really true paradise @Palau [Palau]
一瞬のシャワーにオドロカされたものの、無人島のランチタイムはのどかに過ぎた。
満腹したツアー客を乗せるとボートは容赦なく、また波を蹴りはじめた。
「乗り物酔い」というものにとんと無縁なので気にも留めなかったが、
ランチを詰め込んだばかりの身には厳しい揺れと激しいスピードだ。
さりとて水面を駆ける風、現れては消える小島、海の青空の青、
別世界とも思える風景がそんなことを忘れさせてくれるのだろう。
不調を唱える客もなく、ボートは小さな島々の間を縫うようにして、
ジェリーフィッシュ・レイクのある島を目指していた。
「クラゲの島に着きました、事務所で渡したパーミットを用意してください。
荷物置く場所がないので、全部ボートに置いてくださいね~」
湖を目指す前にガイドのカンタンな案内が響く。
船着場のすぐ前には小屋があり、そこでは一人一人、パーミット(許可証)をチェックしている。
「この後は少し山道を歩きま~す。
履物はサンダルじゃないほうがいいですよ~。
手軽がいいですから、ライフジャケットは着てしまってくださ~い。
フィン、スノーケルはその背中に刺しま~す」
船を降りてから山道を越え、クラゲの湖に辿りつくようだ。
世界中、どこを旅しても革の『デッキ・シューズ』で出向くので、
山道だろうが砂漠だろうが登山道だろうが砂浜だろうが心配はない。
『TopSider』『Sabago』『HushPappy』などの革デッキを愛用しているのだが、
今回はスノーケリングを予測していたので、
水でツブしてもいい古い『Sebago』のデッキでこの国に来ていた。
そうそう、旅行先に下ろしたての新しいクツで来るのはやめましょうね。
旅先では日常生活の倍以上は歩いてしまうので、もっとも履き慣れた靴でくるのが得策。
履き慣れていない新品シューズはマメができる上に疲れも増しますぜ。
なんなら履き古しのクツで来て、最後に現地で新しいクツを買って、
お店で「この古いの捨てちゃって~」なんて帰っていくのもアリですよん。
なぜ『革のデッキ・シューズ』を重用しているかというと、
まず、足のむくむ機内、あるいは長距離バスなどの乗り物で脱いだり履いたりするがラク。
ソールが薄くフラットなので、慣れないレンタカーでも運転がしやすい。
そして革なのでドレスコードを気にするようなホテルやレストランなどでも格好がつき、
おまけに冬以外は素足で履けるのでソックスを持っていかなくていい、と利点が多いわけ。
長い旅の経験で荷物減らしたい! と考えた挙句です。
予備のクツを持っていくのはかさばりますし、
ビーチサイドからレストラン、ジャケットにまで合うクツ、ってなかなかないんですね。
とまあ、万全のように記してますが、
このデッキ・シューズがこの旅の最後に悲劇に見舞われます、ご記憶のほどを。
用意に手間取るほかの客を無視し、許可証を見せて、ズンズン先に進んだ。
一眼レフのバッグを担いでいたので、ガイドが気を利かせて声をかけてくる。
「カバン、ダイジョウブですか?」
「ああ、湖に入るんだから、岩場とかデッキぐらいはあるでしょ?
そこに置き去りにするからケンチャナヨ~(だいじょうぶ)」
「そのつもりならOKです。行けるなら先に進んでください。
わたしは最後のお客さんと行きますから」
トレッキングに近い険しい山道を進んでいくが、
歩いている人たちがみな水着姿なので、なんとも奇妙。
手作りの石段を踏みしめ、鎖を手繰り寄せて岩を乗り越え進むと、
この辺りには人の手があまり入っていないことが想像できる。
「許可証、値上がりしたんだから、階段ぐらいちゃんと作ってよ~」
「コレでも鎖とか手すりとか、マシになったんですよ~」
誰かの戯言にガイドがそう答えていた。
小山をひと越えする形で、湖にたどり着いた。
湖畔は船着場を兼ねた小さな木製のデッキが設えてある。
「着きましたよ~。もうすぐですよ~」
先頭で到着したので、ゴールが近いことを後方の面々に伝えると安堵の声が返ってきた。
思った以上にワイルドな山道だったので、
ご年配チームは息も絶え絶えで途中で帰るといい出しかねない様子だったのだ。
さあ、憧れていたクラゲと戯れの時間だぜい。
Jellyfish Lake ↓
読み終わったらポチっとして≪旅行部門≫ランキングをチェック!★
コメント 0