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第二十三夜 Power Outage @Istanbul [Turkey]

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―DAY23― 8月27日(帰国まで3日)

今朝もしっかり晴れて、しっかり蒸し暑い、ヨーロッパの東端でも夏は全開だ。

夜はエアコンなしでも快適な風が抜けるというのに、陽が出ると日本の夏と変わらない蒸し暑さがまとわりついてくる。
二段ベッドの下の段から起き出し、シャワーで蒸し暑さを洗い流す、今朝はキチンとお湯が出た。

昨夜は停電した『イスティクラル通り』をうろつき、まずは両替。
US$30で65トルコリラほどが手元にやって来た、これが宿代を含めた出発までの残り時間の資金だ。

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懐に余裕ができたので非常用電源で営業していたカフェテリア・スタイルの食堂に入り、夕食を済ませることに。
店内には安いセット・メニューの案内がデカデカと貼られていたが、
疲れたカラダが汁気を欲していたのか、気づけば単品でメインとスープをオーダーしていた。
レジで素っ気なく「17トルコリラ」と言われ、予想以上に割り高になっていたがトレーを差し出したレジ前では遅すぎた。
両替したばかりの決して多くはないトルコリラをごっそり奪われた気になった。

円高だった2014年夏、ざっくりだが1トルコリラは50円弱、換算すれば800円ほどの金額だが、
出発までの手持ちの金額が限られていることもあり、
10トルコリラしない定食メニューを頼まなかったことを悔いながらスープをすすった。
女々しい気分浸っても支払ったお金は戻ってこないのだけどね。

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食後にふたたび『イスティクラル通り』を歩くと各所に装甲車にも似たイカツイ警察車両が出張っており、
小銃片手の警察官が警戒して通りを行き来していた。
この時は政権に反対するデモなどが多く、停電が起きたことで警戒態勢を敷いていたのだろう。

明かりの消えたブランド・ショップでは店員も手持ち無沙汰、エアコンの切れた店内から涼しい店先にイスを持ち出し、
スマホ片手にやりようなく停電の回復を待っているだけだ、もっとも仕事していてもスマホはいじっているだろうが。
電気を失ったトラムも通りを往来できないため、『イスティクラル通り』は突然の歩行者天国に。
エアコンを失った室内から押し出され、夕涼みよろしく人が溢れ、通りはちょっとした祭りのような賑やかさだ。

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明かりの消えたフシギな『イスティクラル通り』の空間から宿に戻ると、やはりこちらのエリアでも電気が回復しておらず、
街歩きから戻ってきた客の多くは裏庭にある外のテラスで寛ぎ、おしゃべりに花を咲かせていた。

「コーヒー、よかったら飲みなよ」

そう言ってくれたのはちょっと強面のホステルのオーナーだった。

「キミかな? 今日来た日本人は?」

「一泊ですが、よろしくお願いします」

「キミの予約記録はまだ見れないありさまだけどね、ガスは使えるからコーヒーは飲めるよ」

「いただきます」

カップに熱いコーヒーを注ぎ、テラスのソファーに腰かけた。

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「停電なんですね」

「ああ、めずらしいけどね」

「ソフィアからツイてなかったから、不幸を運んできちゃったかな?」

「そんなことはないよ、一昨日は断水、昨日は近所で火事、で今日は停電。このところ毎日なにかあってニギヤカなのさ」

デンマーク人だという宿泊客の彼がそういう。

「あはは、なら責任は感じなくて済むね」

コーヒー片手に他愛のないハナシを続けていると23時過ぎに突然、明かりが点った。

「お、直ったね。さあ、これでシャワーのお湯も出るし、キッチンのヒーターも使えるぞ」

「夏だから水でも問題ないけどね。それなら早速、使わせてもらおうかな。ここ数日、熱いシャワーを使ってないので」

「寝台列車」「ソフィアの街歩き」「バス乗り過ごし」とベオグラードからここまでの行程を話すと、みなの笑いを誘った。

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部屋に戻ると向かいのベッドでカップルが言い合いをしている。

