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第二十一夜 Small Problem @Sofia [Bulgaria]

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トップリ日が暮れるとアッサリ人の気配がなくなった。

大通りを歩いていても「ここが首都なの?」というぐらい人がいない、みな家路についてしまったのだろうか。
まだ歩いていなかった西側を目指し、路面電車を追うように線路沿いの舗道を進んだ。
こちらサイドなら歩き疲れた場合の帰路は、トラムでバス・ターミナルへ向かえばいい。

街歩きで気づいたが、ここブルガリアでも通りを走るクルマが優しい。

横断歩道もない路地でもドライバーは笑顔で待ってくれるし、交差点の角に立てばほとんどのクルマが道を譲ってくれる。
バルカン同様、ドライバーに余裕と優しさを感じるのだ、なにも急がず、なにも慌てず。
特に苛立たず、特にいきり立たずという運転で、クルマという「力」を操る側としてはこうありたいものだ。

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少し寂しい通りで、明るい光を放つダイナーのような造りのレストランに目が止まった。

スープを売りにしているレストランらしく、ウィンドウの向こうのガラスケースに寸胴がいくつも並んでいるのが見えた。
テイクアウトなのか、出入りする客が多い、ふふふ、こういう時はハナが利くんでね、この店に決め、扉を押すと、
テーブル席に案内され、メニューを渡されたが、そこにはブルガリア語しか書かれておらず、一瞬で音を上げた。

「すみません、英語のメニュー、ありませんか?」

気のいいおねえさんにそういうと肩をすくめられた、英語版はないらしい。
こういうときには必殺技「隣のテーブルと同じヤツ」だ、となりの女性2人組が食べていたチキン・ソテーを頼んだ。

「セットにするとスープがつくわよ、スープはメニューじゃなくて、あっちで選んで」

英語混じりのブルガリア語でそれらしいことを言われ、ガラスケースの方を示された。
テイクアウトの客と肩を並べ、気になった寸胴を「コレなに?」「コッチは?」などと聞きながら、
結局、「No.1人気」という豆のスープに決めた。
今度も必殺技「指差し注文」、食堂の人たちはお客には優しいからね、言葉が通じなくても意外となんとかなるものです。

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腕時計を確認すると20時を回ったところだった。

22時まで開いているスーパーに目星をつけていたので、店が閉まる前に飛び込み、水や夜食のパンを買い込み、
駅に預けて置いた荷物を受け取り、あとはバス・ターミナルで軽く着替えたりしながら、時間をツブせばいい。
そんな具合になんとなくブカレスト行きまでの流れが読めたので、気分的に楽になっていた。
店のマダムに「味はどう?」なんて言われながらゆっくり夕食の時間を楽しんだ。

ところがこの時すでに悲劇は忍び寄ってきていたのだった、知らぬは本人ばかりなり。

食事を終え、21時過ぎに店を出ると外気はすっかり肌寒くなっていた、夏とは思えない冷え込みだ。
おいおい、8月下旬だぜ、などと思いつつ、スーパーを目指す。
夕食前よりもさらに人影が少なくなっていたので、気分的に寒さが割増しになっていたのかもしれない。

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21:30、スーパーに飛び込むとすでに閉店準備をしていた。
入口を守る警備員に体よく追い払われる形でなにも買うことができず仕舞い。
「お~い、閉店までまだ30分もあるんですけど~」などと文句を垂れてみたが、屈強な警備員はたじろぎもしない。
しかたなくバス・ターミナルへの道のりへ戻った。

途中、営業していたピザ屋の店先に切り売りのピザとデニッシュが並んでいたので、そいつを包んでもらう。
ピザ屋の店内はBARのようになっていて、かなりの客が飲んだくれている。
一応、深夜バスの夜食、あるいは朝食のパンはゲット、水はバス・ターミナルの売店で買えばいい。

なんとなくイヤな予感がして、駅の荷物預かり所へ急いだ。

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駅構内はやけに薄暗く、23時まで営業しているはずの預り所は閉まっていた。
少しばかり青くなってドアを叩くと幅の広いオバチャンが煩わしそうに小窓からこちらを睨みつけてきた。

「これ(引換券)の荷物、もらいたいんだけど?」

「X@△XX*@!!」

なんだか知らないがものすごい剣幕で怒っていて、クロークの扉を開けてはくれない。
荷物をもらえないことには困ってしまうので、大げさなぐらい下手に出て、ていねいな言葉づかいで懇願してみた。
小窓の向こうの奥の棚には自分のバッグが見えている。

「あれです、あのカバンです、ください、お願いします、あの黒いバッグです」

なにしろ荷物を置いたままではブカレストに旅立てない。
幅の広いオバチャンは重いカラダを持ち上げ、扉を開けてはくれたが、文句を言い続けている。
こちらの腕時計を指し示して怒っているようだが、時刻は22時を少し回ったところだ。

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「23時までって言ってたじゃないですか。なんでそんなに怒っているの?」

ここでもモチロン英語は通じないので、終始、ブルガリア語で怒られ続けていて、わけがわからなくなっていた。
ひとまず扉を開けてくれ、バゲージを無事に回収できたので、ていねいに礼を言いつつも、
こちらも日本語で憤慨しながら荷物を背負い込み、荷物預かり所を後にした。

「スーパーにしろ、クロークにしろ、どいつもこいつもそんなに早く帰りたいのかよ」などと文句を垂れながら、
バス・ターミナルへ向かう、あっちでもこっちでも気分が良いとはいえない対応が続き、イラついていた。

実はイラつかれる原因はこの旅人にあり、この時、バカな旅人はそのことにまだ気づいていない。

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今朝訪れたバス・ターミナルの2階に上がり、ゆっくりできるベンチに陣取った。
深夜発、あるいは翌朝の出発を待つ客だろうか、ベンチでくつろぐ人が多く、同輩がいることには少し安心感が漂った。

街歩きで汗ばんだシャツだけ着替え、カンタンにカラダを拭いた。
22:30を回ったところなので、バスの時間には2時間ほどある、他の客と同じようにベンチにくつろぎ、読書タイムだ。

我が腕時計の日付が変わるころ、チケットに書かれた番号の乗り場へ向かった。

ターミナルにはバスが一台もいなかった。
時間ギリギリに来て時間ちょうどに出発するのか、とバルカンのこれまでと照らし合わせ、気楽に考えていた。

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ところが出発時間の0:30になってもバスはモチロン、他の乗客の姿もない。
少しばかり青くなって、辛うじて開いていた他社のチケット・カウンターに尋ねると、実にシンプルな答えが返ってきた。

「そのバスはもう出たわよ」

ブカレスト行きのバスはすでに出発していた。


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