第十四夜 Coffee of the Day @Ohrid [Macedonia]
15:05、オフリッド行きのミニバスはほぼ予定通りに出発した。
16:45、名も知らぬ峠でトイレ・ストップ。
ロング・ドライブにはドライバーの休憩も必要だ。
「15分ぐらいのコーヒータイムだよ、コーヒー飲まないか?」
年配のドライバーがそう誘ってくれた。
「飲みたいけど、レクを使い切っちゃったんだ」
そういってパンツのポケットをひっくり返してみせた。
「かまわないよ、一緒に来いよ」
そういうとこちらの肩を叩き、カフェに招き入れてくれた。
ヨーロッパの郊外でよく見かけるドライブイン・スタイルのレストラン&カフェ、
店の前の広い駐車場には大きなトラックとバスが数台並んでいた。
添乗員時代、「△△周遊」という名のツアーを担当するたびに訪れていた懐かしい感じのドライブインだ。
トイレが併設されているわけではないので、レストランのものを拝借する形、
その間にドライバーは一服し、ツアー客はトイレを済ませ、飲みものを買い込むというわけだ。
ツアーでは通常、観光案内するガイドはその街の中での待ち合わせとなる。
街から街へ移動する時、車内にはドライバーと添乗員のコンビだけでお客さんと一緒に次の街を目指すわけだ。
ところがこれがなかなか厄介で、南ヨーロッパともなれば「英語を話せない」なんてドライバーは当たり前で、
コミュニケーションにもけっこう苦労したりする。
なにせ会話が通じない中で、休憩時間とか明日の出発時間とかを合わせなければいけないわけだから。
そんななかで「トイレ・ストップ」を決めるのもややこしいのだ。
自分の場合は基本、ドライバー任せにしていた。
彼らには「ひいきの店」や「行きたい場所」があるので、それに合わせたほうが万事、うまく進む。
添乗員の中には自分が好きな場所や立ち寄りたい所などを指定する人もいるようだが、
大概はドライバーの機嫌を損ね、うまく運ばないケースが多い。
ドライバーを下に見る添乗員も多いけどね、ハンドルを握るプロに任せた方がキレイに進むのに。
話は脱線したが、そんなわけでこの店はミニバスのドライバーの馴染みの店らしく、
一緒に席につくと彼と同じようにコーヒーを出してくれた、今は添乗員でもガイドでもないのに。
結局、ティラナではほとんどの時間をKAFEで過ごした。
バゲージを預かってもらえたので『スカンデルベグ広場』に戻り、周辺をブラついてみたが、
あらためて観るものもなく、結果、KAFEで読書とネットでもして時を待つことを決めた。
ちなみにこの国にはファストフード店がないようにシアトル系のコーヒー・ショップもない、
そのためどのカフェも個性がある、欧米に毒されていないのはある種、魅力的でもある。
ソファがある居心地のよさそうなカフェを見つけ、マキアートを頼んだ。
100レクという金額にも驚かされたが、「お冷」が出てくるのも小さなオドロキだった。(前日写真8)
そういえば他のカフェでも水が出されていた、どうやらこれがアルバニア・スタイルらしい。
ちなみに「カフェ」の綴りが「K」ではじまるのもこの国の特徴。
読書に飽きるとWi-Fiのパスワードを教えてもらい、ネットで時間をつぶした。
10時から15時前までの長い時間、カフェに居続けるタチノワルイ客、アヤシサ満点の外国人であったのだが、
会計を済ませると「明日も来てね」とマネージャーらしき女性に言葉をかけられた。
社交辞令だったのか? 皮肉だったのか? ナゾが解けないまま、ミニバスに乗り込んだ。
17時過ぎに走り出したバスは17:45、国境に差しかかった。
ドライバーがみなのパスポートを集め、出国手続き、
そのまま走り出すと、18:10、マケドニア入国の手続きも済ませ、後部座席にパスポートが回された。
この旅5つ目の国、『マケドニア』にようやく入ることができた。
パスポートを回していて気づいたが、乗客10名の内訳は、
一人のオヤジさんに奥さんと娘二人、その妹叔母に娘二人のなんともかしましいマケドニアの家族が7名、
それにトルコ人カップルとアヤシイ日本人という陣容。
女性の比率が異常に高い車内は終始、ニギヤカでハナヤカなまま、
18:30、『Struga(ストゥルーガ)』に到着、かしまし家族をそこで降ろし、
19:00、終着の『Ohrid(オフリッド)』に到着した。
「楽しい旅を!」
トルコ人カップルと握手をして、別れる。
どうやら降ろされた所はバス・ターミナルではなく、ミニバスを扱う店の前のようだった。
ドライバーにコーヒーの礼をいい、日本から持ってきていた「特別酸っぱい」のがウリのレモンのアメを彼の手に握らせた。
「これ、食べてください、日本のキャンディです」
「おお~、ありがとう。うは! 目が覚めるな、コレ」
