第四夜 Around by Bicycle @Ljubljana [Slovenija]
リュブリャーナの街の見どころは集めたかのように川沿いに凝縮されていた。
交通の要所であったのであろう『リュブリャニツァ川』の蛇行に沿うように旧市街が成り立っているため、
観光客にとってはものすごく都合のいい作りになっている。
『Presernov Trg(プレシャレノフ広場)』前にある観光案内所でもらった市内地図を見るまでもなく、
気持ちのいい川べりを行くだけでこの街を手にしたような気になれた。
旧市街は狭く小さい規模なので、行く先々が観光客で溢れかえっていた。
バカンス・シーズンなので当然といえるが、
金曜日でこの人出ということを考えると明日以降の週末はすごいことになりそうだ。
要所要所で自転車を停めては写真を撮り、記念撮影に没頭する観光客の脇をすり抜け、
写真を撮っては次のポイントを目指す。
太陽が昇るに従い、気温も上昇しているようで30度を軽く超えているだろう。
自転車を漕いでいると汗ばんでくるが、木陰で休憩すると湿度のない乾いた風が身体を冷やしてくれる。
ガス入りミネラルウォーターのボトルを傾けながら、久々にヨーロッパにいるんだなあ、と再認識するひと時。
旅先での自転車は最高の相棒を得た気になれる。
訪れた街に観たいもの、行きたい場所はいくらでもあるが、徒歩での移動には限界がある。
ローマやヴィエンチャンでバイクを借りたこともあるが、
交通ルールや事故のリスク、ガソリンの煩わしさが付きまとう。
アメリカに行けばレンタカーは必需品だが、こいつは写真撮影に向いていない。
体力次第で遠くに行けることや気になったものを見つけた瞬間に停めてファインダーをのぞける、
そういった点から自転車が最強、というワケ。
ホステルでも自転車を貸し出していたが、一日料金でしかも安くなく、利便性は低かった。
世界各地にキオスク・スタイルのレンタル・サイクルが広まると旅行者にはありがたいね。
ミネアポリスでは地元の人が家から駅、そこから路面電車に乗り、着いた駅から事務所へ、
と通勤の行き来にレンタル・サイクルを活用しているそうで、
稼働率ものすごく高いと観光局の人が語っていた。
旅行客ばかりでなく、意外なところで重用され、渋滞緩和、Co2削減に一役買っているみたい。
教会を中心に訪ね歩き、『ビツィケリュ』のスタンドに自転車を戻しては写真を撮り、辺りを歩く。
旧市街の教会はどういうわけか閉まっていて、ほとんどが中を見ることができない。
ミサの時しか開けないのだろうか、理由はよくわからなかったが、外観を見て歩くだけでも楽しかった。
昼ご飯が終わる頃合いに「安くておいしいものが並んでいるよ」とホステルで教えてもらった場所を目指した。
『Tromostovje(トロモストヴィエ・三本橋)』の東側の広場が大勢の観光客を集めていた。
ヨーロッパではめずらしい露店・出店が軒を連ねていて、「屋台村」というか「学園祭」のような雰囲気、
イタリアン、スパニッシュ、ターキッシュ料理などが並び、
ワインの出店ではプラスティック・カップ片手にした人たちから笑みがこぼれている。
日陰になったテラスや階段では紙皿を片手に持った人たちが勝手に腰かけ、楽しそうに食事している。
出店のテントには有名ホテルや地元レストランの名が記されている、
その店に準じたクオリティの料理が供されているのだろうか。
お隣の国でもあるイタリア系の料理が多いなか、以外にも大行列を作っていたのは「タイ料理」のお店だった。
ここスロヴェニアで「タイ料理」がめずらしいのか、はたまたアジアブームが一因なのかはわからなかったが、
ダントツで長い行列を成していた。
こんなにチーズがおいしいなんて♪ ワインで乾杯♪
「5ユーロもあればおなかいっぱいになれるよ」
チェックイン後、ホステル・スタッフに街の見どころなどを尋ねたら、貴重なご飯情報を教えてくれたのだ。
それがこの露店が並ぶ広場のことだった。
「いろんな料理があるから、ここで食べない手はないよ、安いしね~」
