paradise in paradise @Palau [Palau]
ボートはふたたびアイランド・ホッピングへ。
キャプテンはいつもの手馴れた感じで、
今度は島に寄せることなく、海上の浅くなったエリアで船を停めた。
『パラダイス・コーナー』と呼ばれるこのエリアは、
沖のど真ん中に珊瑚礁が盛り上がっていて、
そこだけ1~3mほどの深さの浅瀬が広がっている。
この小さな環礁に鮮やかな色をしたサカナが集まっているらしい。
船上から眺める景色は写真を撮る気にもならないただの海面だ。
「では、ここでしばらく『スノーケリング・タイム』です。
『クマノミ』の巣が見たい方はわたしについて泳いできてくださ~い」
ガイドに促され、身支度を整えた客から次々と海へ身を投じる。
水の中、ゴーグル越しの環礁は傍目とは異なり、表情豊かな海の世界が広がっていた。
珊瑚に覆われた海底も見え、場所によっては浮かんでいても手が届くような深さなので、
フローティング・ジャケットはジャマでしかなく、ボートに戻した。
6月のパラオは雨季にあたるが、海はベタ凪が続き、
ダイビングやスノーケリングには適した季節らしい。
プールのように波の立たない海面を目の当たりにして、
キャプテンに問いかけたら、そんな情報を教えてくれた。
そんなことも調べずにやって来た無頓着な旅行者は誰だよ、いったい。
「サメがいた~」「クマノミ~」「バラクーダーきた~」と歓喜の声が方々から上がる。
年配客だろうが、夫婦モノだろうが、こうなると夏休みの子供とおんなじだ。
小一時間のスノーケリングでツアーはピークを迎えていた。
楽しげな声を海面越しにぼんやり聞きながら、
『ジェリーフィッシュ』の感動にシビれたアタマがようやく現実を取り戻してきていた。
すでにメインディッシュのクラゲに胸いっぱい、腹いっぱいで、
『パラダイス・コーナー』は食傷気味のデザートにも思えていた。
環礁をひと回り泳いで、ボートに上がった。
「あれ? もういいんですか? まだ時間ありますよ~」
客を案内し終えた韓国人ガイドがボートの上から心配そうにいう。
「うん。メインは『ジェリーフィッシュ』だったからね、ここはオマケ、もう満足」
ところで、どう? 半年間暮らしてみて、パラオは?
やることなくて死なない?」
配られたペットボトルのお茶で塩辛い口を濯ぎながら問いかけた。
「正解です。仕事はすご~くいいんですが、オフがヒマで死にそうです」
「シンガポールの現地旅行会社にいたんだけど、あの国でさえヒマだったもん。
島は退屈だよね。『楽園』というのは住む人には酷でもあるよね」
「はい、そろそろソウルに帰りたくなってきました。
でも韓国は経済状況がよくないので就職があるかどうか、それがびみょ~です」
「だろうね、いろいろ大変だ~。Fighting!(韓国では『がんばれ』の意)」
彼は半年ほど前にパラオにやって来て、ガイドの仕事をはじめたという。
ツアー会社のスタッフにしろ、ガイドにしろ、この島では韓国系の人が多いようだ。
彼の役割は『通訳アテンド』、同行のパラオ人のオンナのコが『ローカル・ガイド』、
彼女がライセンスを持っているのだろう。
世界各国。観光客が訪れるスポットでは、
『有資格のローカル・ガイド』+『無資格の通訳ガイド』というペアのアテンドが多い。
これは観光業において、外国人が現地の人の仕事を奪ってしまわないための方策だ。
世界的観光立国のイタリアなど、
『添乗員』が自分のツアー・グループで教会の前で解説しているだけで逮捕&罰金もの、
『観光案内』の資格がない『添乗員』は案内することが違法行為になる。
これ実話で、罰金取られた添乗員、知ってます。
そのため、国からの資格を持っている『ローカル・ガイド』が随員するわけだが、
訪れた外国人グループのすべての言語に対応してないので『通訳』が必要となる。
結果、『通訳担当の日本人』が案内を果たすことになり、
『ローカル・ガイド』はただグループにくっついて周るだけの人、となってしまうのですね。
ツアーのお客さんからは「何しているの? あの一緒に来る現地の人?」、
なんて無神経な質問が沸いて出たりします。
ヨーロッパなどは日本語ができる現地の人は少ないので、
『通訳ガイド』(大抵は現地日本人)が声を張り、観光案内し、
そこにライセンスを持った『ローカル・ガイド』(現地人)がくっついて周り、
時間や行程を管理する日本からきた『添乗員』(日本人)がいる、という図式になるわけ。
と、これは大都市でのオハナシ。
小さな田舎町などでは『イングリッシュ・ガイド』のみなので、
添乗員が『通訳』までさせられる、なんてことが多々あります。
旅程管理業務以外に通訳業務までさせられるわけですから、
添乗員にも『通訳』分の日当払えよ、って裏バナシもありますが。
まあ、それはさておき、1グループで3人もチャーターするんだから、
『観光付ツアー』や『添乗員付ツアー』が割高になるわけ、わかるでしょ。
スノーケリングで泳ぎ疲れた客を積み込んだボートは虹の見送りを受け、帰り道を辿った。
Paradise Corner ↓
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2013-07-17 23:58
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