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第十夜 Entry to Crna Gora @Kotor [Montenegro]

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―DAY10― 8月14日

今日も朝から夏全開、バカンス・シーズンの太陽にバカンスなしといったところか。

宿代を支払ってしまおうと、母屋にいるばあちゃんに声をかけた。

「あら、出発するのかい?」

2泊分の宿代300クーナを手渡すとろくに金額も確かめず、他方に話しが差し向けられた。

「10時のバスでコトールに向かいます。お世話になりました。もう少ししたら出ます」

「まだ数日、居てもいいんだよ~。でも行くんだろうから、わたしもまた客引きに行かないとねえ」

最後もお決まりのフレーズが口を突いて出てきた。

決して美しいとはいえない離れの部屋、母屋の家族と触れ合うことも特になかったが、
民家に泊まって地元生活っぽいことを疑似体験したようで、これはこれで悪くなかった。
貴重なSOBEの2泊も終わりを告げる。

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昨夜は『スルジ山』から眺めた「アドリア海の真珠」に魅了された後、3人でディナーを楽しんだ。

「ディナー」と書くと大げさに聞こえるが、旧市街の普通のレストランで夕食を食べただけの話しだ。
海辺の街、ということもあってそれぞれが魚のソテーやカラマリなどのシーフードを頼み、
やって来た皿をお互いにシェアした。

陽が落ちた丘の上は急に冷えだし、肌寒くなったロシア人の彼女は熱い紅茶を欲しがった。
ハンガリー人のダニエルはいつでもどこでもビールらしく、小瓶のボトルを傾け、味わっている。
酒が苦手なこちらはお気に入りの炭酸水を注文し、大きなワイングラスにそれを注ぐ。
飲みたい人は飲むし、ニガテな人は好みのものを、他人になにかを強要したりしないのがこちら流。
一斉に同じものを頼まなければならないドコカの国のテーブルの風習は気持ち悪くもある。

「で、次はどこの街へ行くの?」

「南目指して、コトールに向かおうかと思って。長いバスはちょっと飽きたしね。ふたりは?」

午前中の作戦会議、バルカンを巡るルートをどちらにするか迷ったが、
南下することに決め、コトール行き、10時のバス・チケットを146クーナで購入していた。
実はアルバニア、マケドニアといった日本ではあまり馴染みのない国々に気を惹かれていて、
少しでも早く踏み込みたい、という思いが強かったのだ。
素直にその気分に従おうと、南方面を目指すことにした。

ところがこのルート選択がちょっとしたトラブルを巻き起こすことになるのだが、
この時はまだ気づかずにいた。

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「僕らはもうしばらく隣町にいるよ、静かでいいんだ。
 そのあとは北に上がってスプリットとプリトゥヴィツェを巡るかな。
 そこは行ってみてどうだった?」

「スプリットはザダールと比べると騒がしいかもね、クルーズ客とか多いし。
 湖は問題ないよ、ただ事前にネットで入場券を買っておいたほうがいいよ、酷いことになるから。
 ああ、バイクで湖周辺を巡れるのはうらやましいなあ」

「なるほどね、スプリット飛ばして湖に行ってもいいかもな」

彼らはこの街で待ち合わせ、これからクロアチアを巡る旅をはじめ、
こちらはクロアチアに別れを告げ、次の街を目指すのだ。

「いいよ、食事代は払うよ。一人で退屈な食事をしなくて済んだんだから。ホント、楽しい時間だったし」

「ダメだよ、3人でシェアしよう。料理もシェア、お金もシェア、
 こっちは酒も飲んでいるしフェアじゃないよ」

誘った時点で夕食代を持つつもりでいたのだが、
ビールからワインに切り替えて上機嫌になったのか、こちらを制してダニエルがそう言う。
彼女もこちらの支払いを咎めるようにふざけて勘定書きを隠して微笑んでいた。

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「OK。じゃあいつか日本に来ることがあったら日本のオイシイモノをご馳走するよ」

「ワオ!」

ふたりが揃って喜びの声を上げた瞬間、周りの客に睨まれ、思わず3人で目を合わせ、笑った。

彼らのバイクも置いたままだったので、酔い覚ましも兼ねて、宿への夜の道を歩いて帰る。
日付が変わるころにたどり着くと握手とハグを繰り返し、タンデムで走り去る彼らを見送ることで、
それぞれがそれぞれの旅の時間に戻ることになった。

