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第二十一夜 Rustic Reality @Sofia [Bulgaria]

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―DAY21― 8月25日(帰国まで5日)

朝8:30、寝台列車は定刻通り、『Sofia Central Station(ソフィア中央駅)』に到着した。

乗客はみな寝ぼけ眼で、ここがどこかも掴めないまま、
それぞれが荷物を背負い、古い車両からプラット・ホームに吐き出されていた。

ベオグラードを時間通り出発した車内ではアチラコチラで歓談が続いていた。
なにせ割り当てられたベッドは座ろうにも背中を折り曲げないことには上段のベッドに頭がぶつかってしまうため、
ほとんどの乗客が通路での立ち話を強いられていた。
もっともその通路も肩を交わさなければならないほどの幅しかないのだが。(写真2)

同じコンパートメントに乗り合わせたアジア人は香港からのカップルで、
ブルガリア・ソフィアからルーアニア、セルビアと回り、
この寝台列車でソフィアに戻ったその日に香港に帰国するらしい。
この旅で香港人と擦れ違ったのは初めてだ。
どうやらカレシは英語が苦手で、旅の主導権は英語が上手なカノジョが握っているらしい。
「カップルで旅行なんて、日本だと親がうるさいけど香港ではどうなの?」なんてツッコンでみたら、
カノジョは思わせぶりに「フフフ」と笑っていた。

どこの国でも旅慣れているのは女性で、しかも肝が据わっているらしい。

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トルコ人男性の2人組はやけに明るく、こちらがアジア人だと分かると、
おなじみの「ジャッキー・チェン」「カンフー」のポーズを披露しておどけて見せた。
はい、ジャッキーはこっちじゃなくて彼らの国の担当です。

到着時にイビキを立てていた最下段の男性は列車が動き出してしばらくしてから起き出してきた。
すると同じコンパートメントの面々に旅の行程を問い、
まるで審議官のようにそれぞれの行程を噛みしめ、自分の記憶と擦り合わせて納得していた。
どうやらカナダ人ということはわかったが、アンタはどこから来てどこに行くんだ、とは誰も問わなかった。

トイレや洗面所がどんなものか確認しに行ってみたが、
いずれもできることなら使わないで済ませたいレベルのものがあるだけだった。

隣りの車両は対面4座の「2等車」らしく、こちらも外国人グループでにぎわっている。
自分たちの寝台車両は一応、「1等車」らしく、それ以上いい席もいい車両もない。
1等にも2等にも車内はどうやら外国人旅行者だけしかいないようだった。

長距離バスならもっと早く、快適なので、地元の人や国内旅行者はそちらを選ぶのだろう。
宿代が浮いて、しかも寝ている間に移動できる3,000円ほどの寝台列車はバックパッカーの巣窟のようで、
さながら安宿、安ホステルがそのまま移動しているような状態であることに気づいた。

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自撮りやおしゃべりの熱も日付が変わるころには冷め、それぞれが狭いベッドに潜りはじめた。

車内は8月とは思えない冷え込みで、エアコンなど不要、
それどころか備えつけのプランケットでは足りず、バゲージからシャツを多めに取り出し、
即製で季節はずれのミノムシになり、備えた。

ベッドサイズは181cmの身長がピッタリはまり込む長さで、
幅は肩幅に毛が生えたような程度しかなく、
上手に寝返りを打たないと転げ落ちる破目に陥りそうなサイズだった。
ホステルのドミトリーのベッドより遥かに狭く、
「動くホステル」なんて形容をするとホステル業界に怒られるかもしれない。

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実はこの「寝ている間に移動できる」というのがこの寝台列車を利用した大きな理由だった。

帰国日まで残された日にちがないことに悩まされていた。
28日夜の出発便で翌29日に日本着となるので、残り日数は「5日」といっても実質3日しかない。

25日ブルガリア・ソフィア入り、
26日ルーマニア・ブカレストで、
27日にはイスタンブールに到着、
28日の夜便までイスタンブールをゆっくり巡りたかった。

そうなると寝台列車、夜行バスの連発でイスタンブールにたどり着く、なんて強硬スケジュールも頭に入れていた。
まずその皮切りがベオグラードからの寝台列車、という選択に至ったのだ。
イスタンブールまで宿に泊まっている余裕がないかもしれない、そんな風に狭い寝台で考えていた。

まだ暗い6時頃、列車は停止した。

車内に制服姿の審査官がやって来て、パスポート・チェックをはじめたようだ、
「パスポートがいるぞ~」なんて声が奥から響いてきた。
ベッドから降り、寝ぼけ顔でパスポートにチョップ(スタンプ)をもらった。

6:30、列車は動き出し、ぼんやりした頭のまま、この旅9ヶ国目の『ブルガリア』に入国したことになった。

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2時間後の8:30、『ソフィア中央駅』のプラットホームに吐き出された乗客に客引きが取り付いてくる。

