第九夜 Strolled Old City @Dubrovnik [Croatia]
待ち合わせの時間から15分ほど遅れ、宿近くのスーパーにタンデムのアメリカン・タイプがやってきた。
「待たせたね」
外国人と待ち合わせる場合、15分なんてのは許容範囲のうち、いや、なんなら早いぐらいか。
ヘルメットを脱いだダニエルと握手を交わすと、続いて後部座席から降りた彼女を紹介してくれた。
「で、どうするの?」
「この辺を歩いて、そのあと旧市街に行こうか。案内してくれない?」
「案内といってもなんにもないし、なんにも知らないよ、おれも」
そんな話しをしながら、民家の間の路地を歩き、
途中見つけたバイク屋で修理パーツを買い求めたりして、旧市街を目指した。
ザダールの宿を出た後、ナニをしていたのか、お互いの短い旅を語り合い、
こちらの素性を彼女に明かすと、お返しのように二人の関係を教えてくれた。
ロシア人である彼女とは留学時代に北京で知り合ったらしく、ふたりとも中国語は堪能のようだ。
こちらがふざけて北京語で自己紹介するとふたりして路上でゲラゲラと笑いだし、
ふたりの口からはヘンな日本語での答えが返ってきて、今度はこちらがゲラゲラと笑わされた。
「アジアの他の国は行ったことがあるけど、まだ日本は行ったことがないのよ」
「じゃあ、来る時があったらしっかり案内するよ」
「それは心強いわ。日本語の勉強まで至ってないからネ」
「そのようでゴザイマスな」
他愛のない話をしながら歩いていると30分かかる旧市街への道のりも気にならず、『ピレ門』に辿り着いた。
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「なに観るの?」
「そっちはナニ観たいの?」
「教会とか昨日観ちゃったし、もう特にみたいもの、ないかな」
「え? 僕らも昨日チェックイン前に立ち寄ったんだ。じゃあ、適当に散歩しようよ」
まだ明るい夕方の城壁内、土産店を冷やかしたり、両替したり、
船着き場で波に足を浸してみたりしながらブラついた。
「ねえねえ、これって、デートのジャマになってないか?」
「なってないわよ、旅先の友達としゃべりながら街を巡るなんて楽しいじゃない?」
「いいのかねえ、こんなので」
「知らない土地でこうしてリラックスする時間がステキなのよ」
その言葉の通り、一番楽しそうにしていたのは彼女だったので、どうやら社交辞令ではなさそうだ。
城壁内はかなりの人出で混雑している、
団体客が多いように感じるのは彼らが群れのように動いているせいだろうか。
アメリカ、ドイツ、中国、韓国、日本と国籍問わず、
ガイドが掲げた目印に従順に続き、ポイントポイントで説明を受けては慌ただしく移動していく。
「ねえ、キミたち! 中国人と韓国人と日本人の見分け方、わかるかい?」
石段に腰かけ、それぞれが好きなフレーバーのジェラートに熱中していると先生口調でダニエルが語りだした。
「日本人女性の見分け方なら、よくシンガポール時代にガイドやドライバーとふざけて語り合ったけど。
彼女らは化粧が上手で、クソ熱いシンガポールでもかならずパンティ・ホース(ストッキングの英語)を履いているんだ」
「キミは優秀ですね、正解」
「中国人はよそ行きの服装をしてるわね、そんなのでいいのかしら、先生?」
「はい、キミも正解。残ったのは韓国人だが、彼らはヘンなキャップとヘンなサングラスをしている。
どこで買ったんだ、ソレ、というような突飛なデザインがホトンドだ」
「あはは、確かに。それを言うなら日本人も普段かぶらないような帽子をかぶるね」
「むむむ、新説が出てきたな」
「ダメだ、わたし、これ食べきれない」
くだらない話しを断ち切るかのように、ジェラート相手に格闘していた彼女が音をあげた。
「ダブルなんか頼むからでしょ! この子は!」
「だ~って、いつもダブルにしているのよ、わたし。ここのダブルは大き過ぎるわ」
少しからかうと笑いながらこちらに反論しつつ、ジェラートの残りをダニエルに押し付けた。
「ぼくはもう食べられないよ、あそこのゴミ箱に捨てちゃいなよ」
「捨てるのはよくないわ、食べてよ」
「わけがわからないよ。自分は食べられないくせに」
「あはは、おれも手伝うよ」
そういって半分近く残ったカップの中身を3人でスプーンでつつき、なんとか退治した。
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「晩飯がいらなくなるぐらい食べた気がするな」
「くそ、残りのジェラートは海に投げ込んでしまえばよかったよ」
「そんなことしたらアナタも海に投げ込むわよ」
「あはは、おれも手伝うよ」
同じセリフを同じように繰り返すと音感がおもしろかったのか、ふたりはケラケラ笑い続けた。
笑っているふたりを眺めながら問いかける。
「さて、どうしようか。とても晩飯の気分じゃないよね」
「う~ん、そうだな、ゴンドラで丘に上がってみようか? ちょうど夕景が観られていいんじゃないかな。
実は昨日行こうとしたんだけど、遅すぎて日没に間に合わなかったんだ」
「いいアイデアだね。でもそれなら暗くなる前に行こうよ、写真が撮れる」
「じゃあ、おなかを減らしにみんなで行きましょ。行列してないといいわね」
旧市街の北側にある『Srd(スルジ山)』行きのロープウェイ乗り場に向かった。
路地を歩くと狭い通りに置かれたほとんどのテーブルは埋まっていた。
夕食にはまだ早い時間、カクテル・タイムだろうか、ツアー客を尻目に優雅なひと時を楽しんでいる。
考えてみるとこちらも安宿に泊まってはいるものの、
すべての時間は何者にも支配されておらず、贅沢の極みだ。
こちらのBARの店先ではフラッシュ・モブのようなスタイルで、
普段着のホーン・セクションが生演奏を繰り出し、拍手喝采を受けていた。(写真5)
その向こうの広場ではメイクアップした大道芸人が人に囲まれ、注目を集めている。
ロープウェイは行列はしておらず、100クーナの往復チケットを買うとすぐ次のゴンドラに乗り込めた。
アドリア海に陽が落ちるにはまだ時間がある、果たしてどんな夕景が待っているのだろうか。
おはようございます。
赤い屋根の街並みとカラッとした青空、いいですねー。
アジア人の見分け方。なるほどと思いました。
経験が少ないボクは、挙動で判断しています。
凄いのが韓国系で、もっと凄いのが中国系っていうザックリ感(^^;
by はらぼー (2015-09-16 08:12)
>はらぼーさん
返事が遅くなってしまいました。
さすが「アドリア海の真珠」は美しかったですよ。
ただ街なかは観光客、ツアー客が多く、ちょっとワサワサしておりましたが、
スルジ山からの眺めは人も少なく、すばらしかったです!!
by delfin (2015-09-26 18:42)