次の街は3ヶ国目のモンテネグロ、通貨はふたたびユーロに戻るので、この国の通貨ともお別れだ。

おばあちゃんに宿代を払った後に残った小銭を使い切るため、
前のスーパーでブランチ用のパンとサラミを買うと手元には4クーナだけが残った。
残ったコインでバスに乗る前にミネラル・ウォーターでも買うか、と思いつつ、
坂を下り、バス・ターミナルに向かった。

バス・ターミナルの売店では4クーナは使い道がないことが判明、
そんなことをしている間にプラット・ホームにやって来たバスの行き先を確認し、トランクに荷物を積み込もうとすると、
ドライバーおやじが無愛想に手を突き出してきた。

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「1ユーロ!」

どうやらトランクにラゲッジを積み込むとお金がかかるようで、
バックパック・サイズは車内には持ち込むことができないルールらしい。

「え~?? ユーロ、カバンのなかだよ。クーナじゃダメ?」

「うちはモンテネグロの会社だからクーナは受けつけないよ」

う~ん、国が変わるとバスのシステムも変わるのか~い、と思いつつ、
ちゃっかり残ったクーナで済まそうと思ったのだが、どうやら向こうが一枚上手、
そりゃあ、日々、ややこしいバックパッカー相手にこの手の凌ぎをこなしているのだからね、
一筋縄じゃいきませぬ。

ドライバーおやじはこちらの文句を聞くと積み込んだばかりのキャスター・バッグを丁寧に取り出し、
眼の前に置いてくれた。
こうなるとこちらは無抵抗、カバンの中から大人しく小銭の入った袋を取り出し、
素直に1ユーロを支払うしかことできなかった。
コインと引き換えに領収書を切り、無愛想さはキープしたままで手渡してくれた。
キチンと領収書を出しているのだから、バス会社の正規の料金なのね、コレ。

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そうそう、海外に於いては「わかりづらい」「意味不明」「アヤシゲ」なお金を請求されることがありますが、
レシートをくれるかくれないかで「正規」か「おっさんの懐行き」か見定めることができます。
なので不審に思ったら無言で払うのではなく、キチンと「レシプト!」と強気で言うことが肝心。

荷物を預け、人心地ついたので、手元の4クーナの処理を企んだ。
建物の裏手にある大型スーパーなら、大きな炭酸水を買ってもお釣りがくるのだ。
だがキャスター・バッグの出し入れで時間を取られ、10時の出発時間まで5分しか残っていなかった。
定刻通りに出発するとも思えなかったので、走れば買えるかもしれなかったが、
このときはなんとなく気乗りせず、なんとなくやめておいた。

するとバスは10時キッカリに出発した、
スーパーに走っていたら置いていかれてたんじゃないかい、炭酸水を片手にして。
「なんとなく」は予感というか、危機回避のセンサーが働いたのかいな。

実はバルカン・エリア、意外と時間に正確で
この後も各所で「定刻出発」「予定到着」が守られ、驚かされることになる。
南欧=ラテンのいい加減さに比べると意外と真面目なお国柄なのがびっくりだった。

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出発から1時間で国境に到着した。

とはいえ、クロアチア出国のチョップ(スタンプ)はなし、
モンテネグロ入国もパスポートを見るだけ、というカンタンなもの、
やはりここもヨーロッパ、EUに於いては「国境」はもはや「県境」ぐらいの感覚だ。

国境近くの『Herceg Novi(ヘルツェグ・ノヴィ)』を過ぎたあたりから、
バスは内陸に広がる巨大な湾に沿って走り続けた。

車窓には波のない静かな水面が広がっている。
さながら湖を思わせる穏やかな水面に時折、小さな孤島が浮かんでいて、神秘的な空間が広がっていた。
海と繋がる汽水湖を連想させたが、どうやら純粋に海の一部の湾であることは、
後ほど詳細地図を調べてからわかった。
アドリア海へ繋がるコトール湾の出口は異常に狭く、独特の水辺の風景を作り出しているのだった。

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車窓から写真を撮りたくなるような美しい風景が続いたが、
バスの窓は太陽光線を遮ってくれるありがたいスモーク入りのガラスで、レンズを向ける気にはならなかった。
できることならちょっとバスを停めて、写真タイムがほしいぐらい穏やかで美しく、
静かで奇妙な風景がそこには広がり続けていた。
こうなると今度は自力でアドリア海、いやコトール湾を訪れるしかないか。

そんなことを考えている間に12:30、バスは予定通りに『Kotor(コトール)』に到着した。


ドゥブロヴニクからコトールへ
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