとか調べ上げ、$40のモーテルがもっとも安い、という確証を得た。
知らない土地は安宿の相場もわからなくて困る。
経費を節約するため、数軒あるモーテルを選択肢に並べ、
そこから空港送迎が無料という宿にだけ、メールで問い合わせをかけた。
直前の予約にもかかわらず、6月はオフ・シーズンということもあってか、
メールの返信はすぐに飛んできて、
結果、ここ『Lehns Motel』に部屋を確保することができた。
入国を終え、貧相なターンテーブルを通り抜け、到着ロビーに出ると、
ツアーや大きなホテルのピックアップ・スタッフがバナーを持って立っていた。
「レーンズ・モーテルはダレ?」
誰彼かまわず尋ねてみるとそのなかの一人が後方に向かって声をかけてくれる。
空港送迎に来ている面々は毎日ここに集う馴れ親しんだ顔同士なので、
本人を捜し当てるよりも仲間に呼んでもらったほうが早い。
これはシンガポールのランド・オペレーター(現地旅行会社)で覚えたワザだ。
当時、空港に出向く仕事ではなかったが、
「ミーティング」という名で日本からのVIPを出迎える役割があった。
そんなとき、ターミナル出口が数箇所あるチャンギ空港では、
自社のガイドを探し当てるのに他社のガイドに尋ねるのが手っ取り早かった。
だだっ広いチャンギの到着ロビーを走り回るのは合理的とはいえない。
今でもシンガポールに到着すると古い顔馴染みのガイドにバッタリ出くわすことがあり、
「今日はなにしているの?」といわれる。
日本から遊びに来た人間にいうセリフとしてはあきらかに間違っているのだけど。
モーテルのピックアップ・スタッフは頼りない英語でこちらの名前と予約番号を確認すると、
屋外の駐車場を先導して歩いていった。
「雨、降ったんですね」
「さっきまで激しいのが降ってたんだけどね、到着前にピタリと止んだよ」
到着時の幸運は南の島でも健在のようだ。
シャワーで濡れた路面が南の島の蒸し暑さを吸い取ってくれていた。
空港送迎には似つかわしくない4WDのトランクにキャスター・バッグを放り込む。
助手席に乗り込むとき、クルマが日本製のジムニーだったことに気づいた。
パラオの空港は「コロール」と名乗りながら、
メイン・ストリートがあるコロール(Kror)島ではなく、
東隣の島、バベルダオブ(Babeldaob)島にある。
一時間以上離れているにも関わらず、
「東京」と冠する空港があるぐらいだから驚くには値しないか。
空港の周りには店どころか、街灯もなく、
20時過ぎとは思えない暗さの夜道をクルマは走り出していた。
「宿まで30分ぐらいだよ」
ステアリングを切る彼がシャイな感じでボソッとつぶやく。
橋を渡り、西側のニギヤかなコロール島に向かうわけだが、
空港から距離があるため、送迎に$2~30を求める宿が多い。
この宿は「送迎無料」を掲げていたので、一泊分に近いアドバンテージだ。
30分かからず、キッチリ25分で宿に到着した。
部屋を見せてもらうと、スイート(続き部屋)ではないが、
サービス・アパートメントのような簡素なキッチン・スペースがあり、
右手にシャワー・ルーム、左の部屋にダブルベッドが鎮座していた。
古い部屋ではあったが清潔だ。
「希望すれば毎日、部屋の掃除とベッドメイクはするよ」
さっきまで運転手だった彼がエアコンのスイッチを入れながらそう説明する。
ベッドメイクのことはあまり気に留めなかったが、
エアコンがキッチリ効きはじめた上にカンタンなキッチンがあることがうれしかった。
フルーツを買ってきてもいいし、ヌードルを作るのにも重宝するからだ。
「近くにコーヒー・ショップか売店ってある?」
「コーヒーは朝、キッチンで無料でサービスするよ。
店なら今来た道の途中にあったガソリンスタンドか、その並びにあるよ」
「ありがと。あとで行ってみるよ」
5泊分の宿泊代金をUSドルで$200渡し、領収書をもらうと、
いつものように部屋に荷物だけを放り込み、すぐに出かけた。
現地に着いたら飲むか食べるか、なにかをカラダに取り入れたいのだ。
そうじゃないと旅がはじまる気がしない。
