Trash Talking @Minneapolis [Minneapolis (U.S.)]
10月26日、金曜。
目覚めて窓の外を眺めると、白いものがちらついていた。
背景の空はどんよりしていて、さながら日本の冬の空の色のようだ。
昨日のゲームは地元バイキングスの負け試合。
第4クォーターまでタッチダウンを取れない不甲斐なさで、
ドーム内に響き渡るはずの声援は強烈なブーイングに摩り替わっていた。
酷い戦いぶりを見切ったファンは第3クォーター半ばには足早に帰り道を選んでいた。
ホームゲームに響くファンの声援はプレイヤーの背中を後押しするが、
つまらないフットボールをすれば、失望の声が槍のようにフィールドを襲い、
気の早いファンは背を向け、家路を急ぐのだ。
第4クォーター、RBピーターソンのタッチダウン・ランが唯一、ファンが気を吐いた瞬間、
ドームに響き渡るはずの『スコール・バイキングス』の大合唱も力ないものだった気がする。
試合後、フィールドとロッカー・ルームの取材を終え、ドームの外に出ると23時を回っていた。
空港からホテルへのシャトル・バンはすでに終わってしまっている時間だ。
ライトレールは動いていたので、ひとまず空港まで向かうことにした。
ここで来るかわからないタクシーを待つより、
台数もあり、距離も短い空港からなら料金も節約できるか、と見当をつけていた。
ライトレールの駅には数人のファンが列車を待っていた。
「あなた、ナニ人?」
「日本人だよ」
待合のベンチで試合で飲み過ぎたのか、酔った女性が話しかけてきた。
「へえ、日本から?」
横から女性のツレらしい年配の男性が割り込んできた。
「ええ、日本のフットボール雑誌の取材です。今日の試合、どうでしたか?」
「ああ、バイキングスは成長途中、だからガマンが続くね。
そんなつまんない試合のこともよりもツインズ(MLB)だよ」
「ツインズ?」
「ああ、バカな高い買い物をしたもんさ、日本人選手の、アレ、なんていったっけ?」
「ニシオカ」
「そう、それ! バイキングスはああいうバカげた買い物はしてないから、
まだ応援しがいがあるかな。ニシなんとか、アレは酷い買い物だった」
「日本じゃ、いい選手だったんですけどね」
地元を歩いているとこういうハナシが拾えておもしろい。
アメリカではプロ・スポーツ観戦は生活にものすごく近いところにある。
野球なら安い外野席は$5前後、仕事帰りにBARにでも行く感じで観に行くことができるし、
チケットが取りづらいNFLですら、カップルでクラビングにでも出向く感じで、
ビールやカクテルを飲みながらフットボール・ゲームを楽しんでいる。
モチロン特別なゲームもあるが、レギュラー・シーズン・ゲーム自体はイベント感が薄いのだ。
スポーツ・ファンが多くを占めるわけではないが、
誰もが楽しむる位置に手軽に観に行けるスポーツがあることは確かで、
明らかに日本のスポーツ環境とは意を異にしている。
買い置きのドーナツで軽めの朝食を摂り、コーヒーで目を覚ました。
薄暗い空が少しばかり気を重くしている。
今日はミネアポリスのダウンタウン取材、雪が止むことを祈ろう。
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