第七夜 Moving to Dalmatinska @Split [Croatia]
バスを待っているのだろうか、『Ulaz 2』のバス・チケット小屋の周りに好き勝手に腰かけている姿が多い。
バックパッカー・スタイルがほとんどでそれぞれがデカイ荷物を傍らに置き、
思い思いの態勢でやって来るバスを待っているようだ。
というのも小屋はあるものの「バス停」らしき目印はなく、
今朝降ろされた場所で様子を伺いながら待っているだけなのだ。
他にも人がいるので「ハズレ」ではなさそうで、こういう時は「多勢」に任せてかまわないだろう。
夕刻に差し掛かり、木立ちに覆われているバス停であろう場所には少しばかり肌寒い風が駆け抜けていく。
16:40、予定より10分遅れてスプリット行きのバスがやって来た。
「ザッダール!! スプリーット!!」
ドライバーは声高に叫びながらトランクを開け、荷物を積み込んでいく。
彼の手が空くのを待って、行き先を確認し、荷物を預け、車内に進んだ。
2つの行き先を告げていたこともあり、確かめたかったのだ。
どうやらスプリット行きはザダールを経由してから行くらしい。
ヨーロッパとはいえ、乗り物の行き先は確かめたほうがいい。
英語が通じなければ、手元のチケットを見せ、確認した上で乗り込んだほうが間違いがない。
現地では日々変更があり、ガイドブックやネットには表れないことが次から次に湧いてくるのだ。
行き先の間違いは笑えないトラブルを生むことになるからね。
バスは満席、走り出してすぐ次の停留所に停まったものの、3人を乗せただけで他の客を断り、ドアを閉めた。
『Gradinsko Jezero(グランディンスコ湖)』を反時計回りに回り、
『Galovac Jezero(ガロヴァツ湖)』の触りだけを眺め、『上湖群』と呼ばれるエリアはあきらめ、
今度は時計回りに『Jezero Kozjak(コズィヤク湖)』の山道を歩き、湖を見下ろしながら下流へ向かった。
エコロジー・バスが走る南側の遊歩道は
グループやツアー客でごった返していることは望遠レンズで見えていたので、
これを避け、人が少ない山道を時計回りで進むことを選んだのだ。
おかげで崖の上の展望台や滝の上などちょっと変わった場所からの景観を楽しむことができた。
「みなが見ている風景」は求めていないし、「切り取られた風景」と同じものを探す趣味もない。
できることなら「自分だけが見つけた風景」を探り当てられればうれしい限りだが、
もはや地球上にそんな風景は存在しないだろう。
なのでただ単に「ヒネクレ者のツブヤキ」と思っておいてください。
『Veliki Slap(ヴェリキ滝)』の裏側から降りる形で『下湖群』に到達し、
電動のエコロジー・バスで戻るため『ST1』を目指した。
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案の定、南側の遊歩道は人で溢れている。
滝の水音の合間に韓国語が響いてくる、どうやら韓国の団体さんが多いようだ。
その間を埋めるように中国語がチラホラ聞こえるが、北京語なので大陸人か台湾人かはわからない。
木製の舗道ですれ違う際、「あんにょ~ん」(こんにちはの軽い感じ)と声をかけると、
化粧の濃いアジュマ同士が驚いて「ハングクッサラン(韓国人)?」と振り返りながらささやき合っている。
その声を聞いて「イルボン・サラ~ン(日本人)!!」と大声で返すと相手はドン引きしていた。
中国系にも同じように「にいはお まあ~」とやってみるが、
彼らは記念写真か自撮りに専念していてたいがいは気がつかずに消えていく。
欧米系は目が合うと先んじて「ハーイ、ジャパン」と言われ、
聞き返して出てきた国の言葉でアイサツをするとウケがいい。
英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、オランダ語、ドイツ語、トルコ語・・・、
ツアコンの経験から西欧諸国のアイサツと会計(数字も)ぐらいは言えるのだが、
こんな時しか役に立たたないまったくどうでもいい能力のひとつだ。
カタコトでもいいのでその国の「挨拶」と「お礼」の言葉は覚えておくと距離感が縮まります。
英語で返すよりも地元の言葉で伝えれば、地元の人の笑顔が返ってきます。