その場で口にするとあまりの酸っぱさに彼はお道化て言った。
「あ、そうそう、こちらは『スコピエ』に行くバスは扱ってますか?」
目の前の事務所のドアを開け、中で尋ねてくれた。
「7:00、11:45、17:00の3本で、料金は450ディナールだってさ」
「ありがとうございます。まだマケドニアのお金も持ってないので、明日にでも来てみます。
ところでここはオフリッドのどの辺ですか?」
「ああ、街のど真ん中だよ、この通りがトゥリスティチカ通り。
スコピエ行きならバス・ターミナルから普通のバスもあるはずだ、時間と金額はわからないけどね」
「いろいろありがとうございました。」
あらためて彼と握手をして別れた。
実はティラナのカフェ・タイムにここオフリッドの宿をブッキングしていた。
動きやすいようにバス・ターミナルそばの安宿をおさえていたのだ。
てっきりミニバスもバス・ターミナルに着くものと思っていたので、
街のど真ん中に降ろされたのは便利であったが、誤算でもあった。
まずは市内の地図をもらわないことには動きようがなかったが、ミニバスの事務所には置いてない、ということだった。
街の真ん中、ということだったので、人の流れに任せ、ニギワイの濃い方へ進む。(写真6)
「Infomation」のカンバンがあったので、まずは飛び込んでみた。
「地図ください、それとここの場所を教えてください」
「地図、有料だけどいいかしら?」
断りを入れ、次に「INFO」表示を出していた店に入ってみたが、そこでも「地図は有料」と言われた。
ムムム、マケドニアは市内地図が有料ですと? まずはこれがマケドニアの洗礼なのかい。
バゲージも抱えていたので、まずは宿を探し出してしまうことにした。
ただしカフェからネット・ブッキングしたので、プリントアウトもできておらず、保存したPC画面しかない。
「あたちスマホぢゃないの」と言いつつ、PCを開き、方向を定めていると、声をかけられた。
荷物も背負っていて、PCを広げているので、少しばかり警戒心が高まる。
「May I help you?」
「あ、『バス・ターミナル』を探しているんですが?」
「ああ、それならこの道をまっすぐ行って、モスクのある分かれ道を左ですね、10分もかかりませんよ」
警戒したこちらが気恥ずかしくなるような紳士的な立ち居振る舞いとていねいな英語で教えてくれた。
「ありがとうございます」
う~ん、バルカンの人たちはどの国のドコの町でも無条件に優しすぎる。
地図をもらうことをあきらめ、言われた通りを言われた通りに歩き、バス・ターミナルにたどり着き、
そこからほど近い場所にあるはずの宿を探した。(写真7)
ところが「宿」といってもカンバンなどがなく住宅地をかなり彷徨うことに。
地元の道具屋や売店で英語は通じず、なんとか通りの名前と番地を伝え、なんとなく方向を教えてもらい、
民家を改造したゲストハウスを探り当てた、頼りになったのは家の前に記された番地代わりの「数字」だった。
19:40、チェックインするべく呼び鈴を押すと、白髪の男性が迎え入れてくれた。
「ようこそ、ジャパニーズ! 待ってたよ。今日はどこから来たの?」
「朝4時に『ベラーティ』を出て、『ティラナ』を経て、さっき『オフリッド』に着きました」
「長い旅だねえ、ここがキミの部屋だ。疲れたろう、コーヒー飲むかい?」
「え? コーヒーあるんですか?」
「マケドニア式のコーヒーを淹れてあげるよ。荷物を下ろして、シャワーでも浴びれば?」
共同のキッチンやシャワーの使い方をひと通り教えてくれると、階段を駆け上がっていった。
どうやら1階のフロアにある3部屋を貸しているらしく、2階が居室という感じだ。
連日のホームステイ状態、今夜も他の客を気にすることなくリラックスできそうだ。(写真8)
手短にシャワーで汗を流すとキッチンからコーヒーの香りが漂ってきていた。
「ヴァレンティンだ、よろしく」
シャワーで濡れた手を拭い、自己紹介する彼と握手を交わす。
「こうして砂糖とコーヒー豆を一緒に煮出すのがマケドニア式さ。
というもののトルコのコーヒーと同じかな。ここじゃ、みんなこうやってコーヒーを淹れる」
コップサイズの小さな片手銅鍋をガス・コンロで沸かし、2つのカップにコーヒーを注ぎ入れた。
「うわ、インスタントじゃないんですね」
「ちょうどコーヒーを淹れようと思っていたところにキミが来たんだ」
「なによりコーヒーが好きなんです。チェックインしてウェルカム・コーヒーが飲めるなんてハッピーです」
「僕も一日何杯も飲むほどコーヒーが好きなんだ」
甘いコーヒーを傾けながら握手を交わした、今日は様々なコーヒーに出会った一日だ。
ベラーティからティラナを経由し、オフリッドへ。
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