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第六夜 Sunday Afternoon @Zader [Croatia]

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―DAY6― 8月10日

昨夜は日付が変わってからも「夜のザダール」を堪能していた。

特にナニをしたわけではないが、夜の城壁内の写真を撮りたくて狭い路地、暗い通りをくまなく歩き続けた。
古い城門や教会を眺め、路上に置かれたテーブルのレストラン客と会話を交わしながら、写真の枚数を重ねた。
ここでは日本人自体がめずらしいのか、擦れ違うごとに声をかけられるような有り様だ。

なにげなく暗い隘路に入り込むと向う側から来た男に突然、声をかけられた。

「よう」

相手はアイサツしながらこちらに寄って来る素振りを見せている。
ただの酔っ払いなのか、あるいは葉っぱでも吸ってトンでいるのか、暗いのでそれがわからない。
あるいは単に日本人に興味を持って声をかけてきただけかもしれなかったが、
暗闇では相手の表情もわからなかった。

「ナニしているの、こんなところで~」

「ジャポーン」とか「コニチワ」とか、こちらを日本人と知っての声のかけ方とは明らかに違っていた。
薄暗闇で181cmのこちらよりもデカイオトコということだけがわかった。

(しまった、調子に乗って奥まで入り込みすぎたな)

人ふたりが擦れ違うぐらいの道幅に遠めの電球の灯りしかないような裏路地。
後ろに逃げるか、相手にぶつかって向うに逃げるか、
次に起こる「ヤバイ」ことに対して、予想を打ち立てていた。

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「ボク、ボク、こんばんは~ヨ」

「え~~、マスターだったの?」

握手の手を差し出してきていた相手は、宿のセルビア人ダンナだった。

「そうよ~、ボクだよ。ナニしているの、こんな暗いところで」

「写真撮って歩いていたんだけど、ギャングかと思ったから逃げようかと思ったんだよ」

「あ、だから身構えたんだね。ザダールは安全だから心配ないけど気をつけてね」

いくら城壁内の旧市街が狭いからといって、暗い路地裏で知り合いに会うかね、あー、ビックリした。
酷く高鳴る鼓動を感じながら、その後は人の行き交う通りだけに足を踏み入れることにした。
といいつつ、深夜2時頃、旧市街から宿へ向けて住宅街を30分かけて歩いて帰ったバカがいるけど。

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買っておいたパンをキッチンで調理し、カンタンな朝食を摂った。
テラスに出るとアドリア海を照らす陽光が眩しい。
ここに来てまだ雲を見てない、というほどザダールは快晴で覆われている。

昨日の夕方、バス・ターミナルで両替した際、プリトゥヴィツェ湖行きのバスの状況も尋ねていた。
出てきた答えは「明日はどの時間も全便満席」というもので、
もろ手を挙げて今日のプリトゥヴィツェはあきらめざるを得なかった。
日曜ということでバスも混んでいるのだろう、それに加え行楽客も向かうであろうから、
この日曜を避けることには大きな意味があるように思えた。

ここザダールが気に入っているということもあって、今日発てないことを悔やむ気にはならなかった。

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もう一泊することを告げ、ドミトリー2泊分319クーナ(≒6200円)の代金を支払うと、
ちょうどそこに昨日のフランス・ペアが降りてきた。
ちなみにこの街の宿泊には「観光税」が付帯するらしい、それもキチンとスタッフに告げられた。

「これから旧市街に行くけど、乗っていく?」

「乗っていく、乗っていく。あ、できるなら旧市街じゃなくてバス・ターミナルで降ろしてもらえる?」

ということで彼女たちのクルマに乗せてもらい、中間地点のバス・ターミナルで降ろしてもらった。

「メルシィ・ボクゥ、サヴァ!(ありがとう。じゃあね)」

「Ca va bien! また宿で!」

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彼女たちのクルマを見送り、またまた小さなチケット売り場へ向かう。
ザダール~プリトゥヴィツェの往復チケットが165クーナと大きく割安だったが、
先行きを考え、105クーナの片道チケットを頼んだ。
「どの時間も空いているわよ」昨日と違い、席はごっそり空いているらしい。
あっさりというぐらいカンタンに明日、月曜8:30のバス・チケットを買うことができた。

ひとまず明朝、この街を発つことが決まった。

歩いて15分の旧市街に向かうとほとんどの店は閉まっていた。
カトリックの影響が強い南ヨーロッパの例に漏れず、ここクロアチアも日曜は「休息日」、
CAFEと食堂がチラホラ開いている程度で観光客目当てのローマ兵も手持ち無沙汰の様子。

