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第十四夜 Dramatic Capital @Tirana [Albania]

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―DAY14― 8月18日

朝4時、まだ暗い中、寝ている頭を叩き起こし、歩き過ぎで筋肉痛になった足に鞭を入れ、宿を発った。

メインの通りと交差するあたりで人が集い、バンが行き来していた。

「これ、『ティラナ』行きですか?」

「それならここで待ってな」

別の行き先を告げたバンのドライバーがそう言ってくれた。
少し広くなった交差点の真ん中には荷物を抱えた数人のおばちゃんがいて、
同じようになにかを待っているようだった。
てっきり来るときに降ろされた『セイント・デメトリアス・オーソドックス教会』の前の
バス・ターミナルらしき広場で乗るものと思ったので、少しばかり肩透かしを食らった恰好だが、
5分ほどの距離を荷物を背負って歩かないで済むのかと思うと、お得な感じもあった。

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目の前にバンが停まるたび、「ティラナ?」と尋ねてみる。
なにせミニバンとおぼしきクルマたちは
フロントガラスに粗っぽいダンボールで行き先表示をしているものもあれば、
ドライバーが降りてきて馴染みのおばちゃんを乗せ、去っていくだけなのだ。
おかげで危うくパン屋の配達のバンにまで行き先を尋ねそうになった。

交差点でしばらく放置されると次第に「教会まで歩いたほうがいいのかも」と心が揺らぎはじめる。
そんな時、目の前に停まったバンが「ティラ~ナ~!」と景気のいい声をかけてきた。

「はいはい! 乗ります乗ります!」

荷物をひっ掴み、他の客に続いて、バンに乗り込む。するとバンはターンを切り、
『セイント・デメトリアス・オーソドックス教会』方面に進んだ。

慌てて乗り込んだバンはピックアップ用らしく、乗り込んだみなを降ろして去って行った。
ここまで歩いてきても同じだったのね、と思いながらも、
荷物ありで歩かないで済んだので小さなラッキーを拾った感じだ。
辺りにいたドライバーとおぼしき人たちに「ティラナは?」と尋ねると、
朝の機嫌悪さ丸出しのまま「あっちのバンだ」と教えてくれた。(写真2)

トランクに荷物を積み込むと、席には先客が2人いた。
ミニバンの座席は3人x3列+助手席2人、まだ8人分余っている、
おそらく全部埋まってから出発する乗合方式だろう。
イラついても仕方ないので、バッグから買っておいたパンを取り出し、齧りつくことにした。

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昨夜は夜景撮影に夢中になり、気づいたら食堂があまり開いておらず、軽い夕食難民になりかけた。

売店でパンでも買うしかないかと思っていると、
モスリム・スタイルのピザ屋があったので、かまわず飛び込んだ。
焼きたてのピザと一緒にピタパン・タイプのサンドウィッチも売っていたが、
ほとんどのメニューに「TON」の文字がくっついているのが妙だった。

「このTONってなんです?」

「ツナだよ」

「おお~。じゃあ、それ、ください」

食べ物の戒律が厳しいイスラム圏ではタマゴだけを挟んだ「モスリム・バーガー」なんてものが
当たり前にメニューにある。
肉はチキンが主流になるが、ツナのメニューも多く、いずれも野菜が豊富なので、
旅行者というか、ツナに馴染みのある日本人には嬉しかったりもする。

ツナ・サンド150レク、オーブンで焼かれたチーズが火傷するほど熱く、
疲れたカラダを癒していくような気がした。(前日写真8)

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4:50、ようやく11人目の乗客を迎え入れ、ミニバンはティラナに向けて出発した。

バスと異なり、やはりバンは速い。
おまけにドライバーの運転は荒っぽく、前走車をガンガン抜き去っていくので、
きっちり2時間でティラナに着いてしまった。
途中で客を拾うこともなく、直通なので早いのはわかるが、バスでかかった3時間はなんだったんだ。
料金は500レク、今度は降りるときにキッチリドライバーに払いましたぜ。

朝7:00、ふたたびのティラナ。

知っている街というのはなんと心強いことか、とそれらしいことを思ったが、
考えてみたら昨日の朝、ここを発って、ベラーティで一泊しただけのハナシだ。
別の言い方をすれば、バス路線が見つからず、
尻尾を巻いて戻って来たマヌケな旅行者がまたここにいるだけだ。