雨が降る中、コーヒー片手にスタッフとしゃべりながら到着の夜を思い出していた。
Lehns Motel ↓
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fly to paladise @Palau [Palau]
UA257の機内は『プレミア・エコノミー』のエリアに限っていえばガラガラだった。
ユナイテッドの場合、ビジネスとエコノミーの間、
機材でいうと羽の上あたりが『プレミア・エコノミー』に割り当てられているが、
10列ほどのワンブロックには自分を入れてもわずか7名しか座っておらず、
一人が2-5-2の一列を占拠しても余るような状態だ。
前方のビジネス・クラスも同様にすべて埋まっていた。
ほとんどがアメリカ人で、到底、通常席では暮らしていけないような体躯ばかり、
きっとマイルのアップ・グレードで幅の広いC席を確保したのであろう。
そのため、残念ながら『シルバー・メンバー』のこちらに、
自動アップ・グレードの恩気が施される余地はなくなっていた。
ちなみにこの「羽より前」というのが機内の快適さにおいて重要で、
羽についたエンジンの前と後とでは機内のノイズは倍以上は違う。
前方は吸気のモーター音程度だが、後方はジェット音でものすごいことになるのだ。
そのためエコノミーは『貧乏席』などと呼ばれているのだが、
そのステキな席をあてがわれた人々は異常に乾燥した機内で、
ジェット音に抗ってしゃべることを強いられるため、
到着までにはノドをやられ、カラオケ後の酔客並みのハスキーボイスとなり、
おまけにジェット音で耳もやられているため、やたらと大声になるのが特徴だ。
この機ではギャレーより後方がそのエコノミーで、
そこから圧縮されたように人が詰められ、満席状態。
グアムに向けて準備万端、リゾート向けの帽子をかぶった顔で一面、埋め尽くされている。
機内で帽子はまったくもって必要ないと思うのだが。
お気づきと思うがこの後方に押し込められるのがツアーや格安航空券の人たちだ。
エンジン音もうるさく、料理も限られ「チキンorビーフ」とも尋ねられることもない。
CAは「傍若無人」「厚顔横柄」というこの席専用の特別対応をしてくれるし、
そのうち補助席がつく、というウワサもあるぐらい詰め込まれた素敵なエリアです。
それをフライト全体に施しているのが話題の「LCC(ロー・コスト・キャリア)」です。
こちらもツアー客同様、『格安航空券』でのご搭乗なのだが、
幸い『マイレージ・プラス』の『シルバー・メンバー』を維持しているので、
自動で「プレミア・エコノミー」が割り当てられる、格安航空券でも。
わずか数cm席幅が広いだけなのだが、
181cmの身長を抱えるこちらとしてはヒザをすり減らさないですむのがありがたいので、
毎年、なんとか『シルバー・メンバー』を維持することにしているのだ。
機内では疲労軽減と代謝を上げるため、死ぬほど炭酸水を飲み、コーヒーを浴びて、
繰り返しトイレに動くので『通路側』を確保することにしている。
今回はその『プレミア・エコノミー』の2-5-2席の配列の「5」を確保、
これにて『貧乏人のファースト・クラス』が完成。
機内食も断り、フル・フラットでガッチリ熟睡すると3時間後の14:30にグアムに到着した。
到着にはしゃぐツアー客を尻目に『トランジット・エリア』に進む。
手荷物を流し込み、全身スキャンのX-ray検査。
どういうわけかわからないが、US本土よりも検査がキビシイ。
応対が丁寧なので不快感はないが、ホトンドの人がカバンを開けられている。
なぜだろうと首をかしげながら、『United Club』のラウンジに向かった。
ラウンジ利用ができるとトランジットも苦痛でなくなる。
手持ち無沙汰な出発ロビーでくつろげる場所があるというには大きなアドバンテージだ。
酒がイケる口ならラウンジでタダ酒に酔っていればいいのだから、
利用価値はさらに割り増しですぜ、こちとら飲めないんだけど。
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3時間のトランジットのあと、搭乗時間ギリギリまでラウンジでくつろぎ、ゲートへ。
