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第三夜 Open Market @Zagreb [Croatia]

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ステンドグラスに別れを告げ、ふたたび激しい陽射しの下へ。

聖堂の前の入り組んだ道を少し歩くとニギヤカな青果市場に出くわした。
陽光の下、売り子の声と果物の色彩がひときわ元気だ。
「市場」は旅先の楽しみのひとつ、アジアだろうとEUだろうとイスラム圏だろうと、
屋外のマーケットは眺めて歩くだけで楽しい。

日常生活の邪魔者でしかない旅行者だが、ここでは少しばかり立場が変わる。
ホテルでかじりつくフルーツを選んだり、土産物を手に取ったり、
懐緩めの旅行者はあるいは上客の一人かもしれない。

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見慣れない色合いの野菜、自分の国と同じだが形やサイズが異なる果物、
ファインダー越しに興味深くそれらを覗いていると陽気にからかいの声が飛ぶ。

「そんなの撮ってどうするのさ」
(日本にはこんな色の野菜はないんですよ、そちらは見慣れているかもしれませんが)

「アンタ中国人かい? え?日本人かい?」
(日本人が英語を話したことに驚いているのか、はたまた日本人に見えない容姿に驚いているのかは不明)

「これ、買っていかないか、まけとくよ?」
(旅行者が山積みのトマト買ってどうするのさ)

彼らに気圧されないよう負けずに陽気に受け答えしながらも心の声は飲み込んでおく。

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隣の店では新鮮なキノコを手に、店のおばちゃんが常連さんに料理法をアレコレ説明している。
清潔にパック詰めされ、バーコードを通すだけの買い物は便利だけどね、
旬のものをどう調理するか、いつもと違う料理法を語らったりするのも市場ならではの良さ。
店員とのコミュニケーションをメンドくさがる国からやって来た者にはこういう市場はうらやましくもある。

ヨーロッパを訪れるとベリー類の種類が豊富なのでつい手が伸びる。

「おじさん、これいくら?」
小さな器に盛られたブラック・ベリーを差し出す。

「それなら10クーナでいいよ、今日はもう終いだからな」

「じゃあ、ください。あ、すぐに食べられるかな?」

「食べるなら後ろに水道があるから、そこで洗いな。これのほうが洗いやすいだろ」
そういってイチゴパックのような小ぶりのパックに移し替えてくれた。

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ともっともらしい会話を記しているが、市場のおじさんはおかまいなしにクロアチア語、
こちらも気に留めず英語でのヤリトリ。
まあ、身振り手振り、言いたいことは伝わるものなのです。
お金を払うといわれた水道でザブザブと洗い、水が垂れるままのベリーをポンポンと口の中に放り込んだ。
「ありがと! おいしいです、これ」
ムダな一言かもしれないが、おじさんにお礼の声をかけると親指を立てて応えてくれた。

汗を流しながら旧市街の坂を歩く、ベリーを口に含んだ瞬間だけ暑さが飛ぶような気がする。

小高い丘の上、旧市街の西側は『Gornji Grad(ゴルニ・グラード)』地区と呼ばれ、
『国会議事堂』や『首相官邸』、『歴史博物館』といった見どころが詰まっている。
なかには『失恋博物館』なんて変わりダネも。
城壁で囲まれていた名残でもある『Kamenita Vrata(石の門)』と呼ばれる礼拝堂には内戦を弔うため、
今も祈りのろうそくの灯が絶えないそうだ。(写真4)

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『Kuna Lotrscak(ロトゥルシュチャク塔)』と呼ばれるかつての見張り塔の足元には
下の広場と丘の上を繋ぐケーブルカーが走っている。

そのケーブルカーを使わずにつづら折りの坂を下ると
目にも鮮やかな『Crkva Sv.Marka(聖マルコ教会)』に出くわした。
屋根の上の美しいタイルの装飾は右がダルマチア地方を表す紋章、左がザグレブ市の紋章。

ザグレブを象徴するこの教会の屋根を観たかったのだ。

日差しの強い時間のせいか、教会前の広場に人影はなく、しばらく貸切状態が続いた。
おかげで広場のど真ん中に荷物を下ろし、
望遠レンズをセットしたファインダー越しに鮮やかなタイルを楽しむことができた。
う~ん、贅沢なひと時、できることならここに居座りたいぐらいだが、日なたがツライ。

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ふたたび坂を下り、『イェラチッチ総督広場』に近づくと路上にカフェが連なっている。

熱いこの時間でも路上の席が人気を占めているのはヨーロッパらしい光景。
ちなみに「CAFE」の本場、パリ・シャンゼリゼ通りでは路面の席がもっとも高く、店内は安い。
イタリアでも店内のカウンターでの立ち飲みがもっとも安く、
地元の人はその安い場所で軽くエスプレッソなどをあおっていく。

店内カウンター、イス席、そして通りのテラス席、という順にコーヒーの値段は変わるので、
店内で注文したコーヒーを手にテラス席に腰かけたりするとギャルソンに咎められます。
席によって提示されるメニューが違うのです、CAFEでは。

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広場の周辺はテイクアウトのピザ屋が多く、若者や旅行者を集めていたが、
気を惹かれず、別の店でサンドウィッチとアイスティを注文、15+5,5クーナと安上がりな遅めのランチ。
パニーニのような形状だが、パンが固く、ヨーロッパらしい感じがいい。

午後もザグレブを彷徨ったが、小さなこの街はあらかた見尽くしてしまったようだった。

街の南側にあるバス・ターミナルへ立ち寄り、
次の目的地スロヴェニア・リュブリャーナ行きのバスを尋ねると、
「午前中は6:50と11:30だけ」という素っ気ない答えが返ってきた。
カウンターを離れ、しばらく考え込んだが、早い便で次の街へ向かうことに決めた。

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「6:50のは87クーナよ」

どうやらバス会社が複数運航していて、時間帯や会社によって70~125クーナと値段もまちまちらしい。
あらためて尋ねると6時のバスは11時のそれより安いらしく、決断は悪くなかったようだ。

「じゃあ、それを1名分」

リュブリャーナ行きのバス・チケットが手元にやってきて、ザグレブを旅立つことが決まった。



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