そんなことはさておき、この先のルートがあるのかも確定していない、
まずはマケドニア・オフリッド行きのバスを探すことからはじめなくては。

ミニバンを降りたバス・ターミナルらしき場所で「オフリッド行き」のバスがどこから出るか聴いて回り、
地図にそれらしき場所の印をつけてもらった。
泊まっていたホステルに戻り、スタッフの助けを借りることも考えたが、
朝早すぎるし、もはや客でもないのでそうなると性質の悪い厄介な客に成り下がる気がしたのでやめておいた。

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地図の印を頼りに街の中心に戻る。

『スカンデルベグ広場』にほど近い場所にあった郊外行きのバス乗り場でダメモトでアレコレ尋ねてみる。
だがたいして手掛かりになる情報は得られなかった。

地図を広げ、あらためて印の場所を確認していると「Can I help?」と話しかけられた。

「『オフリッド』行きのバス乗り場を探しているんです」と正直に告げる。

「マケドニア方面行きなら『ぷらーご』というバス会社じゃないかな?
 この通りの突き当り手前のところにある会社を尋ねてみて」

「ありがとうございます」

出勤前の通りすがりの男性がなぜそのことを知っているのかわからなかったが、
間違いやダマされたとしても身ぐるみはがされるわけでもなく、言われた名前の会社を探してみることにした。
ただし朝の7時過ぎにオフィスが開いているかはなんとも不安ではあったが。

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『Bulevardi Zogu 1(ゾグー1世通り)』を北に向けて歩く。

途中、香ばしいニオイを立てるパン屋さんで35レク(!)のパイを買い、(写真6)
「ぷらーご、ぷらーご」と念仏を唱え、パイを齧りつつ、朝の街にそぐわないアヤシイ風体で歩いた。

『Pollogu』という綴りのカンバンを見つけた。
これが「ぷらーご」なのか「ぽろーぐ」なのかわからなかったが、それらしくないかい?

8時のオープンを待って、ビルの階段を上がるとそこにはバス・チケットを扱う店舗があった。
前の客が終わるのを待って、行き先を告げる。
しかし帰って来たのは悲しい答えだった。

「9時のバスは満席よ」

カウンターの向こうのおばさんは英語がニガテらしく、
自分が座ったイスを示し、「ない」という素振りで説明してくれた。

「え」

まさに絶句。
たぶん昨日も今日も朝の情報番組で「バス運がない」とテロップを出されているに違いない、
ついでにラッキー・アイテムはなんだ?

「ミニバスでいいなら15時の『オフリッド』行きがあるわよ」

どうにもこうにもタクシーでもバイクでも朝でも昼でもマケドニアに行きたいので文句はない。

「それ以外はないんですか?」

「朝9時のバスは『ストゥルーガ』行き、そこから『オフリッド』行きに乗り継ぐ形。
 15時のミニバスは『オフリッド』直通よ」

おばさんは紙に行先と時間、料金を書いて説明してくれた。

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あれ? ちょっと待てよ? 直通なら15時のミニバスの方が楽じゃないか?
9時のストゥルーガ行きは「バス」で「乗り換えあり」、
13ユーロ(そこからオフリッドまではいくらかは不明)、
15時のオフリッド行きは「ミニバス」で「直通」、15ユーロ。
あれ? 悪くないハナシじゃん。

「じゃあ、15時のミニバスで行きます」

「15ユーロね」

おばさんの貴重な提案に飛びつき、オフリッド行きのチケットを手にすることができた。

「乗り場はドコなんですか?」

「うちの店の前よ、ただし15時よりも前に来てね。遅れたら待たずにいっちゃうから。
 あ、必要ならその荷物預かるわよ」

「わかりました、時間前に来ます。え? ここに荷物置いていいんですか?」

カウンターの内側にキャスター・バッグを置いてもらう、
ヒマツブシの文庫本やPCはその場でデイパックに詰め替えた。

「本当にいろいろありがとうございます」

礼を言い、握手をして店を出た。

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昨日から「バスがない」の言葉に脅かされていたが、こんな風に導いてもらえるとは。
「バス運」良くなってないか? ラッキー・アイテムは「代理店のおばさん」か?

ポケットにはこの国の通貨「レク」が少し残っている。
KAFE(この国ではこう書く)でWi-Fi繋いで時間をつぶすか。
店でランチを食べるほどの残金はないけどコーヒーとパンぐらいならなんとかなるだろう。

とはいえ、まだ9時前、アルバニアの時間はまだまだ残っている。


オフリッド方面のバス・チケット代理店はこの通りの北側



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