「あ、ごめん、わたしたちうるさかった?」

「いや、大丈夫だよ、まだ23時だし、気にしないで」

「日本の人? ぼくらは『ウクレイン』からだ」

「え? あの? 今、国情が大変だよね??」

「ああ、よく知っているね。でも僕らはあまり関係ない所から来ているから」

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「日本でもニュースになっていて驚いているよ」

「分離とか割譲とか、あまりいいイメージではないわよね」

「実際、その国にいるぼくらがあまりピンと来てないんだ。
 それよりもぼくらの周りではニホンの人気がものすごいよ、えっと『ドラゴンなんとか』とか『わんぴーす』とか」

「マンガ? 『ドラゴン・ボール』はヨーロッパで人気あるよね、本屋に並んでいるのを見て、驚いたよ。
 やっぱり書店にマンガ、並んでいる? それよりもキレイな国なんでしょ? いつか行ってみたい国なんだ」

「ぜひ来てほしいわ、プーチンがいようがいまいが」

冗談を交じりで盛り上がり、ウクライナからやって来ていたカップルとメールアドレスを交換し、話しを終えた

「ウクレイン」と言われても、一瞬、戸惑いが走る。
国名や地名が日本語化してしまっているのでそれが「ウクライナ」を指すことにちょっと間があくのだ。
「ベニス」と「ベネティア」のように英語読みと現地語の読みが混在し、さらに日本語読みまで介在するので、
国名や地名はもはや推理ゲームの域、「ドイチュ」「グリーク」「サイプロス」・・・あなたは一瞬でヒラメくだろうか。

そしてこの推理ゲームがこの旅の終わりで思わぬドラマを呼び込むことになるとは。

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寝起きのシャワーを終え、買っておいたパンを片手に裏庭のテラスに降りた。

熱いコーヒーをもらい、軽めの朝食、午前中だが8月の陽光はすでに張り切っている、それでも木陰だと乾いた風が心地いい。
オーナーに宿代の27トルコリラを支払った、ドミトリー一泊で1,300円ほど、やっぱり昨日の晩飯は高かったな。

「すみません、両替を待ってもらっちゃって。助かりました、これ宿代です」

「ありがとう。いや、いいんだ、こちらも停電でなにもできなかったからね。それよりも久々のベッドはよく寝れた?」

「エアコンなしでも夜は快適ですね。アンタルヤとか地中海側じゃなければ蒸し暑くないんですね」

「ツアー・ガイドで何度も来ているだけあってよく知っているね。トルコの地中海側の夏は耐えられたもんじゃないよ。
 で、今日はどうするんだい?」

「フライトに合わせ22時ごろに空港に行くつもりです。
 それでバゲージを預かってほしいのと今夜、空港に行くまでの時間、このテラスに居てもいいですか?」

「かまわないよ、昼間は暑いだろうから帰ってきたらシャワーを使ってから空港に向かえばいい」

「うわ! ありがとうございます。『レイト・チェックアウト』みたいでうれしいな」

「そんな上等なもんじゃないよ。ただのホステルだからね、快適に使ってくれればいいのさ」

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長い白髪を後ろでまとめ、ヒッピーがそのまま年を重ねたような出で立ちのオーナーは他を寄せつけないような印象だが、
ヒザを交えて話し込むと地元の情報に詳しいのはモチロン、広い知識で話題が豊富でテラスの会話を和ませてくれた。
ぶっきらぼうだが言葉を交わすと気のいい旅の先輩、宿泊客はみな彼を頼りにしていた。

不必要な荷物をすべて預け、ポケットに市内地図を押し込み、一眼レフの入ったカメラバッグを下げ、宿を後にした。
『イスティクラル通り』を乗り越え、丘を下って行けば『マルマラ海』にぶち当たるはずだ。

まずは『ボスポラス海峡』越しにアジアでも眺めるとするか。


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