コロール行きのフライトはけっこう混んでいて、
機内には座席幅いっぱいの巨躯をシートにめり込ませているポリネシア系の人たちが増えていた。
フライトは2時間ちょっと、コロールの空港には20時前に到着した。
入国に進むと地方にある遊園地の券売所のような木製のボックスが3つほど並んでいる。
その中にいた係員は訪れた人々のパスポートを念入りに調べ倒していた。
入国管理官が滞在日数や滞在先といったお決まりの質問を無愛想に口にする。
「帰りのチケットは?」
「E-チケットだからプリントしたものはあるけど?」
「それでいいわ、みせて」
小さな国や途上国ではその国を出て行く証(あかし)を求められることが多いので、
いつもは打ち出さないE-チケットだが、今回はプリントしてきていた。
「パラオヘヨーコーソー」
「あはは、ステキなニホンゴだ」
たぶん訪れる日本人観光客が多いのだろう。
木製のボックスに合わせて肥大化したような管理官のおばちゃんに、
判で押したようなアヤシイ日本語で歓迎の言葉をもらうと、ターンテーブルに進んだ。
ターンテーブルは1つしかなく、古びた黒いベルトコンベアが音を立てて回っていた。
バゲージを預けなかったのは正解だったかもしれない。
一国の首都空港というのに日本の地方空港よりもこじんまりしていて、
物悲しさよりも可笑しさがこみ上げてきそうになった。
あとは外に出れば到着ロビーに宿のピックアップが待っているはずだ。
Babelthap Airport ↓
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going to paradise @Palau [Palau]
ソウル、釜山での夏休みを過ごし、帰国しましたが、
赤道直下の国々より熱いことになってますね、この国は。
避暑のつもりの訪韓だったんですが、タイミング間違えたなあ。
さて、出発前に刻んだ2012年5月の『毎月ソウル』に続き、
6月に訪れた『パラオ紀行』を掲載します。
すでに『風に吹かれて』に載せたものですが、
時系列を追う形で順を追うことにしました。
文章に多少の校正をかけて再掲しますね。
南の島からの風に吹かれて、少しでも熱い夏をやり過ごせればうれしいです。
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6月7日、5時半の私鉄で成田空港を目指す。
フライトは11:10なのだが、
始発に近い時間の列車に乗り込んだのは、朝のラッシュを避けるため。
キャスター・バッグを引きずって通勤ラッシュに割り込むほど、
無神経でも酔狂でもないからね。
そのためチェックイン・タイムより1時間ほど早く空港に着くことになるが、
『Priority Pass』を使えば『ビジネスクラス・ラウンジ』に長居できるので、
その間合いが苦痛、ということにはならないで済むのですね。
今回、観光局がらみの仕事でパラオに飛ぶことになった。
以前、代理店経由でタヒチ観光局の記事を書かせてもらったのだが、
そのときは代理店の人間だけが現地に飛び、
こちらはアリモノで記事を書くという、旅行記事にありがちな形式で、
「オレモ現地ニイカセロヨオ」と歯噛みしながら、原稿を仕上げた記憶がある。
http://www.airtahitinui.co.jp/special/report/index.html
そのときの記事、タヒチ観光局とエア・タヒチ・ヌイのキャンペーン『タヒチ楽園ブログ』。
今回はその逆でライターだけが飛び、カメラ担いで現地を回って来い、というわけ。
昨今、どこの会社も経費に関してはカツカツなので、一人で飛べる身は重宝されるのだ。
ただし日程に余裕はあるものの、協賛やバーターがないので、
手配はコチラで行った上にさらに現地のアテンドもない、という状態で、
まさに「一人」で切り盛りしなくてはならない。
とはいえ、それはそれでなにかに拘束されない分、自由に動き回れるので気は楽だ。
自由、となるとチケットから宿、現地の足まで手配しなくてはならない。
