第八夜 Unexpected Plan @Dubrovnik [Croatia]
右手に波止場、左手に鉄道駅を眺めながら、さらに奥にあるバス・ターミナルへ。
昼を過ぎると気温はますます上がり、今日もこのまま40度近くまで気温計を押し上げそうな陽気だ。
熱い時間に到着した客はウンザリした表情で歩き出し、
熱い時間に旅立つ人は当たり前の顔をして荷物を引きずっていく。
陽射しを遮る雲はなく、乾いた風はほんの少し海の湿り気を含んで心地よく吹き抜けていく。
『Dubrovnik(ドゥブロヴニク)』行きのバスは予定通り、13:00に出発した。
半分程度の座席が埋まっていただけだったので、指定座席を無視し、後ろのドア前の席に座った。
この席は後部ドアのすぐ脇にあるので、前の座席の圧迫感がなく、視野抜けがいいので気に入っている。
一番後ろの席を早々に陣取る人もいるが、最後尾はエンジン音がうるさかったりするしね。
座席ではたいがいデッキ・シューズを脱ぎ、2つ分の座席の上で胡坐をかいて手元に文庫本というスタイル。
ほとんどの路線で満席になることはないバス内では靴を脱ぐだけでなく、横になっている客も多い。
国内&海外の格安ホテル検索『トリバゴ』
前にも記したがクロアチアの長距離バスは新しい車両が多く、座席も広く、清潔で快適だ。
なんと今回のドゥブロヴニク行きのバスはさらに新しく、車内にはWi-Fiが装備されていた。
う~ん、やはりヨーロッパではWi-Fiはもはや「社会インフラ」の一部、
どこでも金を取ろうとするどこかの国とは大違いだ。
ダメモトでPCを開き、Wi-Fiに繋いでみる。
「あわよくば宿探しできるかな?」と思ったものの、Webメールをチェックするのがやっと。
なにせ走り続けるバスからでは電波はブツ切りで、Webサイトを閲覧するのは困難だった。
あきらめてPCを閉じ、ランチタイムにすることに。
スプリットでは旧市街でランチを食べてからバスに乗り込む目算でいたのだが、
追われるような形でチェック・アウトとなったので、あらためてホステルに荷物を預ける気にはならず、
宿を離れる前のわずかな時間にスーパー・マーケットに駆け込み、
オレンジ・ジュースと炭酸水のデカイボトルとパンとハムを買い込んだ。
ステキな(!)振る舞いの宿のスタッフのおかげで今日の昼のプランニングは予定変更、
バスに乗り込むだけとなったので、重い飲み物のボトルも躊躇なく買い込んだのだ。
座席で袋を開き、パンにハムを挟んでいると車内のランチがこの上なくいいアイデアに思えてきた。
「何時にドゥブロヴニクに着きますか?」今朝、チケットを買ったついでに尋ね、
「18時到着予定よ」という答えをもらっていた。
5時間ものバス旅、文庫本を読むだけでは間が持たない。
PCには映画も入っているが、バッテリーが持たない。
寝るには充分な時間だが、エアコンがシッカリ効いた車内でゆっくりランチをパクつくのも悪くない、
なにせ車窓にはアドリア海の美しい風景とキレイな田舎町が次々に現れては消え、退屈しない。
あとはコーヒーが出てくれば文句なしだが、そいつは到着の18時以降のお楽しみとしよう。
14:40、『Makarska(マカルスカ)』という町で少し早めのトイレ・ストップ。
海岸沿いの一般道を走り続けているので、道沿いのレストランがサービス・エリア代わりだ。
降りる際にドライバーの顔を覚えておき、バスを離れる。
レストランのテーブルでエスプレッソを頼むと、隣のテーブルにドライバーが座っていた。
これなら置いていかれることもはぐれることもなく、ゆっくりコーヒーを味わえる。
それにしても食後のコーヒーにこんな早くありつけるとは、なんとまあラッキーな。
パンを頬ばっているときはトイレ・ストップのことをすっかり忘れていたのだ。
16:40、南下を続け、今度は『Neum(ネウム)』という土地でバスは止まった。
少し前にバスは越境し、『Bosne i Hercegovine(ボスニア・ヘルツェゴビナ)』に入っていた。
クロアチア南側の海岸線沿いは飛び地や国境が入り組んでおり、出入国を繰り返すことになる。
ということで今回は『ボスニア・ヘルツェゴビナ』で用を足すことになった。
長距離バスのトイレ・ストップはモチロン乗客のためでもあるが、
2~3時間で小休止を取るドライバーのためのものでもあったりする。
SAやCAFEのテーブルに着いてカップを傾け、リラックスするドライバーがホトンド、
