Bed and Breakfast @Denver [Denver (U.S.)]

10月29日月曜、引き続き晴天で風が心地よい。
朝食のため、ダイニングに降りた。
リビングの暖炉には火が入っていて、
その脇では朝食を終えたほかのお客さんがコーヒーを飲んでいた。
いい天気とはいえ、初冬ともいっていい時季、室内は少しばかり冷える。
「おはようございます」
「おはよう。こちらで火にあたる? 席、空けるわよ」
「いえ、あちらで朝食をいただくことにします」
同じ宿に泊まっている、というだけで家族のように会話が交わされる。
こういうのはホテルでは味わえない、小さな宿ならではの魅力だ。

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「卵はどうする?」
「選べるんですか?」
キッチンから顔を出した宿の主人が問いかけてくる。
「サニーサイド、スクランブル、オムレット・・・」
「おお~。じゃあ、オムレットがいいですね」
「中身は? トマト、マッシュルーム、ホウレンソウ・・・」
「え。中身も選べるの? じゃあマッシュルームとほうれん草を」
観光局のスタッフが「朝食が楽しいわよ」と言っていたのを思い出した。
B&B(Bed&Breakfast)なので朝食がつくのはあたりまえなのだが、
ここまで手厚いサービスがあるとは。

「コーヒー? 紅茶? ジュースはなににする?」
「コーヒーはブラックで。ジュースはトマトがいいな」
「OK」
そういうとエプロンをした主人はキッチンへ戻っていった。
入れ替わりにコーヒーポットを持った奥さんが入ってくる。
気分的にはこの家の子供にでもなったような気分だ。

「どうぞ。コーヒーはポットにあるから好きなだけ飲んでね。
そういえば昨日は随分、遅かったみたいね」
「試合終了後、ロッカールームでインタビュー取ったり、
試合のデータをまとめたり、ゲームが終わってからが長いんですよ」
「大変ね~。それで夜中までいなかったのね」
サンデーナイトやマンデーナイトのゲームはTVのプライム・タイムに合わせているため、
試合終了が23時や日付が変わるなんてことはザラだ。
そこからフィールドでの取材、ロッカールームでのインタビューをこなすので、
当然、帰る頃のスタジアムはひと気がない状態になる。
地元の記者たちはクルマで来ているので、おかまなしにそのまま記者席で記事を書き続け、
そんな彼らを残し、こちらは深夜に記者席を立ち去る、というのが現地取材の常だ。
「まあ、それが仕事ですから。
とはいえ、ダウンタウンに戻るのもライトレールで10分ぐらいだし、
この街は夜中に歩いても危なくないので、気が楽ですよ」

「コチラ、NFLの取材で、日本から来ているんですよ」
奥さんが朝食を食べていたほかのお客さんに勝手に紹介をはじめた。
淹れたてのコーヒーを楽しむ間もなく、インタビュー・タイムに突入、
質問攻めとも言ってもいいぐらいの注目を集めてしまった。
彼らにしてみれば、極東からNFLの取材に来ること自体が奇妙奇天烈なのだろう。
あるいは動物園のパンダより希少種かもしれない。
それでも一人の宿泊ではこういう時間は稀で貴重だ。
話し相手がいることは楽しいし、現地の人相手に気持ちも解れる。
それにこちらの人が日本をどう見ているか、あるいはNFLをどれぐらい好きか、
なんていうのも隠れて取材ができたりするわけで。

アジア人の男がひとり、なんてのは傍目からするとそれだけでアヤシく、
こうして身分照会と宿の人の保証が付くだけで、
周りの警戒心は大いに薄らぎ、溶け込みやすくはなる。
朝食のプレートがやってくると節度ある大人たちは口を噤んでくれた。
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