unexpected paradise @Palau [Palau]
午前中とはいえ、南国の陽気は全開で暑さに容赦がない。
エアコンの効いた部屋でコーヒー片手にくつろいでいるとノックの音が響き、
ドア越しに掃除のオバチャンの声が続いた。
「アンタ、クルマ頼んだ?」
時計を見ると11時、約束通り、レンタカー屋が来てくれたようだ。
先日、事務所で会ったオヤジサンが玄関先でニヤっと笑っていた。
今はビンローを含んでいないようだが、
その口元はなんとなく赤いような気がした。
「おはようございます。あれ? クルマ『ヴィッツ』じゃん?」
予約したクルマは$50の『ジムニー』だったはずだ。
「$30の『ヤリス』が空いたから持ってきたよ」
「え~、ホントに? それはラッキーだよ、ありがとう!」
どうでもいいことだが『ヴィッツ』のヨーロッパ名が『YARIS』(ヤリス)、
『マーチ』も向こうでは『MICRA』(マイクラ)という名で売られている。
「$30ね、キャッシュかしら?」
オヤジサンとのやり取りを気にも留めず、
一緒に来たオンナのコは書類を突き出し、IDの確認とサインを求めてきた。
ひととおりの記載を終え、現金で$30を渡した。
「ガソリンは少ししか入ってないから、気をつけて。
満タン返しじゃないから使う分だけ入れなよ」
「OK、わかった。でも安いクルマ持って来てくれてありがとう」
オヤジサンの説明を受け、そう礼を返すと、彼はニヤリと笑い、親指を立てた。
笑って見えた口の中はやっぱり赤かった。
伴走してきたクルマで去る二人を見送ると、後ろから声をかけられた。
「お! クルマが来たんだね」
体格のいい年配男性が隣に止まっていたバンのドアを開けていた。
「あ、今日から借りたんですよ。
そうだ、クルマで行けるオススメの場所、あったら教えてください。
あ、でもダイビングで周っているならお門違いか」
「いや、ボクはノン・ダイバー、このバンで行ける浜辺で潜っているだけさ。
もっぱらスノーケリングだけだよ。
オススメのランチの場所なんてどうだろうか?」
彼はオレゴンから来ているアメリカ人で、
すでにリタイアしていて、パラオに年2~3回はやってくる『パラオ・リピーター』。
ここを定宿にし、バンで島を巡っている『バジェット・トラベラー』だ。
パラオに男一人旅、なんて自分だけかと思ったら、いるんですねえ。
ハンドルを握り、彼に教えてもらった食堂へ向かう。
その店は大通りに出る手前にあり、拍子抜けするぐらい宿からすぐだった。
なんのことはない、到着直後の夜に歩いたガソリンスタンドの手前じゃないか、
クルマ、いらねえぞ。
『PINOY』と書かれた店の扉を押し開け、中に進む。
照明が少ないためか、店内は薄暗く、ひっそりとしている。
奥のカウンターには大きなバットに入った料理が7~8品並んでいて、
傍らには大きな魚のフライが置かれていた。
ブッフェ・スタイルのようにみえもしたが、
地元の人たちはカウンターに取り付き、アレコレ指差し、注文している。
少しばかり気おくれして眺めていると、
なんのことはないアジアによくあるワン・プレートのスタイルだ。
好きなオカズを頼んで、ご飯を盛ったプレートにかけてもらう、
いわゆる「ブッカケ飯」方式だ。
なかでも魚のフライに人気が集まっているようで、次々になくなっていく。
奥のキッチンからはできたてのオカズが次々、運ばれくる。
ランチタイムには少し早い時間、準備しながら客をさばいているのだろう。
湯気を立てているオカズからおいしそうなニオイが漂ってくる。
空いていてひっそりしているな、と思った店内だったが、
次から次に客がきては手際よく注文し、パッキングしてもらい、去っていく。
店内で食べるよりも持ち帰る客が多いせいで店内が空いているのだった。
「持ってくの?」
「いや、ここで食べます」
待っていても客の流れは切れそうにもなく、
勇気を持って、忙しそうに働くオカアサンに声をかけた。
ストロガノフのような牛肉煮込み+ライスで$3,5。
オススメ食堂、さあ、味はどうかな?
PINOY ↓
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