第二十夜 Solemn Sunday @Beograd [Serbia]

―DAY20― 8月24日(帰国まで6日)
朝から降り続く小ぬか雨のせいか、ベオグラードの街のド真ん中には人影がなかった。
セルビア入国前の迂回で狂った旅のペースと体調を取り戻し、朝早くから街歩きに繰り出してみたのだが、
肩透かしをくらったような格好になった。
冷静に考えると日曜の午前なので、ただ単に都市部に人がいないだけか、
あるいはミサに出かけるなど宗教的な理由があるのだろうか。
実のところ、そぼ降る雨はあまり関係がないのかもしれない。
小さなキオスクが営業しているだけで、他の店は閉まっている。
カフェはテラス席にイスを並べはじめ、ようやく動き出すような気配、
あるいはセルビアの生活習慣自体が朝はのんびり型なのかもしれない。
ホステルでいくつか教えてもらった両替店もまだ開いておらず、少しばかり早起きを悔いた。

昨夜は広いシャワー・ルームや真新しいキッチンの説明をしてもらった後、
すぐにシャワーを使い、カラダを温め、雨の染み込んだ下着を履き替えた。
体勢を立て直すと雨宿りのサンドウィッチだけでは物足りないことに気づき、買い物に出かけることにした。
ホステルのスタッフは中心部『Terazije(テラジエ)』の反対側に地元の人が使う店があり、
辺りにはテイクアウトのピザ屋も多いよ、なんて情報をホステルのスタッフが教えてくれた。
市バス乗り場にもなっている広場を横切り、スーパーを探すと、
コンビニよりも小さな商店が「スーパーマーケット」のカンバンを掲げていた。
ここですか、とガッカリ感に包まれたが、店からは頻繁に地元の人が出入りしている。
どうやら中心部で人気の店らしかった。
地元の人に混ざり、狭いレジに並び、切り分けられた野菜のパックと野太いソーセージを買い、宿に戻った。
明るい光を放つピザ屋も気になったが、夕食を作る気になっていたのは、
ピカピカのキッチンにコーヒー・サーバーが置かれていたことが理由かもしれない。
コーヒーやお茶はバッグに詰め込んで持参しているが飲む量に限りがあるので、
ロビーやキッチンにコーヒーや紅茶が置かれているだけで少しばかりウレシイ気分に至る。
たとえそれが安宿であっても、ね。
すみません、コーヒー・サーバーのあるなしで宿を選ぶ変わり者がここにおります。
据え付けのオーブンはまだ誰も使っていなかったらしく、スタッフに尋ねても使い方がおぼつかなかった。
明るいリビングでは話し相手にトルコからの旅行者をゲット、
ホステルのパブリック・スペースはさびしい一人飯を回避できるのも大きな魅力だ。

ひと気のない朝の目抜き通りの写真を撮り、一旦、宿に戻った。
両替店が開く11時にあらためて出かけ直し、$60を両替し、5190ディナールを確保する。
$10あたり865ディナール、昨夜のバス・ターミナルとは10ディナールほどの差か。
宿代と次の街への足代を考え、ハンパな金額を両替したのは、
連日、国が変わり、通貨が変わるので、現地通貨を残さないための作戦だ。
今回は「超」円高時に換金したUS$を持参してきてますが、
日本から海外に行く場合、千円札を多めに用意しておくのがお得で上手な両替法ですよん。
両替を終え、『テラジエ』周辺をブラつくが、昼に近い時間になっても人影は少ない、やっぱり日曜だからか。
セルビア正教も午前中は教会へ行くのか、モスリムもカトリックもいる国だから曜日は関係ないか、
アレコレ勝手に想像を巡らせながら、ひと気のない『Kneza Milosa St.(クネズ・ミロシュ通り)』を歩き、
国会議事堂を過ぎると爆撃の跡が生々しく残るビルに出会った。
NATOの空爆跡、ああ、ここが『空爆通り』か、などと行き当たりばったりな感想を漏らしつつ、
小高い丘から『Glavna Zeleznicka Stanica(ベオグラード中央駅)』に向かい、坂を下った。(写真3)

次の街ブルガリアの『ソフィア』へは「寝台列車が安い」という情報を拾っていた。
旅の日程も迫っていたので夜の時間を移動に費やせるのは都合がいい、
おまけに安いというのなら使わない手はないんでないかい、ということで駅にやって来たのだ。
「『ソフィア行き』の列車の時刻と料金を教えてください」
駅の窓口でそう尋ねたが、「日曜はない」とか「4000」とか「3000ディナール」とか、
どうも男性係員のいうことがあやふやで役に立たない。
他の窓口に行き、あらためて尋ねるとガラスの向こうの強面オバチャンは、
「22:00発、3200ディナール」とぶっきらぼうに答えながらも、その2つの数字をシッカリ紙に書いて渡してくれた。
確実な情報を得たので、チケットを買い求め、紙に書かれた金額を支払った。
「今夜の列車は2ndクラスだけよ、時間前にプラット・ホームに来て」と言って、チケットを切ってくれた。
「安い」という話は聞いていたが3500円の寝台列車ってスゴくないかい。

