第三夜 Check-in to Croatia @Zagreb [Croatia]
―DAY3― 8月7日
朝、激しい雨音で目が覚めた。
窓の外は薄暗く、時計を見ると6時を回ったところだが、潔くシャワーを浴び、目を覚ますことにした。
バスルームから出ると雨はピタリと止んでいた。
雨音がウェイクアップ・コールとはなかなか凝った仕掛けだ。
昨日は結局、30分近く迷い、ようやく宿を探し当てることができた。
示された住所にはホテルらしき建物はなく、民家と作業機械置場が軒を連ねているだけだった。
通りを遡り、あるいは路地に入り探してみたが、それらしい建物がない。
困り果てて近代的なオフィスビルに飛び込み、受付の男性に尋ねた。
「すみません、このホステル、ご存知ですか? この通り沿いにあるはずなんですが」
「ホステル? この辺にホステルなんかあったかなあ? アドレス分かる?」
言われるまま、ブッキングしたホステルのアドレスを伝えた。
「確かにこの通りの名前だね。あ、検索してみよっか?」
こちらの返事を待たずに彼はカウンターの向こうでキーボードを叩きはじめる。
「ああ、通りの向こう側だ。このアドレス、間違えてるね」
「え。そうなの?」
「向かい側にあるんじゃないかな。見つからなかったらまた来てよ」
「ありがとうございます。ホント助かりました。でもまた来ないことを祈ります」
通りの向こう側に渡ると「ホステル」と書かれた小さな看板があり、目指す宿の名前が書かれていた。
う~ん、ブッキング・サイトのアドレスが間違っているってどうなの。
看板のある入口から中の敷地に進むと、そこは無駄に広く、さらに奥まったところに受付らしい建物があった。
「チェックイン・プリーズ」
「いらっしゃい。あなたが日本のお客さんね、うちの宿初の日本人だわ」
「あはは、それは光栄です。でも見つけられなくて苦労しました」
「ネットの地図が間違っていたでしょ、訂正してくれないのよ、なかなか」
「そういうことでしたか」
「疲れたでしょ? 部屋入る? 前の客が早く発ったから部屋の用意できているわよ」
12時を回ったばかりだったが、もう部屋が使えるらしい。
「それはラッキーです、ロングフライトでさすがに疲れたんで」
「じゃあ、入っていいわよ。カギはこれね。支払いはキャッシュ? カード?」
「カードで払います」
「カードだとユーロ払いになるけど、ダイジョウブ?」
「OKです」
2泊分の宿泊費54ユーロを支払う。
日本円にして1泊あたり¥3000ちょっと、これはシングル・ルームなのでしかたのないところだ。
クロアチアはユーロ導入されていないが、ところどころこういう風にユーロが使われているようで、
この後もちょくちょくこういう場面に出くわすことになる。
街への行き方を聞き、近所のスーパーの場所を地図に記してもらう。
これは「チェックインの儀式」、ホテルだろうが、ゲストハウスだろうが、宿到着後、定番の質問だ。
横になると意識を失ってしまいそうだったので、荷物を置き、すぐにスーパーに出向いた。
部屋には冷蔵庫がなかったので、飲み物と朝食用のパンとヨーグルトだけを買い、店を出る。
プラスティックバッグ(コンビニ袋の英語)を部屋に置き、その足で市内へ出るつもりでいたのだが、
ベッドから発せられる誘惑の魔力から逃れる術がなかった。
気づくと窓の外はすでに暗く、辛うじてヨーグルトを口にしただけでふたたび魔の手に覆われた。
ロング・フライトの魔女に白旗。
おかげで今朝はまだ暗い時間に目が覚めた、というわけだ。
到着まもなく今回の旅のメインテーマである『Plitvicka(プリトゥヴィツェ湖)』を
早々にやっつけてしまおう、と企んでいた。
しかしそれは朝の雨で出鼻をくじかれた、というか大いに意欲をそがれてしまった。
湖を訪ねるにあたり、雨で清流が濁っていては興ざめでしかない。
ザグレブの宿を抑えたままの日帰り湖旅行計画は取り止めにして、市内に居残ることを決めた。
このあたりは一人旅の気楽さというか、いい加減さというか、だらしさなというか、怠惰というか。
コーヒーを淹れ、パンを頬張り、街へ出かけることにした。
トラム(路面電車)の停留所前にあるキオスク(売店のこと)で40クーナのプリペイド・カードを購入。
ICカード方式で車内の機会にタッチするだけ、1乗車10クーナで乗り換えも無料、とシステムはシンプル。
通勤客に紛れ、トラムで街の中心へ向かい、目に止まったザグレブ中央駅で降り、街の北側を目指した。
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『トミスラヴ王広場』、『ストロスマエル広場』、『スリンスキ広場』と美しい緑が生える広場が
真北に向かって連なっている。
日なたでは家族連れの子供たちが声を上げてはしゃぎ、木陰ではカップルや学生がのんびり昼寝している。
街の中心地だというのにみな自由にくつろぎ、好きなように過ごしているのが印象的だ。
眩しい緑が途切れ、「Zagreb」という名称の発祥地でもある『イェチッチ総督広場』に突き当たった。
丘の上の「旧市街」から見るとこの辺りが「溝」(=ザグレブ)のようになっていたから、との謂れ。
諸説あるらしいが、こういう古くから伝わる地名のエピソードはおもしろく、
「語源好き」のこちらの探求心をくすぐってくれる。
「XXが丘」とか「△△台」とか行政や不動産業者の思惑でついた名がはびこる国は残念でしかない。
地名にはキラキラネームはいらないよね、由緒や由来があったほうが情緒があると思うのだけど。
ちなみに『Croatia』という国名は「クロアチア(山の民の意)人の国」に由来する。
7世紀頃、この地に流入してきた南スラブ系のクロアチア人の国というわけデス。
ひと気の多い広場を突き抜け、旧市街への坂を上がると、
背の高い『Katedrala Merijina Uznesenja(カテドゥラーラ・マリィイナ・ウズネセーニャ)』がお出迎え。
熱い日差しを避け、聖なる日陰に進むとしよう。
2014-12-23 12:50
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