昨夜の喧騒もどこへやら、ひと気はなく、石の路面がひときわ白く眩しい日差しを跳ね返している。

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教会だけがチラホラと人を吸い込んでいく、日曜日なのでミサが行われているのだろう。
午前中から熱い日差しの下を歩き、たっぷりと汗ばんでいたので、
日差しから逃げるようにそのあとに続き、礼拝堂の後ろのほうで木のベンチに腰掛け、静かな時間を過ごした。

ミサを終え、早めのランチにピッツェリアでホットドッグのセットを購入し、広場に腰かけ、頬張った。
飲み物とフレンチフライがついて25クーナ。(この時のレートは1クーナ≒20円)
ガラスケースで切り売りしているピザが15クーナなのでちょっと観光地プライスかな。
街なかで500mlの水を買うと7クーナ、スーパーで1,5Lの水が4クーナ、
便利なものは高く、日用品は安いヨーロッパらしい極端な値付けだ。

昨日、スーパーで買い込んだ自分の足のサイズより大きいステーキが500円もしない。
袋詰めのライ麦パンと日本で見かけないようなチーズを買い、これが2回分の夕食になる。
宿のキッチンでステーキに齧りついていたら
「肉、そんなに安いの?おれもそうしようかな」と食いついてきたヤツがいたっけ。
キッチン付きの宿を選ぶとバジェット・トラベリングでも充実の食生活が送れるのだ。

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閑散とした城壁内に飽き、日が傾きかけた午後はビーチで寛ぐかと、ホステルに戻った。

「やあ!あれ?日本の人?ああ、でもあまり話ししている時間がないや。忘れ物、するなよ!」

学生風の3人組男性が出発するらしく、互いの荷物をチェックしている。

「そうです、日本人デスヨ。これから出るの?時間なくて残念だね」

「これから空港。帰るんだ、ベルギーに。今日で『バカンス』も終了さ」

学生に見えた彼らはSEらしく、9日間の夏休みでここに居続けたらしい。

「ああ、今日、日曜だもんね。明日はオフィス?」

「そう、夢の時間はオシマイ。でもアドリア海を満喫したから仕事に戻るよ」

「100%オーバー『充電』したなら仕事もダイジョウブだよ! Bon Voyage!」

「いい旅を」という意味のフランス語で彼らを送り出す。
チェックアウトの手続きをしたセルビア人ダンナとタクシーが行くのを一緒に見送った。

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「昨日は驚かせたね」

彼らが去り、静けさが戻ったテラスでセルビア人のダンナが言う。

「あはは、あんなところで会うとはね。ホント、驚いた。
 あ、そうだ、これから行くセルビアの情報を教えてください」

「お安い御用さ、ベオグラードはキレイな街だけど、どうせなら地方がいいよ。
 みなホントに親切なんだ。
 僕はベオグラードのとなり街出身なんだけど、妻とセルビアを旅したとき、
 本当に親切な人ばかりに会ってね・・・」

それから地図を広げ、コーヒー片手にアレコレ教えてもらった、旅先の情報、現地の人に勝るものはない。


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ハル

delfin さんのクロアチア編を読んで、夏の憂さを晴らしています(苦笑
7月頭のソウルはアシアナ減便のせいで、日程が合わず中止、
これまでにないくらいいいホテルといい時間帯といい価格だったのに。
それで8月は同僚のおかげ?で、ちょっと遠出の仕事。
で、甲子園とクロアチアの夏でした(すでに過去形 ┐(´д`)┌

by ハル (2015-08-21 17:39) 

delfin

>ハルさん

憂さ晴らしになっているなら、うれしいです!

こちらも今年は「毎月ソウル」にちょっと飽きて、
家でおとなしくしております。
おかげでようやく1年前のブログを更新しているわけですが・・・。

30日間ある旅路はいつUPしきるのでしょう(笑
見捨てずにお付き合いのほどを・・・。
by delfin (2015-08-22 01:34) 

はらぼー

旅ならではの偶然の連続が、
一年前とはとても思えない程に、新鮮に伝わってきます。
ちょっとご無沙汰気味になっておりましたが、
こちらも少しずつ眺めさせていただきます(^^)
by はらぼー (2015-08-22 09:00) 

delfin

>はらぼーさん

いつもコメントありがとうございます!

旅先の臨場感が伝わるとうれしいのですが。
がんばって執筆していきます!
by delfin (2015-08-26 22:44) 

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