チケットを手にし、その足でホステルに戻り、865ディナールの宿代を払った。
なにか気になる数字、と思ったら、さっき両替した$10のレートそのものだ、
この夏の対日本円のUS$レートは100円を切っているので、ドミトリーは1000円しないということだ。
「『ソフィア』行きのチケット買えたよ。ここにもう一泊したかったけどチェックアウトだね」
「イスタンブールから帰る日が迫っているんだっけ? またあらためてベオグラードに来てよ」
「ぜひまた来たいし、ここにもまた泊まりたいと思ってるよ。夜の列車逃したら泊めてもらうかもね」
「そうならないことを祈っているよ。それとまた来られることも」
アレコレ教えてもらったスタッフと握手を交わし、バゲージを預け、出かけた。

昼を過ぎたというのに肌寒く、荷物を預ける前にチノパンツを取り出し、履き替えていた。
バルカンを北に上がって来てはいたがそれにしては気温が低すぎる、夏の気温とは思えない冷え込み。
まさか短パンをしまい、ロングのパンツで街歩きすることになるとは、雨上りの風が肌寒さに拍車をかけている。
バゲージなしの身軽なスタイルで街歩き、まずは要塞の跡地にある『Kalemegdan Park(カレメグダン公園)』へ。
ここに来るとようやく家族連れやカップルの姿を見かけた。
城門前の公園では小さな「恐竜展」が開かれていて、子供たちが奇声を上げている。
『軍事博物館』の屋外展示だろうか、城壁前に並ぶ兵器の前では学生グループがはしゃいでいた。
敷地奥の切り立った丘からはドナウ川とサヴァ川が交わる美しい景観が見渡せ、
対岸には日本大使館などがある新市街『ノヴィ・ベオグラード』が広がっている。(写真5)
夏ということを忘れていたのか、ようやく日差しが降り注ぎはじめてきていた。
もらった市内地図にある教会マークをしらみつぶしに歩くつもりで、
まずは『The Orthodox Cathedral(セルビア正教大聖堂)』を目指した。

日本人旅行者に人気のホテルが毎日値下げ・バーゲンハンター
なんでもない路地で2人組の年配女性に声をかけられた。
「すみません、写真を撮ってもらえますか?」
「かまいませんけど、ここでですか?」
彼女らはなんの特徴もない建物の白い壁の前に立っている。
「はい、ぜひ、ここで」
言われたまま、殺風景な建物をバックに2人のカメラで写真を撮った。
「あのお、ここってなにか重要な建物なのですか?」
カメラを手渡しながらそう尋ねる。
「ふふふ。わたしたちは20年前にここの学校に通っていたんですよ。
20年ぶりに揃ってここに来られるなんて、ねえ」
どうやら「小さな同窓会」の撮影係を仰せつかったようだ。
ふたりの女性は嬉しそうに笑いあっている、この瞬間は「学生」に戻っていたのかもしれない。

『セルビア正教大聖堂』に足を踏み入れると、ただただ荘厳な雰囲気に包まれていった。
カトリックとは毛色の違う豪奢な装飾、素朴なフレスコ画を眼にし、完全に気圧される。
表に出ると背の高い帽子を被り、重厚な聖衣に身を包んだ司教が横断歩道を渡っていった。
歴史ある大聖堂、気高い聖職者、なにもかもが浮世離れしている気がした。
ただし現実の信号は赤だったが。
そういえばバルカンの人たちは信号をキチンと守る、クルマも歩行者に道を譲り、優しいドライバーが多い。
穿った言い方になるかもしれないが、基本、ヨーロッパでは信号を守らない人が多い。
「法律」や「ルール」は生活や社会を快適に過ごすために定められたもの、と考えるため、
快適さを阻害する「赤信号」は守らなくても当然と考える人が多い、という話を聞いた。
「快」を保つためには「不快」を阻害してかまわない、基本は「自由」であるべきと考えるようで、
「法律」や「ルール」に縛られ、「不快さ」が勝っていくどこかの国とは大きく異なるのだ。
こちらでは「深夜、無人の赤信号でも止まる極東の国のクルマ」がUPされた動画サイトが話題になるほどだ。
旧ユーゴの首都を味わう時間はたっぷり、寝台列車が走り出すまで味わいつくさなくては。
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今日は~ 訪問・nice!有難う御座います。
今年一年・我が拙いブログにお付き合い頂き有難う御座いました。
来る年もお付き合いの程・お願い申し上げます。
年の瀬でお忙しい折・お身体に気を付け、良いお年をお迎え下さい
来る年が・明るく幸有る年に、成ります様に・・・。
by okin-02 (2015-12-31 13:14)
いつもご訪問ありがとうございます。
来年も宜しくお願いします。
良いお年をお迎え下さい。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-12-31 17:25)
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
by てんてん (2016-01-01 13:17)
>okin-02さん
いえいえ、こちらこそご訪問ありがとうございます!
ぜひともあかるい一年をお過ごし下さい!
by delfin (2016-01-01 18:37)
>なんだかなぁ〜!! 横 濱男さん
楽しい正月と健やかな一年をお過ごしください!
by delfin (2016-01-01 18:38)
>てんてんさん
おめでとうございます!
楽しい一年をお過ごしください!
by delfin (2016-01-01 18:39)