ツアコン時代にはドライバーやガイドに呼ばれ、一緒にテーブルを囲んで語らったっけ。
今もこうして乗客のひとりとして、見知らぬ土地のレストランでコーヒーを傾けるひと時はキライじゃない。
バスがふたたび走り出すとクロアチアの国境が見えてきた。
再入国時、係員が乗り込んできて、パスポートを軽くチェック、
あれ、ボスニアに入るときはなにもなかったよね、このあたりのルールがまったく分からんなああ。
一般道を走り続けたバスは18:05、ほぼ予定通りにドゥブロヴニクのバス・ターミナルに到着した。
トランクからバゲージを受け取り、ドライバーに礼を言うや否や、客引きのオバチャンたちに取り囲まれた。
少しばかり面喰い、彼女らを振り切り、逃げるようにチケット売り場に向かう。
パスから降りたばかりでの客引き攻撃はちょっとばかり怯むんだよね。
次の街へのバスの時刻と料金を尋ね、冷静さを取り戻し、表に出るとふたたびオバチャンに声をかけられた。
「あなた、ホテル決まっているの?」
「いや、決まってないけど」
「じゃあ、『SOBE』にしなさいよ」
「でも一人だからシングルになるけど、部屋ある?」
「シングル? それならあっちのばあちゃんよ」
そうこちらに告げるとベンチに腰かけていたおばあちゃんの手を引き、戻ってきた。
「この人、シングルだって。ばあちゃんの所ならOKでしょ?」
「うちは1泊200クーナよ、シングルOK、日本の人は大歓迎よ」
こちらをさておき、エプロン姿のオバチャンと腰の曲がったおばあちゃんとの間で商談が進んでいく。
そりゃあ、金払いもよくて部屋を荒らすこともない日本人客は大歓迎でしょうよ、
などとちょっと斜に構えてしまっていた。
それにしても客引きのオバチャンたちは英語やフランス語、客に合わせた語学力が堪能だ。
ムムム、と腰が引けているとおばあちゃんがこちらの手を取り、市内バスの乗り場に向かっていった。
「あの~、2泊したら安くなりますか?」
「いいわよ、心配ないわ、一人ならうちの『SOBE』に来なさい」
「いや、その~、2泊したらいくらになるのか、知りたいんだけど」
聞いているのか聞いていないのか、あるいはしらばっくれているのか、
こちらの話を気にもとめず、やって来た市内バスに乗り込んでいく。
「はい、料金箱はここよ。すぐ先で降りるから用意しておいて」
運転手も顔見知りらしく、おばあちゃんにご機嫌伺いの話などしている。
車内にも知り合いがいたらしく、腰かけて普通に話をしている。
おばあちゃペースに戸惑いながら料金を尋ね、12クーナを料金箱に放り込んだ。
(あとからわかるのだが12クーナは事前にキオスクで買った値段、
車内で支払うと15クーナになるので、どうやらおばあちゃんのカオで安くなっていた模様)
周りの人の雰囲気からするとどうやらアヤシイオババではなさそうだが、
こちらは宿代が値切れるのか、あるいは言い値で泊まらされるのか、そのことばかりが気になっていた。
小さなバスはターミナル前の坂を上がり、停留所を3つほどやり過ごすとおばあちゃんは停車ボタンを押した。
タグ:クロアチア Croatia Split スプリット 海岸線 波止場 フェリー・ターミナル 鉄道 駅 列車 電車 バス・ターミナル チェック・アウト c/o ホステル ゲストハウス スタッフ 昼飯 ランチ 食堂 スーパー 買出し Dubrovnik ドゥブロヴニク 長距離バス 指定席 座席 Wi-Fi 無線LAN アドリア海 一般道 海岸沿い トイレ・ストップ トイレ休憩 レストラン cafe bar Makarska マカルスカ Neum ネウム Bosne i Hercegovine ボスニア・ヘルツェゴビナ ボスニア ヘルツェゴビナ 国境 再入国 パスポート・チェック P/P ボーダー 飛び地 客引き SOBE ソベ 民泊
初めまして、今年の3月にクロアチアに行きました。
ツアーなので行った先は少し違ったりしますが
空気感が懐かしく読ませていただいてます。
いよいよのドブログニクが楽しみいっぱいです。
by tako (2015-09-06 11:14)
>takoさん
3月ですと寒かったのでしょうか?
おそらく反時計回りで下湖方面を見学されたのでは??
はい、じわじわドゥブロヴニク編を記してまいりますので、
お付き合いのほどを。
by delfin (2015-09-07 21:59)