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Kinabalu @Kota Kinabalu [Malaysia (Borneo)]

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4月4日 -Day5-

朝からおかまいなしに蒸し暑かった。

ブルネイで会ったスコールはこちらまで足を伸ばしていないようだった。
7時過ぎだというのに屋根の照り返しはきつく、すでに部屋は蒸し暑くなっていた。
スイッチを入れ、エアコンに部屋の蒸し暑さを掻き消してもらう。
目覚めついでにシャワーで汗を流し、朝食とコーヒーを摂ろうと2階のリビングへの階段を降りた。

「おお、早晨(ジョーサン・広東語)。早いね」

「お? 早晨、老板(ラオパン・社長のこと)、おはようございます。
 早くないでしょ、みな、降りてきてるじゃん」

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「彼らはスノーケル・ツアーやトレッキング・ツアーに行くからね。
 あんたはチェックアウトだけだろ」

「そうね、夜の便で帰国です」

「出発までどうするんだい? 
 時間あるだろうから空港に行くまでバゲージ置いといてかまわないぜ」

宿のオーナーは広東語訛りの英語で早口にまくし立てる。

「チェックアウトは12時でしょ? それまでにはバゲージ降ろしますよ」

「まあ、忙しくないから1時間程度の誤差は気にしなくていいよ。
 アンタ、いろいろしゃべってくるね、日本人だけど広東語がわかるの?」

「いや、広東語はわからないです、単語だけ。
 ただシンガポールで暮らしていたから、英語はその訛りですね」

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「昨日はどこ行ってたの? バゲージ置いてあったから」

「一泊旅行でブルネイに行ってみました」

「ブルネイ? なにしに? なにもないだろ。金塊でも買ってきたのかい?」

「あはは、ナゲット(金塊)か、そのお土産ならほしいけどね。
 ホントなにもなくて、ただ船で5時間ぐらいかけて行って、5時間ぐらいで帰って来ただけですよ」

「それなら正解だ、バスなら8時間はかかるよ、バカみたいな時間だろ?」

朝からオーナーの口調は元気で陽気だ、どうやら彼は香港系の移民らしい。
おしゃべりな彼に引っ張られて、朝からこちらもおしゃべりになってしまっていた。
もっともひとりでトーストを頬張っても冴えないだけなので、
朝食のテーブルを賑わしてくれる彼のおしゃべりはこちらにはありがたかった。

ヨーロピアンのの宿泊客が2組ほどいたが、おしゃべりもせず、
コーヒーでトーストを流し込んでいたり、ミネラル・ウォーターをボトルに詰めていたり、
出発前の準備で忙しそうにしていた。

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キッチンの窓格子からは時計台が見える。

「そこから空港バス、出るんですよね?」

昨夜調べたら、この時計台の前から空港へのシャトルバスが出ることがわかった。
宿のすぐ裏手なので、荷物を持ってうろつかないで済むことがなんともラッキーだった。
そのことを宿のオーナーに確認してみる。

「ああ、最近、発着所がそこに移って来たんだ。$5で空港まで行けるよ。
 時間調べておいたほうがいいよ、バスは一時間おきだから」

「ありがと、あとでチェックしておきます」

「出発まで持て余すようだったら、バゲージ受け取りがてらここで時間ツブしていてもいいよ」

「わ、ありがと、それはうれしい」

チェックアウトするというのに老板は親切な言葉を投げかけてくれた。
その横を大きなザックを背負った宿泊客が通り過ぎる。

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「彼ら、キナバル登山組だね。そういえばアンタ、日本人だろ?
 フジサン登ったことあるかい?」

「いや、ないですよ。それに最近は外国人観光客だらけですよ、フジサンは」

「じゃあ、今度はキナバル山に登りに来なよ、こっちは4,000m超えるから」

ビーチリゾートでもあるこの街だが、その背には4,000mを超える「キナバル山」を抱える。
海に潜り、高山に登れるめずらしいリゾート地なのだ、
「Kinabaru(キナバル)」はマレー語で「Kina」は中国、「Balu」は未亡人を意味する。
キナバル山付近に中国の王子とその未亡人の伝説が眠ることに由来するらしい。
ちなみに「Kota」は街の意味だ。

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「なるほど、フジサンは3,300ちょっとですからね、比べると大したことないですね。
 ところで老板はキナバル、登ったことあるんですか?」

「ないよ。4,000mに登るなんてクレイジーだぜ」

「あはは、たしかにクレイジーかもね」

朝のキッチン、コーヒー飲みながらのんきな時間が過ぎていった。


Atkinson Clock Tower


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