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strange paradise @Palau [Palau]

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少しばかり拍子抜けした『首都』をあとにまたクルマを走らせた。

首都の中心であろう場所には白亜のドームを冠した建物が鎮座していたが、
その近辺には食堂や店もなく、周囲に濃い緑だけが広がるだけだった。
緑のジャングルの中に白い建物だけが浮かぶ、というフシギな首都空間だった。

観光がオフ・シーズンの6月、あるいは政治もオフなのかもしれない。



10分ほど走ると、端正な橋が架かるビーチに出くわした。
脇にはバイ(パラオ式の東屋)があり、
波打ち際を駆け回る子供をその日陰から家族が遠目に眺めている。
その手前には小さな小屋があった。

この島に来て初めての売店だ。

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「『ミルク・コーヒー』あります?」

冷蔵庫の横に貼られたメニューに手書きで『ミルク・コーヒー』と書かれていた。
こちらではあまりそういう表しかたをしないので、
キンキンに冷えた『アイス・カフェ・オ・レ』を期待して、オバチャンに聞いてみた。

「ないわ」

「じゃあ、その隣の『カプチーノ』は?」

「ないわ、『コーヒー』の類はないわ」

メニューに書いてあるものを読み上げるように伝えただけなのだが、
オバチャンはつたない英語で「ない」を重ねた。

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「『コーヒー』ないのか。なら『レモンティ』でいいや」

「ないわ」

おいおい。

「じゃあ、なにがあるの?」

「『ダイエット・ペプシ』『クランベリー・ジュース』、それと『ビール』が山ほどよ」

背の高いガラスケースの冷蔵庫の扉を開けて見せてくれた。
中の棚の半分以上をビールが占めていた。

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「クルマじゃ、ビールは飲めないよ」

「知ってるわ、クルマで来たの見ていたから。
 でもコーヒーは切れちゃって、まだ入荷してないのよ」

近隣住民がいるわけでもないので、
ビーチに人が来るときぐらいなのだろう、商売になるのは。

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『ビールしか売ってない売店』というのがおかしくて声を上げて笑ってしまった。
つられたのかオバチャンも笑っている。
「メニューはなんのためなんだ』と思ったが口には出さないでおいた。

「じゃあ、ください。
 『ダイエット・コーク』はないの?」

こうなるとオバチャンの定番コールが聞きたくなっていて、
冗談半分の質問をぶつけていた。

「ないわ」

期待通りのご回答。

客が来ないせいか、受け取った『ダイエット・ペプシ』の缶はキンキンに冷えていた。

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さらに北に上がり、小さな村を訪れた。

このあたりはコロールの島と異なり、白砂のビーチが広がっている。
ここでもやはりひと気がない。
真昼間の熱い時間だから人がいないのか、
あるいはコロールに働きに出ているのかはわからない。
なにしろこの島には人がいないようだ。

自分だけポツンと置かれたような時間が続いた。





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