彼の話を聞いているだけで、ヨダレが出そうになり、朝の時点でランチはここにしようと決めていた。
バルカン半島に来てまでタイ料理を食べるつもりもなかったので、他の料理を物色して歩く。
するとちょうど大鍋で調理をしはじめた店があった。
「これ、いつごろできます?」
「5分ぐらいかな。ラビオーリーおいし~よ~、食べに来てよ」
イタリア訛りが強いニイチャンにそう言われた。
「じゃあ、あとで来るね」
出来たてに勝る美味はあるまいと、ラビオリをメインに決めて、他の店の探訪を続けた。
スパイスの香り漂うケバブが魅力的だったが、今後の東方行きで出会うチャンスがありそうだったので却下、
それでも肉の焼けるニオイには心惹かれた、頭と胃袋は別々なのね。
すると揚げたてのカラマリの香りが流れてきた。
どの店も青空の下で調理しているので、広場にいるといろいろな料理の香りが遠慮なく覆いかぶさって来る。
「『カラマレ~ス』、どう? 食べていかない?」
「イカ、いいニオイだね。あれ? サーディン(いわし)もあるの?」
「『サルディ~ナス』もオイシイヨ」
『カラマレス』『サルディナス』と言っているのでスペイン系のレストランか、
イタリア語なら『カラマリ』『サルディナ』だよね、たしか。
クセのあるラテン系の巻き舌が強烈、今度はスペイン訛りが登場というわけね。
「じゃあ、ウナ・サルディナス、ポルファ・ボール!(いわしひとつください)」
こちらも負けずに、ラ行の巻き舌を強めに言い返すと店のおばちゃんがうれしそうに復唱した。
「キミは今、ナニを頼んだの?」
後ろに並んでいたアメリカ人夫婦が不思議そうな顔をして、聞いてきた。
「さーでぃんデス、いわしデス。これから揚げるみたいだからオイシイデスヨ、キット」
「いわしなら僕らももらおうかな」
英語が通じることで安心したのか、そうツブやいた、でもわたくし店員じゃないですけど。
「オバチャン、この人もサルディナスひとつだって」
お節介覚悟でアメリカ人夫婦の代わりにオーダーを告げるとオバチャンが前にもまして上機嫌で繰り返した。
心なしかさっきよりも巻き舌がすごい。
「ウナ・サ~ルディ~ナ~ス、OK~」
揚げたてのイワシのフライを手に先ほどの店に戻り、約束のラビオリを買い求め、日陰のテラスに腰かけた。
皿に盛られた『ラビオリ』には刻んだチーズをどっかりかけられていて、
『イワシの唐揚げ』には大きめのレモンが添えられていた。
どちらの皿も4ユーロ、合わせて8ユーロのランチ、悪くないじゃないかい。
乾いた風、眩しい太陽、うまい料理、これでキンキンに冷えた白ワインでもあれば堪えられないんだろうな、
コチトラ酒飲めないけど。
旧市街にくれば誰でも気づくような出店の場所だったが、
ホステルのスタッフにもらった「安くておいしい」という情報がよけいに気分を上げてくれた。
イベントのようなニギワイだが、スタッフが知っていたということは常設の露店広場だったのかな。
まあ、そのあたりの謎解きはほったらかしておき、お皿に集中するとしましょう。
食べ終えた器を店先のゴミ箱に入れようとすると声をかけられた、さっきのスペイン系オバチャンだ。
「サルディ~ナ、どうだった?」
「びえん! ぼ~の! せ・ぼん! オイシイ~」
不意を衝かれ、咄嗟に何語がいいのかわからず、イタリア語、スペイン語、フランス語を立て続けに口にし、
力強く日本語も添えてみた。
どうやら日本語が一番ウケたようで、彼女も「オ~イシ~」といいながら親指を立ててくれた。
ザグレブからリュブリャーナへ
来月のクロアチア・スロベニア旅行に備えこちらのブログで
下調べ中
この屋台行ってみたかったけどツアーではここでの自由時間なし
残念!!
by hiroko baba (2019-09-11 10:34)
>hiroko babaさん
返しが遅くなりました。
観光で廻るメインどころのすぐ隣で繰り広げているので、
ブラつけるんじゃないかな??
ワイン一杯ぐらい傾けられるといいですね~
by delfin (2019-09-22 15:52)