このあたりは「元旅行屋」としてはお手のものなのだが、
旅そのものよりもあれこれ計画や手配しているこのときが一番楽しい時なのかも。
実際、成田に向かうその時間が一番億劫だったりもする。
ネットでチケットを検索してわかったのだが、
パラオに行くのは日本からグアムを経由し、
パラオのコロールにたどり着く、というのが常道らしい。
なにせ個人的には「南の島」というやつに縁遠いのだ。
ツアコン時代に社員旅行の定番でグアムに数回飛んだこと、
数年前に『PROBOWL』の取材でハワイ滞在を繰り返していたこと、
「南の島」の経験がそれぐらいしかないのだ。
『PROBOWL』の取材では4~5年続けてワイキキに飛び、一週間は現地に滞在。
午前と午後のプラクティス取材のあと、時間があるのでレンタカーで方々出向いたものの、
あまりオイシイ食べものがないハワイの街には飽き飽きしていた。
ロコモコもパンケーキも日本人の口にはウマイとは言い難く、
ハマったのはといえば、ベトナム料理の小さな食堂ぐらいだった。
それよりもリゾート地での一人メシ、というやつは割り増しで侘しさが募るのですね。
さらに遡ると幹事の機嫌で左右される社員旅行の添乗員なんか、
旅のシゴトよりも接待が優先され、今考えるとよくやっていたなと思う。
出発日やら帰国日をいじっていると、
バンコク経由やシンガポール経由というチケットのルートが画面に現れた。
この時、まだパラオの正確な位置関係を把握していなかったが、
日本への直行便はもちろん、フィリピン・マニラを経由して日本に帰国する、
なんていうパターンのチケットもあるらしいことがわかった。
マイルを貯めている『スター・アライアンス』系列の航空会社を使うと、
パラオ・コロール~マニラ~バンコク~ハネダとか、
パラオ・コロール~マニラ~シンガポール~ナリタなんて、チケットが同額で現われる。
地図上でグアムからパラオに南下する等距離を西に移すとマニラが肩を並べているのだ。
マニラからはスタアラ系のタイ航空(TG)でバンコクか、
シンガポール航空(SQ)を使い、シンガポールへと遠回りして日本に戻るらしく、
曜日によって、行きにも帰りにも同額でこのルートが適用される。
このとき、ひらめいてしまったのだ。
冷静に考えるとかなりオバカなことなので、
「ひらめいた」などという鮮烈な言葉を使うのは語弊があるな、きっと。
「頭の上に豆電球が光った」程度に留めておくほうがよいかもしれない。
『パラオ』という国のほかに『フィリピン』という未踏の国を踏めるということ、
久々、『シンガポール』に里帰りした上に「SQにも乗れるぜい」ということで、
豆電球がパカパカと3つ4つは光った気がする。
いずれの空港も24時間以内のトランジット扱いなので、空港使用料はかからないし、
シンガポールなら手元にSIN$を持っているので、両替の手間もない。
マニラでペソが必要だが、英語が通じる国なので、大して困ることはなかろう。
こうして豆電球の数と光はアタマの中でますます増えていった。
フライト3本もこなして目的地に出向く、
というのは到着した時点でかなり衰弱してしまっている可能性が大なので、
このルートは帰りのオマケということにし、
行きはまっすぐグアム乗り継ぎをブッキングした。
続けてコロール、マニラの滞在先をネットでブッキングし、旅の準備はこれで完了だ。
午前の成田空港はヨーロッパ便のフライトが集中しているため、混雑していた。
この時期は航空券価格の安いロー・シーズン、
それを狙い、申し込んだ団体ツアー客で出発ロビーはごった返していた。
時間帯のいいフライトでアジアに飛び、
着いたらすぐ商談が待っているであろうビジネスマンはうんざり顔で、
無闇に大きいデイパックを背負い、右往左往するツアー客を踏み越え、
不慣れな客が扱う迷惑なキャスターバッグを蹴り飛ばし、ゲートに向かっていた。
そんなビジネスマンを露払いに『ユナイテッド・クラブ』のラウンジにたどり着いた。
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