カタコトの日本語を話す外国人に日本人が好感を抱くのと同じ感覚でしょうか。
余裕があるなら「数字」を覚えられると旅がグッと楽になります、店先で電卓叩かなくて済みますし。
フランス語で「いくら?」って聞けば、フランス語の数字で返ってきますからね、
会話自体、「数字」まで覚えないと意味がありません。
英語で聞けば英語で、その国の言葉で聞けばその国の言葉で返されるので、
「会話本」広げて聞いてみても役に立たないのが実情。
と書きつつ、初上陸の「クロアチア語」をまったく使ってないので、説得力のないこと、この上なし。
最近は「翻訳アプリ」なんてのもありますけど、店先でやられるのは迷惑千万でしょう。
あれはテーブル囲んで仲間や友達で使うにはいいけど、忙しい店でやられた日にゃあ、イラつくこと必至。
タクシーなんかでもあまり便利とはいえないので、
できることなら諳んじて自分の言葉で伝えたほうが好感なのは確か。
忙しいのに、アプリ差し出されても、ねえ。
エコロジー・バスで『ST2』に戻り、
『Bellevue Hotel(ベルビュー・ホテル)』で預けておいた荷物をピックアップする。
バスの時間まではまだ少し余裕があったので、バゲージ・ルームのカギを返し、レセプションで尋ねた、
「ここって、Wi-Fi繋がりますか?」
「繋がると思うよ、宿泊のお客さん用に」
「レストランでコーク頼んで、Wi-Fi繋いでもいいですか?」
「いいけど・・・、レストラン自体が今の時間営業してないんだ。
かまわないからレストランのテーブルで繋ぎなよ。バゲージ預けていたから君もお客さんだし」
「あはは、それはうれしいです、ありがとう」
レセプションの年配男性は優しくそう言ってくれた。
確かにバス・チケットを購入した客はこのホテルに荷物を預けるようにいわれ、
どういう経緯でそうなっているのかはわからなかったが、その厚意には甘えることにした。
電気が消え、薄暗くなっていたレストランのテーブルでPCを開く。
「スプリットの宿はすぐ埋まっちゃうから気をつけたほうがいいわよ」
ザダールのホステルで例のフランス・ペアにそう言われていた。
人気の観光地だけに安宿がすぐに埋まってしまうらしい。
バスは21時頃にスプリット到着することがわかっていた、そうなるとすでに夜遅く、
そこから宿探しとなると彼女たちの忠告通りになりそうで、気がかりになっていたのだ。
ザダールを発つ前にスプリットの宿のブッキングを入れておけばなんてことはないのだが、
湖の状況もスプリット行きのバスの状態もわからなかったので、
予約を入れることはせず、軽く調べるに留めていた。
目星をつけていた宿にネットで予約を入れ、PCを閉じた。
「ありがとうございました」
「どうってことないさ。機会があったら今度は泊まっていって」
「何度でも来たい場所ですから、次は泊まりましょう」
握手をして、荷物を担ぎ、バス停に向かった。
18:20、バスはザダールに帰って来た。
「帰って来た」と記したが、今朝発った所に戻ってくるのは妙な感覚で、
宿と旧市街の行き帰りに立ち寄っていた場所なので、やけに親しみがあり、妙な感じはさらに高まっていた。
半分以上の客を下ろし、新しい客を少しだけ乗せ、18:40、ザダールと2度目の別れとなった。
19:30、スクラディンの街でわずかな客を降ろし、20:45、定刻通りスプリットに到着した。
長距離バス・ターミナルのすぐ隣りには鉄道駅、眼前の波止場にはフェリー・ターミナルがあり、
それらを利用するのか、大きな荷物を抱えた旅行者が行き交っていた。
両替屋、土産物屋、雑貨屋、小銭を持った旅行者狙いか、客引きの声と垂れ流しの音楽がうるさい。
湖と異なった喧騒と人出が安心するようでもあり、煩わしくもあった。
波止場を左手に眺めながら、北側に5分ほど歩くとクルマが入れない大きな吹き通しの道があり、
左右手には高級そうなレストランやBARが連なり、テラス席を客が埋めていた。
レストランの装飾にもなっている城壁はローマ皇帝の宮殿のものでそこが旧市街の中心となっているらしい。
目指す安宿はその城壁の中、地図も持たずアドレスだけではたしてたたどり着くことはできるのだろうか。
プリトゥヴィツェからスプリットへ
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