entrance to paradise @Palau [Palau]
6月10日、旅は4日目。
朝から陽射しががんばっていて熱い。
約束の8:45、ロビーはすでに熱く暑くなっていたが早々に下りて、
ツアーのピックアップを待っていると、フロントの電話が鳴った。
「ツアー会社ですけど、10分ぐらい遅れます」
スタッフから渡されたコードレス受話器の向こうの声は悪びれもせずそう告げた。
ああ、日本人としての几帳面さが恨めしい。
ツアーのバスはおそらく他のホテルでツアー客を拾うのに手間取っているのだろう。
業界事情がわかる身としては、おとなしく待つだけだ。
「まったく。ねえ、ピックアップ来たら教えてね」
フロントにそう告げ、ダイニングでカップにコーヒーを注ぎ、
エアコンがある自分の部屋に上がった。
朝とはいえ、エアコンがないダイニングやフロントの前にいるのは暑過ぎるのだ。
ピックアップのマイクロバスは予告どおり10分後にやってきた。
ガイドにうながされ、乗り込むとほぼ満員の車内がこちらに気まずい視線を向ける。
その視線に負けないように「コンニチハ」と告げてみるが、
景気よく返事をしてくれたのはガイドだけで、
残りの乗客は生きているのか死んでいるのかわからないような目をして、
こちらのアイサツを無視していた。
車内に欧米系が乗り合わせていなかったので、日本語でアイサツをしたのだが、
「ニイハオ」か「アンニョンハセヨ」のほうがウケはよかったのかもしれない、と
くだらないことを悔い改めていると、ガイドが日本語で車内に説明をはじめた。
見知らぬ同士とはいえ、ツアーで一日を共にするのだから、
アイサツぐらい交わせばいいのに、ナニか損するとでも思っているんだろうか。
こういうとき、日本人の旅行ベタを痛感する。
カップルや夫婦、家族連ればかりのようだから、
ただ単に「オトコ一人で乗り込んできた」ヤツをアヤシんでいただけかもしれないが。
車窓の風景を楽しむまでもなく、クルマはすぐに到着した。
船着場にツアー会社の事務所が併設されているようで、
車内の説明の通り、エアコンが効いた建物の中に進み、受付を済ませる。
「支払いオネガイシマス。
ジェリーフィッシュ・レイク、パーミットはコチラでツクリマス」
カウンターでパラオ・ローカルだろう色黒の男性がたどたどしい日本語で説明してくれる。
「苦情じゃないんだけど、パーミット$100って高いよね。
ツアー代金の$90より高いんだぜ? 政府、ヒドくない?」
他の客にわからないように英語でそうツブやいてみると、
彼は急に笑顔になり、捲くし立てるように話し出した。
「3倍の値上げはヒドいですよ。でも政府の決定。コレ会社、利益ナイです。
でもオキャクサンたち、カワイソ。$100、高いネ~」
環境保護対策、あるいは増えすぎた観光客への対抗策だろうか、
こういったコストでブレーキをかけるのはわからないでもないが、
「持っているところから毟り取りましょうね」というのはどこの政府でも考えることだ。
英語に気を許したのか、彼は立て続けにしゃべる。
あまりの値上げに観光客を失いかねないツアー会社サイドからは陳情を上げているらしい。
受付の書類を記しながら、そんな裏事情が拾えたりした。
「これ、パーミット、できました。
アッチでフィンとゴーグル、借りてくださいネ。出発のとき、呼びますヨ」
たいして待たされることもなく、名を呼ばれ、屋根つきのトレジャー・ボートに乗り込んだ。
両側2席ずつ、7~8列ほどのシートはほぼ埋まっていて、
ピックアップの時よりも人数が増えているようだった。
プラスティック製のシートは開けると中に荷物が入れられるようになっていて、
スノーケリングで上がっても荷物を濡らさずに済む、という造りになっていた。
送迎から同乗していた韓国人のガイドが船のキャプテンとローカル・ガイドの女性を紹介する。
どうやらこの3人が本日の案内役らしい。
ひととおりの説明が終わるのを待っていたツインの船外機がけたたましい音を立てはじめた。
船底が波を叩く音と風を切る音が激しい。
ボートは会話がままならないほどのスピードに達し、気づくと外海を走り出していた。
海はほとんど凪に等しいといってもいい表情で、パラオの海の穏やかさを印象付ける。
それでも海面を叩いて走るボートのノイズは強烈だ。
次第に遠目に小島がポツポツと現れはじめた。
すべての島は波の当たる裾の部分をえぐられていて、
頭デッカチの奇妙なスタイルを保っている。
たぶん石灰質の岩が削られ、硬い部分が島として残ったのであろう。
ベトナム・ハロン湾を思わせる風景が広がったが、
旅先の情景を他の土地に重ねるのはあまりに愚かなので、頭の中でそれを打ち消した。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2009-01-05 (ハロン湾紀行)
15分ほど走ると船は極端にスピードを落とし、惰性で小島の合間を縫って進んだ。
最初の目的地「ミルキーウェイ」が近づいてくる。
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