他にもホームにはバス会社の客引きがいて、声高に次の目的地を叫んでいた。
バスの金額や夜行バスがあるのも知りたかったので、かまわず一人の客引きに声をかけた。

「『ブカレスト』行きたいんだけど」

「これからか? いいぞ、ついて来い」

そういうと待たせてあった客と一緒に駅構内にあるバス会社らしき事務所に連れていかれた。
順にさばかれていく客につづいて、カウンターにつく。

「『ブカレスト』行きの深夜バスはありますか?」

「あるわよ。0:30出発、52レヴァよ」

「『レヴァ』(ブルガリアの現地通貨)をまだ持ってないんだ。カード使える?」

「うちはキャッシュだけなの。彼が両替所へ案内するわ」

そういって先ほどの客引きを呼び寄せた。

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バゲージを事務所に置かせてもらい、客引きのオヤジに続いて、両替所へ、
朝から営業しているならこちらも助かる。

夜行バスで発つとなるとここブルガリアではバス代と食事代があれば事足りることになる。
US$40を差し出すとレフ(複数ではレヴァ)と呼ばれる現地通貨が「56」やってきた。
$10=14レヴァ、1レフが70円ほどか。
到着したばかりの文無しとしてはレートなどにこだわっていられないのだ。

あれ? この換算額って、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに似てないか?
得意のシンガポール・ドルに近くて計算しやすかった記憶と重なった。

これで食事代が足りなくなったら市中のレートのいいところで換えてもいいし、
カードが使える店に入って食事してもいい、現地通貨をあまらせたくなかったので、そんな風に考えた。

「さ、行こう」

両替所の外で待っていた客引きオヤジに促され、先ほどの事務所に戻った。
促されなくてもバゲージを預けてあるので戻るのだけどね。
おそらく彼はバス会社からマージンをもらうか、
あるいはチケット代金にコミッションを乗っけられ、こちらが支払わされるか、どちらかの上前をはねるのだろう。
客引きの狙うところは懐の緩い旅行者の小銭だ。

いくらバルカン半島の人々が親切だからといって、朝の到着駅で旅行者を待ち受けてまで親切にするもの好きはいない。

「じゃあ、『ブカレスト』行きを1名分ください」

手渡されたチケットを見ると支払った金額通りの額面が記されていた。
チケットには正しい額面を記さないとね、あとでトラブルになるし、こうして証拠も残るからね。
ブカレスト行き深夜バス=52レヴァ、ソフィア滞在=0:30までと決まった。

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「バゲージ預けに行くかい? バス・ターミナルの乗り場も案内するよ」

これでバス会社からマージンがもらえるのか、客引きオヤジは機嫌よくそういった。
駅構内に有料で荷物を預かってくれる場所があることは事前に調べて知っていた。
おまけにバス・ターミナルが中央駅に隣接していることも分かっていたが、
寝不足の頭では断るのもメンドくさく、「案内する」という言葉に乗っかることにした。

デイ・パックに替えのシャツとヒマツブシの文庫本だけ入れ、キャスターバッグを預けた。

「2レヴァよ。23時で閉まるから取りに来てね」

23時ならこちらのバスの時間にも都合いい、こういう小さな幸運は大事にしないとね。

「じゃあ、バス乗り場、案内するよ」

頼んでいないのに客引きオヤジは率先して先導してくれる。
実はこの「頼んでいない」「こちらからは質問していない」というのが重要でこの後、予測通りの展開が起きた。

中央駅の左に折れるとバス会社の事務所と小さなターミナルがあり、
その向こうに近代的な大きな建物が見えた、それが『中央バスターミナル』のようだ。

「ありがとう、バスの乗り場もわかったから案内はもういいよ」

ターミナルに入る手前でそういうと客引きオヤジはおもむろに手を出した。
案の定、「チップをよこせ」ということらしい。

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「なに言ってんの?」

寝台列車の寝不足もあってこちらは機嫌がいいとはいえない状態だ。

「チップだよ、アレコレ案内したろ?」

「なんで最初に『チップ』と言わないんだよ。
 それにこちらからはなにも頼んでない、アンタが勝手に連れ回しただけだろ?」

「確かになにも頼まれてないけど・・・」

そう言いながらも出した手は引っ込まずにいた。

「最初に『チップがいる』といえば ねえ、残念だねえ。
 聞いてないものは払えないねえ」

そういって客引きオヤジを置き去りにしてターミナルの中に進んだ。
ドアの向こうで悪態をつく声が聞こえたが無視した。

ここはブルガリア、どうやらバルカン半島とは毛色が違うようですぜ、ダンナ。


ベオグラードからソフィアへ
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taharas

遅れ馳せながら・・
明けましておめでとう御座います
今年もどうぞ宜しくお願い致します!(^^)!
by taharas (2016-01-07 02:19) 

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