disappointment in paradise @Palau [Palau]
あれだけ屋根を叩いていたスコールは蛇口を捻ったかのように止まった。
昨夜歩いた道を同じように辿り、メイン・ストリートを目指す。
まずは旅の足になる自転車を借りに行くのだ。
レンタカーを借りるつもりでいたのだが、
ひょんなことからレンタルの自転車屋がある、という情報を見つけたので、
旅の前半は自転車で、必要があればレンタカーで、という算段を立てていた。
クルマの機動力は魅力だが、いい画になりそうな場所を見つけた際、
急に止まる、という荒業が効かない上に停める場所にも気遣いが必要なところが難点だ。
その点、自転車やバイクだとかなり自由と融通が利く。
コロールのド真ん中に『WCTC』というショッピング・モールがあり、
その真向かいにショップがある、ということなので、そこを目指し、歩いた。
WCTCは『Western Caroline [Islands] Trading Company』の略で、
1階に大型スーパーを抱える街のランドマーク。
コロールの背骨でもある大きな通りの名は「Main」、
冗談のようだがその名の通り「メイン・ストリート」だ。
昨夜チェックイン直後に歩いたメイン・ストリートはすでに暗く、
どことなく寂しい感じが漂っていた。
21時だというのに道を歩く人は少なく、
ヘッドライトを灯したクルマだけが行き交っていた。
薄ら寂しさに腰が引けたが、冷静に観察すると
ガソリン・スタンドに併設されたショップは頻繁に人が出入りしていて、
となりの体育館ではバスケットボール・プレーヤーの声が響いていた。
暗さと寂しさの印象は慣れない土地での心持ちのせいかもしれなかったが、
街灯や明るい看板がないことがどうやらそれを割り増しにしていたようだ。
ガソリン・スタンドのショップのなかをひと通りながめ、
メイン・ストリートを西側から東に向かって歩いた。
空港への道を戻る形だ。
ポツンポツンと距離を置いて点在し、明るい光を放っているレストランには、
クルマから店へ、店からクルマへと人の動きがあった。
薄明かりを漏らしている売店はクルマが横付けしては去っていく光景を繰り返していた。
それでも「首都の目抜き通り」らしさは見出せず、
長距離バスからアジアの片隅の地方都市にでも降り立ったような気分に浸っていた。
地図もない徒手空拳で歩いてきたので、
果たしてここがメイン・ストリートなのか、疑ったほうがいいのかもしれない。
もっとも宿が出発地点で大通りはひとつしかないので、疑う余地はないのだが。
こじんまりした売店が繰り返し現れるが、どこも似たような造りでおもしろ味はない。
ひと気のない店はチラリと覗き込む程度で、
2~3人の客を飲み込んでいた売店に足を進めた。
入口には「OBENTO」や「TET」「KEBUI」という文字が貼られている。
店内はスナックやカンヅメ、飲み物を中心とした品揃えで気をひくようなものはない。
入口の文字が気にはなっていたが買う気もないのに無神経に尋ねる勇気はなかった。
2Lのミネラル・ウォーターと朝食用にサンドウィッチを買い、宿に戻った。
Main通りは昨夜同様、静けさを保っていた。
昼間ということもあって、少しは人の行き来があったが、
見渡す風景はやはり「首都の目抜き通り」にしてはうらぶれていた。
15分ほどでWCTCに到着。
大きなスーパーがあるせいか、クルマの出入りや人の行き来が多い。
WCTCを後回しにして、真向かいのショップに向かう。
入口のドアは閉まっていた。
ランチタイムあるいはシエスタか、と思い、店先から覗き込むと小さな張り紙があった。
「6月6~26日まで休業します」
おいおい。
気を失いかけたが、思い留まり隣の店に声をかけた。
「おとなり、休みなんですか?
「なんか昨日、休暇で日本に帰る、っていってたわよ」
おいおい。
入れ違いで日本に行かなくてもいいんじゃないの。
自転車を駆って写真を撮る、という軽やかなアイデアは容易く水泡に帰した。
WCTC ShoppingMall ↓
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